2025年11月24日。世界中を熱狂の渦に巻き込んだOasis(オアシス)の歴史的なリユニオン・ワールドツアーが、昨夜ついに幕を下ろしました。ロンドンの、いや世界の音楽シーンが少しだけ燃え尽き症候群気味の今、私はふと、今月上旬に訪れたソーホー(Soho)の夜を思い出しています。
CityNomixです。今回は、そんなOasis旋風が吹き荒れていたロンドン・ソーホー地区のレコードショップ探訪記をお届けします。場所は、レコード愛好家にとっての聖地、Berwick Street(バーウィック・ストリート)。向かいの「Sister Ray」を後にした私が次に向かったのは、ロンドンでロックやポップスのレア盤を探すなら絶対に外せない名店、「Reckless Records(レックレス・レコード)」です。
Oasisの聖地、Berwick Streetの夜
11月7日、午後6時。ロンドンの冬は日が落ちるのが早く、Berwick Streetはすでに夜の帳に包まれていました。しかし、ここだけは別世界のように温かいオレンジ色の光が漏れています。

この「Reckless Records」のファサードを見るだけで、私たちヴァイナル・ジャンキー(レコード中毒者)の心拍数は上がります。かつてOasisのアルバム『(What’s the Story) Morning Glory?』のジャケット写真が撮影されたことでも知られるこの通り。まさに聖地巡礼のど真ん中です。
前回の訪問ではColdplayやThe Stone Rosesの名盤に出会えましたが、今回のミッションはずばり、Oasisに関連するレア盤の発掘です。ツアーの熱気に当てられて、どうしても彼らのアナログ盤をこの手で掘り当てたかったのです。
Reckless Records店内で見つけた「Wonderwall」
店内に足を踏み入れると、古今のロックの名盤が所狭しと並ぶ、あの独特の匂いが出迎えてくれます。まずは入って左手、コレクターたちが血眼になってチェックする「レア盤・高額盤コーナー」へ直行します。ここは壁面に貴重なレコードが飾られており、まさに店の顔とも言えるセクションです。

視線を走らせると、すぐにアイコニックなジャケットが目に飛び込んできました。Oasisの代表曲、「Wonderwall」の12インチシングル盤です。1995年のCreation Recordsオリジナルプレス。
プライスタグには£75(約14,000円)の文字。近年のOasis人気と円安ポンド高を考慮すれば、日本で購入するよりも幾分リーズナブルかもしれません。しかし、コレクターとしての悲しい性(さが)か、この盤はすでに私の棚に鎮座しています。「あるよね、やっぱり」と心の中で頷きながら、今回はスルーすることにしました。
震える発見:500ポンドのノエル・ギャラガー激レア盤
「Wonderwall」があるなら、他にも何かあるはずだ。そう確信してOasis〜Britpopのコーナーをさらに深く掘り進めます。Reckless Recordsは回転が早く、訪れるたびにラインナップがガラリと変わるのが魅力です。
そして、その瞬間は訪れました。レコードの海の中で、一枚の7インチシングルが異彩を放っていたのです。

一見するとただのシングル盤に見えるかもしれません。しかし、よく見るとそこには驚くべき情報が。これは、Noel Gallagher’s High Flying Birds(ノエル・ギャラガー・ハイ・フライング・バーズ)が2022年のレコード・ストア・デイ(RSD)限定でリリースした『Magic Secrets』。
しかも、ただの限定盤ではありません。世界でたった50枚しか存在しない、ノエル本人の直筆サイン入りバージョンだったのです。プライスカードには、堂々の£500(約95,000円)。コンディションは新品同様(Near Mint)。
手が震えました。Reckless Records、恐るべし。ロンドンのど真ん中で、こんなお宝が無造作に(実際は厳重にですが)置かれているなんて。Oasis再結成の興奮冷めやらぬこの時期にこれを見つけること自体が、ある種の運命のように感じられます。もちろん、予算オーバーで連れて帰ることはできませんでしたが、この出会いだけで今夜のビールは美味しくなりそうです。
カセットテープ・リバイバルとRecklessの懐
興奮を鎮めるために、店の中ほどへ移動します。ここ数年、ロンドンのレコードショップで顕著なのがカセットテープの復権です。Reckless Recordsも例に漏れず、壁一面にカセットテープがびっしりと並べられていました。

中古が中心ですが、ラインナップは年々充実しています。この日はハードコアやパンクのテープが多く見受けられました。デジタルネイティブなZ世代にとって、このプラスチックの塊から流れるローファイな音は、逆に新鮮でクールな体験として映っているのでしょう。
The Stone Rosesのコーナーもチェックしましたが、今回はめぼしい出会いはなし。しかし、それが「掘る(Digging)」という行為の本質です。常にお宝があるわけではない。だからこそ、出会った時の喜びが爆発するのです。
まとめ:Reckless Recordsはロンドンレコード巡りのマイルストーン
今回、Reckless Recordsでの滞在は短いものでしたが、Oasis(ノエル)の超弩級レア盤に遭遇するという、強烈な体験ができました。何も買わなくとも、その場の空気と音楽への愛に触れるだけで、旅の質はぐっと高まります。
ロンドンへ旅行される音楽ファンの皆さん。Oasisの聖地Berwick Streetに来たら、ぜひReckless Recordsの扉を開けてみてください。そこには、ストリーミングでは決して味わえない、音楽の「重み」と「物語」が待っています。
さて、時間は限られています。次はすぐ近くの「Rough Trade」へ向かうとしましょう。
ロンドンのレコードショップをもっと知りたい方へ
私が実際に足を運び、厳選したロンドンのレコードショップ情報を以下の記事で詳しくまとめています。エリアごとの特徴や回るルートの参考に、ぜひご覧ください。
【ロンドンレコード聖地巡礼】ヴァイナル愛好家CityNomixが巡る、珠玉のレコードショップ完全ガイド – 発見と感動、そしてアナログの温もりを求めて
Official site:https://reckless.co.uk/
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