アナログの海へ潜る。CityNomixと巡る東京・音探しの旅
CityNomixです。デジタルマーケティングの喧騒の中で、日々データやKPIといった数字の羅列と格闘する私にとって、週末の「ディグ(Dig)」は魂の深呼吸のようなものです。SpotifyやApple Musicを開けば、数千万曲が瞬時に再生される魔法のような時代。しかし、便利さと引き換えに私たちが失いつつあるものがあります。それは、音楽を「モノ」として所有する重み、ジャケットから漂うインクや古紙の匂い、そして膨大なアーカイブの森から自分だけの一枚を探し出す、あの身体的な冒険心です。
東京は今、世界中の音楽愛好家(Vinyl Diggers)から熱い視線を注がれる、世界有数の「アナログレコードの聖地」となっています。特に、学生街であり楽器店がひしめく「御茶ノ水」と、カルチャーの交差点「渋谷」は、質の高い中古盤とマニアックな新譜が交錯する、まさに宝の山です。また、近年リバイバルしているカセットテープの専門店も、静かなブームを超えてカルチャーとして定着しつつあります。
この記事は、私が実際に足を運び、指を黒くしながら棚を掘り、心を震わせたレコードやカセットテープとの出会いを記録した、Photomoのクラスター記事を束ねる「完全ガイド」です。Oasisのブートレグに狂喜した日から、Beastie Boysのパンクなルーツに触れた瞬間、そしてカセットテープの磁気ノイズに癒やされた体験まで。単なる店舗紹介ではなく、そこでどのような「物語」に出会えるのか。CityNomixの視点で、東京のアナログ・ハンティングの旅へご案内します。
アルゴリズムの彼方へ。なぜ今、僕たちは東京で「円盤」を探すのか
「なぜ、わざわざ店に行くのか?」
デジタルネイティブな世代からも、あるいはかつてレコードで育った世代からも、そんな声が聞こえてきそうです。答えはシンプルです。アルゴリズムは「正解」を教えてくれますが、「偶然」は連れてきてくれないからです。
東京のレコードショップ、特に今回紹介するディスクユニオンやHMV、そして個人のセレクトショップには、AIには真似できない強力な「文脈(コンテキスト)」が存在します。店員さんの手書きPOP、ジャンルを越境して隣り合うジャケット、あるいは「新入荷」の棚に無造作に放り込まれた名盤。それらはすべて、誰かの意思と愛によってそこに置かれています。
特に東京の中古盤市場は、「コンディションの良さ」で世界的に知られています。日本人の物持ちの良さと、査定の厳格さは、海外のコレクターにとって驚異的です。御茶ノ水の薄暗い店内で、数千円で手に入れたUSオリジナル盤が、針を落とした瞬間に部屋の空気を90年代のロンドンやニューヨークに変える。そのタイムトラベルのような体験こそが、私たちが物理メディアにお金を払う本当の理由なのかもしれません。
さあ、ここからは私が実際に体験した、東京での具体的な「戦果」と「物語」の数々をご紹介します。気になるトピックがあれば、ぜひリンク先の詳細記事(クラスター記事)へ飛んでみてください。そこには、より深く、熱いディグの記録が待っています。
東京レコード&カセットテープ完全ガイド:渋谷・御茶ノ水、そしてその先へ
ビースティボーイズの「裏」名盤。御茶ノ水でハードコア期のUSオリジナル盤を3枚捕獲

御茶ノ水という街は不思議な磁場を持っています。古書店と楽器店が並ぶこの街で、私はBeastie Boysの知られざる側面に触れました。ヒップホップのアイコンとして知られる彼らですが、そのルーツはハードコア・パンクにあります。
ディスクユニオン御茶ノ水駅前店で、HIP HOPとPUNKの棚の境界線から私を呼んでいたのは、『Aglio E Olio』や『Some Old Bullshit』といった、彼らのパンク精神が炸裂した「裏」名盤たちでした。デジタル全盛の今だからこそ、10分強で駆け抜ける初期衝動のアナログな手触りは貴重です。さらに、名曲「Gratitude」の12インチには武道館でのライブ音源も収録されており、US盤でありながら日本の空気を含んでいるというストーリー性にも惹かれました。
90年代の空気感を部屋に持ち帰るような、レコードディグの醍醐味がここにあります。
より詳細なレポートはこちらの記事をご覧ください。
ビースティボーイズの「裏」名盤。御茶ノ水でハードコア期のUSオリジナル盤を3枚捕獲
ジャミロクワイの原点。御茶ノ水で『Emergency On Planet Earth』UKオリジナル盤に遭遇した日

同じく御茶ノ水のディスクユニオンで、私はある鮮烈な白と黒のコントラストに目を奪われました。Jamiroquaiの記念すべきデビューアルバム『Emergency On Planet Earth』の、1993年プレスUKオリジナル盤です。
「ヴァーチャル・インサニティ」で洗練されたポップスターになる前の、若きジェイ・ケイの初期衝動と、バンドの生々しいファンク・グルーヴが凝縮された一枚。昨今のアシッドジャズ再評価で価格が高騰する中、1万円以下で美品を手に入れられたのは、東京の中古市場の質の高さゆえでしょう。針を落とした瞬間に部屋の空気を変える「音圧」と「鮮度」は、再発盤やストリーミングでは決して味わえない体験です。
1993年のロンドンの空気を所有する、そんな投資としてのレコード購入の記録です。
より詳細なレポートはこちらの記事をご覧ください。
ジャミロクワイの原点。御茶ノ水で『Emergency On Planet Earth』UKオリジナル盤に遭遇した日
Oasis信者が踏み入れる「現代マンチェスター」の聖域。ディスクユニオンで見つけたThe 1975初期EP4部作の衝撃。

私は長年、Oasisを愛する「90年代UKロック」の信者でした。正直なところ、The 1975のような現代のバンドには食わず嫌いなところがあったのです。しかし、御茶ノ水で彼らのデビュー前の「初期EP4部作」に出会ったことで、その認識は覆されました。
透明なヴァイナル、洗練されたモノクロームのアートワーク。手に取った瞬間に感じる美学。「Chocolate」のカッティング・ギターや「Sex」の若き衝動をレコードで聴いた時、彼らもまたマンチェスターの偉大な系譜にあることを確信しました。Oasisの無骨さとは違う、しかし確実に流れる「都市のロマンティシズム」。食わず嫌いをやめて新しい扉を開く、そんな音楽体験がここにはあります。
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Oasis信者が踏み入れる「現代マンチェスター」の聖域。ディスクユニオンで見つけたThe 1975初期EP4部作の衝撃。
御茶ノ水ディスクユニオンでOasisレア盤探訪記 – 伝説のブートレグ『JILY』と運命の再会

梅雨入り前の晴れた土曜日、私は再び吸い寄せられるようにディスクユニオン御茶ノ水店へ。そこで待っていたのは、公式盤をも凌駕する熱量を持つ「ブートレグ(海賊盤)」との出会いでした。
見つけたのは、Oasisファンの間では伝説とされる1996年カーディフ公演を収めた『JILY』の高音質リマスター盤。奇しくもOasisの再結成ツアー(という設定の未来)がスタートする場所と同じカーディフでのライブ音源です。メインロード公演のコンプリート版や、日本限定の『Time Flies…』紙ジャケ仕様など、次々と現れるお宝たち。公式盤だけでなく、その時、その場所でしか生まれなかった熱狂をパッケージした音源を探すのも、ディスクユニオンの真骨頂です。
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御茶ノ水ディスクユニオンでOasisレア盤探訪記 – 伝説のブートレグ『JILY』と運命の再会
【御茶ノ水ディグ再訪】1996年のカーディフから2024年のカーディフへ。時を超えたオアシスの旅と、スルーした1万円のレア盤
前回の『JILY』発掘から時を経て、私はまた御茶ノ水にいました。そこで見つけたのは、リアム・ギャラガーの2024年カーディフ公演のライブ盤。1996年の伝説を買った同じ店で、約30年後の同じ場所でのライブ音源に出会う。この奇妙なシンクロニシティに、背筋が震えました。
一方で、Oasisの希少なプロモ盤(1万円超)を発見しつつも、「すでに持っている」という余裕から棚に戻すという、コレクター特有の歪んだ喜び(スルーする美学)も体験。さらに、ロックだけでなくDaft Punkのオリジナル盤まで「救出」するジャンルレスなディグ。物理メディアを通じて過去と現在が交錯する、深い音楽体験の記録です。

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【御茶ノ水ディグ再訪】1996年のカーディフから2024年のカーディフへ。時を超えたオアシスの旅と、スルーした1万円のレア盤
渋谷HMV レコード探訪記:中古盤とカセットの山からOasisの幻を追う

舞台を渋谷に移しましょう。井の頭通りにある「HMV record shop 渋谷」は、特に中古盤の品揃えにおいて渋谷随一の実力を誇ります。
Oasis再結成の熱狂冷めやらぬ中、特設コーナーに胸を躍らせ、インディー・オルタナティブの棚を掘る。そこで出会ったのは『Little by Little』の12インチや、名盤『The Masterplan』のアナログ盤。しかし、その価格は数万円クラス。「出会えたけれど、連れて帰れない」。そんなレコードハンティングのほろ苦い現実もまた、リアルな体験の一部です。買えなくても、その「モノ」としての価値を確認し、次への渇望に変える。それがディガーの生き様です。
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渋谷HMV レコード探訪記:中古盤とカセットの山からOasisの幻を追う
東京のJAZZはここに眠る。ディスクユニオン Jazz TOKYO 徹底探訪記

再び御茶ノ水へ。ここには「東京でJAZZレコードを探すなら外せない」聖地があります。「ディスクユニオン Jazz TOKYO」です。
この店の攻略法はただ一つ、「新着コーナー」を制すること。圧倒的な物量を誇る新入荷の棚には、コレクターから放出されたばかりの良質な盤が並びます。壁一面に飾られた歴史的オリジナル盤のオーラに圧倒されながら、自分だけの一枚を探す時間は至福です。ジャズだけでなく、ソウルやブルースの専門コーナーも充実しており、音楽の深淵を覗き込むような体験ができます。
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東京のJAZZはここに眠る。ディスクユニオン Jazz TOKYO 徹底探訪記
【東京カセットテープ完全ガイド】CityNomixが巡る、珠玉の一本と出会うための探訪記

最後に紹介するのは、レコードと並んで愛すべきメディア「カセットテープ」を探す旅の記録です。中目黒の静謐な専門店「waltz」、渋谷のカルチャー発信地「Oddtape」、そして圧倒的物量の「タワーレコード渋谷店」など、東京中に点在するカセットテープの聖地を巡りました。
デジタルでは味わえない磁気テープの揺らぎ、プラスチックケースのチープで愛おしい手触り。Billie Eilishの最新作から80年代のサントラまで、新旧が入り混じるカセットの世界は、まさに「手のひらサイズのタイムマシン」です。各店舗の個性や、そこでしか出会えないキュレーションの魅力を総まとめにした、カセットテープ・ラバー必読のガイドです。
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【東京カセットテープ完全ガイド】CityNomixが巡る、珠玉の一本と出会うための探訪記
今回訪れた場所のまとめ
今回の旅で巡った、東京のアナログ音楽カルチャーを支える重要なスポットをまとめました。
| 名称 | 公式リンク | 住所 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ディスクユニオン 御茶ノ水駅前店 | 公式サイト | 東京都千代田区神田駿河台4-3 新お茶の水ビル2F | ロック、パンク、ヒップホップなどオールジャンルを扱うが、ジャンルの境界線にこそレア盤が眠る。Beastie BoysやOasisのブートレグなど、マニアックな発見が多い。 |
| ディスクユニオン Jazz TOKYO | 公式サイト | 東京都千代田区神田駿河台2-1-45 ニュー駿河台ビル2F | 都内最大級のジャズ専門店。圧倒的な物量を誇る「新着コーナー」は必見。オリジナル盤の壁掛け展示も壮観。 |
| HMV record shop 渋谷 | 公式サイト | 東京都渋谷区宇田川町36-2 ノア渋谷 1F/2F | 中古盤の在庫が非常に豊富。特に洋楽ロックやインディー系が充実しており、レアな12インチシングルやプロモ盤との遭遇率が高い。 |
| waltz | 公式サイト | 東京都目黒区中目黒4-15-5 | 中目黒の住宅街に佇むカセットテープ専門店。店主の卓越した審美眼によるキュレーションと、美術館のような静謐な空間が魅力。 |
| Oddtape | 公式サイト | 東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 5F | 渋谷PARCO内にある新譜に強いカセットテープ専門店。インディーポップやLo-Fiヒップホップなど、トレンドを押さえたエッジの効いたセレクト。 |
| タワーレコード渋谷店 | 公式サイト | 東京都渋谷区神南1-22-14 | 6階のTOWER VINYLは圧巻の在庫量。新品・中古レコードに加え、カセットテープの取り扱いも東京最大級。 |
| Manhattan Records | 公式サイト | 東京都渋谷区宇田川町10-1 木田ビル | 渋谷・宇田川町のヒップホップ聖地。2階のカセットテープコーナーには、Hip-HopやR&Bの新旧名作が並ぶ。 |
結論:旅を終えて
御茶ノ水でパンクの熱気に触れ、渋谷で幻のレア盤を追いかけ、中目黒でカセットテープの静寂に浸る。今回の旅を通じて改めて感じたのは、東京という街が持つ、音楽に対する底知れない愛情と深みです。
ストリーミングで音楽を聴くことは便利です。しかし、自分の足で街を歩き、店に入り、指先でレコードを探し当てるそのプロセスには、クリック一つでは得られない「物語」があります。手に入れたレコードやカセットテープは、単なる音楽ソフトではなく、その日の天気や店の匂い、店員さんとの会話、そして発見した瞬間の高揚感までをも記憶した、あなただけの「体験の結晶」となるはずです。
もしあなたが、日々の生活の中で少し疲れを感じていたり、何か新しい刺激を求めていたりするなら、次の週末はスマートフォンをポケットにしまって、レコードショップへ出かけてみませんか?
きっと、棚の奥であなたを待っている「運命の一枚」があるはずです。



