今日の東京は、梅雨入り前の貴重な晴れ間が広がっていた。カレンダーに目をやると、2025年6月21日、土曜日。時刻は午後の14時を少し回ったところだ。御茶ノ水での所用が思いのほか早く片付き、手持ち無沙汰になった私は、ふと閃いた。「そうだ、こんな日はディスクユニオンで音楽をディグるに限る」。あの独特の匂い、棚にぎっしり詰まった未知の音との出会いを求めて、足は自然と駅前のビルへと向かっていた。
御茶ノ水駅前、音楽の聖地への入り口
ディスクユニオン御茶ノ水店は、東京メトロ新御茶ノ水駅の駅ビル2階、改札を出てすぐという抜群のロケーションにある。ガラス張りのファサードに掲げられた「disk union」のロゴは、いつ見ても心踊るものがある。そうそう、この店舗のちょっとした特徴は、入口横、グッズコーナーの奥にトイレがあること。まずは身を清め(?)、いざ、音楽の海へダイブだ。

ディスクユニオンは、1941年創業というから驚くほどの老舗レコードショップだ。新品はもちろん、膨大な量の中古CDやレコード、さらにはオーディオ機器まで取り扱い、独自のレーベルまで持つ。日本の音楽シーンを語る上で、この店の存在はあまりにも大きい。新宿や渋谷など首都圏を中心に多くの店舗を展開し、ジャンルごとに専門店を構えるほどの徹底ぶりは、まさに音楽愛の深さの表れだろう。
御茶ノ水店の個性 – 学生と本好きの街のサウンドトラック
ここ御茶ノ水店は、オールジャンルを扱うオーソドックスな店舗だが、神保町が近いという土地柄か、どこかアカデミックな雰囲気が漂う。学生や本を愛する人々が好むような、知的好奇心をくすぐる音楽が眠っているのではないか、そんな期待感を抱かせる。中古店の品揃えは、その土地に住まう人々の音楽の歴史を映す鏡のようなもの。だからこそ、日々変わる棚を眺めるのは、宝探しにも似たスリルがあるのだ。
まずは新品CDコーナーへ – 未来のレア盤はここに眠る
逸る心を抑え、まずは新品CDコーナーからチェックするのが私の流儀だ。なぜなら、将来的に価値が上がるかもしれない一枚は、リリースされたばかりの新品の時が最も手頃な価格で手に入る可能性が高いから。これは長年の経験から得た、ささやかな教訓だ。

棚を眺めていると、目に飛び込んできたのはOasisの文字。名盤『Time Flies… 1994-2009』のリマスター盤だ。隣にはPulpの新譜も並んでいる。ブリットポップ好きにはたまらない光景だ。しかし、ん? Oasisの『Time Flies』のパッケージが通常より大きい。手に取ってみると、なんと7インチサイズの紙ジャケット仕様。しかも「日本完全生産限定盤」の文字が輝いている。

さらに詳細を見ると、購入特典として歴代Oasisロゴのステッカーが付いてくるというではないか。これは…買うしかない。リアムとノエルの顔が交互に浮かび、私の背中を押した。
中古CDの迷宮へ – Oasis探しの旅路
新品コーナーでの幸先の良いスタートに気を良くし、次はいよいよ中古CDのセクションへ。ここからが本番だ。Oasisの棚はどこだろうか。あ、Coldplayのコーナーだ。これはこれで魅力的だが、今日のターゲットは違う。店内は思いのほか賑わっていて、皆、真剣な眼差しで棚を漁っている。その熱気に当てられ、私も探索に力が入る。

ついに発見、Oasisコーナー。驚いたことに、国内盤と輸入盤がきっちり分けられている。この細やかな配慮が、ディスクユニオンの素晴らしさの一つだ。さて、何か珍しいものは…。
蘇る記憶 – ディスクユニオンの真髄との再会
棚を丹念に見ていくうちに、ある種の既視感に襲われた。「そうだ、思い出したぞ。ディスクユニオンの楽しみ方を!」それは、公式盤だけでなく、時にそれを凌駕するほどの熱量を持つブートレグ(海賊盤)のライブ盤との出会いだ。いつもレコードコーナーに気を取られていたから、すっかり忘れていた。迂闊だった。
目に飛び込んできたのは、見慣れないジャケットの数々。これは一体…? 手に取ると、それは1996年、ウェールズのカーディフで行われたライブを収録したアルバムだった。

そして、隣には1997年のニューヨーク公演のライブ盤。アルバム『Be Here Now』リリース時の、あの熱狂がパッケージされている。

さらに、1996年のメインロード・スタジアム公演の国内盤も。マンチェスター・シティのかつてのホームスタジアムを揺るがしたこのライブは、Oasisのキャリアを語る上で、同年夏のネブワース公演と並び称される伝説の一夜だ。個人的には、ネブワース直前の、この研ぎ澄まされた時期のライブが特に好きだったりする。

運命の邂逅 – 伝説のブートレグ『JILY』リマスター盤
その時、私の目はある一枚のCDに釘付けになった。黒を基調としたシンプルなジャケットに、白抜きで『JILY』と記されている。まさか…。これは、Oasisのブートレグの中でも屈指の名盤として名高い『JILY』ではないか! しかも、よく見ると「High Quality Remastered」の文字が。リマスター盤だと? マジか!

カーディフといえば、奇しくも約2週間後にOasisのLive2025ツアーがスタートする場所が、カーディフのミレニアム・スタジアムなのだ。これはもう、運命としか言いようがない。迷わず手に取った。
さらに、輸入盤のコーナーでは、メインロード・スタジアム公演の完全版とも言える3枚組を発見。2日間の公演を網羅しているようだ。これも買おう。今日の私はツイている。ディスクユニオン、最高だ。
レコードの誘惑と、時には空振りも
興奮冷めやらぬまま、レコードコーナーもチェック。ここでも、まずは新品から。価値ある一枚は、発売時が最も手に入りやすい、これは鉄則だ。残念ながら、今日はOasis関連でピンとくるものは見当たらなかった。『Time Flies』のレコード盤は、以前レコードストアデイでリリースされたものと同じだろうか。少し気になったが、今回は見送ることにした。


中古レコードの棚も一通り見て回ったが、Oasisのめぼしいものは今日は顔を出してくれなかった。これもまた、レコードハンティングの日常。しかし、こうして自分の足で稼ぎ、一枚一枚手に取って探すからこそ、思いがけないお宝に出会えた時の喜びは格別なのだ。

グッズコーナーの甘い罠 – Knebworthの記憶
レジへ向かおうとした矢先、ふとグッズコーナーが目に入った。買い忘れはないか、一応チェックしておこう。すると、Oasisのトラックジャケットが飾られているのを発見。なかなかレトロで良いデザインだ。値段は…とタグを見て、思わず声が出そうになった。「さ、3万円以上!?」なぜこんなに高額なんだ? いつも思うが、ライブ会場でマーチャンダイズを見かけたら、迷わず買っておくべきだったと後悔する瞬間だ。

しかし、そのタグをよく見ると、そこには「Knebworth」の文字が。なるほど、あれは1996年の伝説的なネブワース公演の時に販売されたジャージなのか。それならこの価格も納得がいく。音楽史の一片を身に纏うようなものだ。今回は泣く泣く諦めたが、眼福だった。
CityNomix流・ディスクユニオンの歩き方
今回の一連の体験を通じて、改めてディスクユニオンの楽しみ方を再認識した。私が実践している、そして皆さんにもお勧めしたいポイントをいくつか紹介しよう。
まず、ディスクユニオンは1941年創業の老舗であり、新品・中古を問わず膨大なアイテムを取り扱っていることを念頭に置くこと。CDやレコードだけでなく、映像作品や音楽関連書籍、グッズに至るまで、その守備範囲は広い。
特に中古コーナーは、店舗ごとに客層が異なるため、品揃えに特色が出るのが面白い。まさに一期一会。だから、近くを通りかかったら、とりあえず覗いてみるのが吉だ。いつ、どんなお宝に出会えるか分からない。
そして、新品コーナーも見逃せない。コアなファンを唸らせるようなセレクションは、店員さんたちの並々ならぬ情熱と努力の賜物だ。商品に添えられた手書きのPOPは、愛情のこもったレビューであり、貴重な情報源。これらを参考に、自分の直感を信じてジャケ買いするのもまた一興だ。
本日の戦利品と、『JILY』リマスター盤の衝撃
さて、今日の戦利品は以下の通り。
- Oasis『Time Flies… 1994-2009』リマスター日本完全生産限定盤(7インチサイズ紙ジャケット仕様、特典ステッカー付き)
- Oasis『JILY』高音質リマスター盤(1996年カーディフ公演ライブブートレグ)
- Oasis『…There and Then』の元になったメインロードスタジアム公演の輸入盤3枚組コンプリート版



帰宅後、早速『JILY』のリマスター盤を再生してみた。…これは、本当に「超名盤」だ。高音質化されたサウンドは、まるで自分がその場でライブを体験しているかのような生々しさ。一音一音がクリアで、バンドのグルーヴがダイレクトに伝わってくる。
聴きどころは満載だ。「Cigarettes & Alcohol」でリアムが歌い終わりを間違え、ドラマーのアラン・ホワイトが演奏を止めてしまい、なぜかノエルに怒られ、それをリアムが仲裁に入るというハプニング。ノエルが爪弾く「Whatever」のアコースティックギターの美しい音色。そして「Wonderwall」では、お決まりの観客との大合唱。個人的には「Round Are Way」のギターリフがスタジオ盤と異なるアレンジになっているのがたまらなく好きだ。約1ヶ月後にメインロード・スタジアムでの大一番を控え、バンド全体が凄まじい勢いに乗っているのが音からも伝わってくる。全体を通して演奏は非常に安定しており、このライブがいかに特別なものであったかを再認識させられた。
音楽探索の旅は続く – 御茶ノ水、そしてその先へ
ディスクユニオン御茶ノ水店での数時間は、まさに音楽の宝探しだった。Oasisという共通言語を通じて、過去の伝説的なライブに思いを馳せ、新たな発見に胸を躍らせる。これだから、レコードショップ巡りはやめられない。デジタルで手軽に音楽が楽しめる時代だからこそ、フィジカルなメディアを手に取り、ジャケットを眺め、ライナーノーツを読み込むという体験は、より一層価値を増しているように思う。
実は、この御茶ノ水には、もう一軒訪れるべき音楽の聖地があるのだが…それはまた別の機会に、新たな記事でお伝えすることにしよう。あなたの音楽探訪の旅にも、素晴らしい出会いがあることを願って。
それではまた、Photomoでお会いしましょう。
店舗情報:ディスクユニオン 御茶ノ水駅前店
Oasisのレア盤やブートレグCDを探しに、あるいは新たな音楽との出会いを求めて、ぜひ足を運んでみてほしい。
公式サイト: https://diskunion.net/shop/ct/ocha_ekimae
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