【web summit 2025】2019年の分野別トレンドを5年後のいま徹底解剖|社会とテックの接点とは?

Web Summit 2025へのプロローグ:なぜ私はリスボンを目指したのか

会社を立ち上げて3年。クライアントの事業を通じて、新しい価値を社会に提供しようと無我夢中で駆け抜けた日々。しかし、ふと立ち止まった時、自分が今どの地点に立っているのか、コンパスを失った感覚に襲われました。提供している価値は、本当に正しい方向を向いているのだろうか。

新しい考え方やテクノロジーの情報は、Webを通じて絶え間なく浴びるように探求していました。それでも、何かが決定的に足りない。スクリーン越しの情報だけでは埋められない、リアルな熱量。五感を揺さぶり、知的好奇心を根底から刺激するようなインプットへの渇望。そんな思いが、僕を突き動かしたのです。「そうだ、海外へ直接、情報を取りに行こう」。

そうと決まれば行動あるのみ。世界的なテックカンファレンスを調べ始めました。候補に挙がったのは、ラスベガスのCES、バルセロナのMobile World Congress、そしてポルトガル・リスボンで開催されるWeb Summit。徹底的にリサーチした結果、僕はまずWeb Summitへの参加を決意しました。その選択が、テクノロジーと社会の未来を体感する、忘れられない旅の始まりとなったのです。

Web Summit 2025参加を現実にするためのステップ・バイ・ステップ

Web Summitへの参加は、思いつきだけでは実現しません。しかし、正しい手順を踏めば、その扉は誰にでも開かれています。ここでは、僕自身の2019年の経験を基に、web summit 2025への参加を検討しているあなたのために、具体的な準備から現地での立ち振る舞いまでを、包み隠さずお伝えします。

旅の計画とWeb Summit参加方法:ロンドン経由、ヘルシンキ帰りの理由

ご存知でしたか?日本からリスボンへの直行便はありません。どこかの都市を経由する必要があります。そこで僕が選んだのは、ロンドン経由。何を隠そう、僕がこのWebの世界に深く足を踏み入れるきっかけとなったのは、イギリスのロックバンド、oasisの存在が非常に大きいのです。1999年にYahoo!オークションが日本で産声を上げた時、学生だった僕はその流通革命に歓喜しました。誰でも売り手になれる。CtoCで世界と繋がれる。oasisのレア盤を追い求め、ebayで海外との取引を重ね、ついには自身のネットショップを立ち上げるまでに。その経験が、僕のキャリアの礎となりました。

少し話が逸れましたが、そんな個人的な思い入れもあり、行きはロンドン経由のチケットを確保。しかし、帰りの便はロンドン経由だと驚くほど高額でした。熟考の末、ヘルシンキ経由で帰国するルートを選択。この決断が、後に予期せぬドラマを生むとは、その時は知る由もありませんでしたが…それはまた、別の機会にお話ししましょう。

Web Summitチケット確保の極意:賢く、お得に未来への切符を手に入れる

旅の計画で忘れてはならないのが、カンファレンス参加のチケットです。そして、これが正直なところ、かなり高価。僕が参加した2019年当時でさえ10万円近くしましたが、現在では13万円を超えることも。ここで重要な教訓が一つ。Web Summitのチケットは、開催日が近づくにつれて価格が上昇します。そのため、参加を決めたら一日でも早く購入するのが鉄則です。

さらに、いくつかのお得な購入方法があります。例えば、友人や同僚と参加する場合、「1人分の価格で2人が参加できる」2-for-1チケットが販売されることがあります。これは見逃せません。また、一度参加すると、カンファレンス終了直後に翌年用の半額チケットのオファーが届きます。リピート参加を視野に入れているなら、これ以上ないほどお得な選択肢です。何を隠そう、僕も今年のweb summit 2025参加のために、この半額チケットを既に確保済みです。もし、この2-for-1半額チケットにご興味がある方がいらっしゃれば、citynomix@photomo.blog にメールをください。クーポンコードをお送りできるかもしれません。

成功の鍵を握るWeb Summitの準備:公式アプリはもう一つの会場だ

航空券とカンファレンスチケットを手に入れたら、準備完了…ではありません。本当のWeb Summit 準備はここから始まります。開催日が近づくと、公式アプリがダウンロード可能になります。このアプリこそが、Web Summitを最大限に活用するための最強のツールなのです。

アカウントを作成しログインすると、そこにはもう一つのWeb Summitが広がっています。全セッションのスケジュールが公開され、自分の興味に合わせて参加したい講演を事前にリストアップできます。また、出展企業や参加者リストも閲覧可能。気になる企業のブースやセッションをチェックしたり、参加者プロフィールを見て興味のある人物に直接チャットでコンタクトを取ったりすることもできます。実際に僕も、事前に複数の企業からメッセージを受け取り、カンファレンス当日に会場でミーティングのアポイントを取り付け、具体的な商談に繋げることができました。Web Summitは、ただ話を聞くだけの場ではない。能動的に動く者だけが掴めるチャンスに満ち溢れているのです。

いざリスボンへ!Web Summit 2025 現地での実践的ガイド

ついにリスボンへ。空港に降り立った瞬間から、街はWeb Summitの熱気に包まれています。ここでは、僕の体験に基づいた、現地でのリアルな動き方と、カンファレンスを120%楽しむためのヒントをお届けします。

リスボン到着から会場入りまでのリアルな流れ

リスボンのウンベルト・デルガード空港に到着し、到着ゲートを出ると、目の前にWeb Summitの参加者チェックインカウンターが特設されています。ここでパスポートとチケットのQRコードを提示し、カンファレンスに不可欠なリストバンドとIDパスを受け取ります。この2つがなければ会場には入れないので、絶対に失くさないようにしてください 

リスボンのコルメシオ広場に設置された、カラフルなWeb Summitのロゴモニュメント。背景には広場の黄色い建物とアーチ、そして青空が広がっている。
リスボンのコルメシオ広場に現れたWeb Summitのカラフルなモニュメント。

チェックインカウンターの隣では、市内の交通機関や美術館などが割引になる「リスボアカード」が販売されています。市中でも購入できますが、ここで手に入れておくと後々スムーズです。その後はホテルへ移動。タクシーも良いですが、ドライバーによって料金が大きく異なることがあるため、個人的にはUberの利用をおすすめします。料金が事前に確定するので安心です。

MEOアリーナへのアクセスと入場時の注意点

Web Summitのメイン会場はMEOアリーナ。僕が宿泊した旧市街の中心、アウグスタ通りからは電車で約30分。最寄りのオリエンテ駅からは、未来的なデザインのヴァスコ・ダ・ガマ ショッピングモールを抜けて会場へと向かいます。ここで最も注意すべきは、入場時のセキュリティチェックです。会場への移動時間は30分ほどでも、入場待機列で時間を要します。見たいセッションの開始時間ギリギリに到着すると、見逃してしまう可能性が非常に高い。少なくとも30分、できれば1時間前には会場に到着することを強く推奨します。

スマートフォンの画面にQRコードを表示させている人の手。背景にはイベント会場の入口がぼやけて写っている。
スマホのQRコードでいざ会場へ!入場は時間に余裕を持って。

また、バックパックなど大きな荷物を持っていると、別のセキュリティチェックレーンに回され、さらに時間がかかることがあります。できるだけ荷物は少なく、身軽なボディバッグ程度で参加するのがスマートです。

イベント開始前のカンファレンス会場。ステージにはスクリーンが設置され、客席はまだ空席の状態。
オープニングを待つ会場。これから何が始まるのか、期待に胸が膨らむ瞬間です。

CityNomix流、Web Summitの楽しみ方

イベントで、ソースとチーズのかかったフライドポテトが入った紙容器を手に持っている様子。背景には他の人々や出店が見える。
イベントの楽しみ!フードトラックの絶品グルメ。

さて、ここからは少し肩の力を抜いて、CityNomix流の楽しみ方をお伝えしましょう。まず、ランチは会場内外に出店しているフードトラックが絶対におすすめ。世界各国の美味しい料理が揃っていて、選ぶだけでも楽しい時間です。僕が選んだ、熱々のフライドポテトに濃厚なソースとチーズがたっぷりかかった一品は、忘れられない味です。

Web Summitの会場で、プレゼンテーションを背景にビールを持つ手。
昼からテックトークを聞きながら飲むビールは格別。

そして、Web Summitの最高な点のひとつが、会場でアルコールが提供されていること。不謹慎に聞こえるかもしれませんが、想像してみてください。ポルトガルの陽光を浴びながら、冷たいビールを片手に、世界最先端のテックトークに耳を傾ける。この解放感と知的好奇心が交差する瞬間は、日本では決して味わえません。これこそWeb Summitの醍醐味です。

Web Summit 2019のステージに立ち、マイクに向かって話すマルグレーテ・ベステアー氏。背景の大きなスクリーンには「WEB SUMMIT」のロゴが映し出されている。
Web Summit 2019でGDPRの重要性について講演するマルグレーテ・ベステアー氏。

この経験を通じて気づいたのは、Web Summitが「完成品」の発表会ではなく、「未来」を議論する場であるということ。アメリカ中心になりがちなCESとは異なり、ヨーロッパで開催されるWeb Summitには独特の空気が流れています。地続きの歴史の中で、侵略と独立を繰り返し、自らの権利を勝ち取ってきたヨーロッパの人々は、テクノロジーに対しても健全な批評精神を持っています。特に、アメリカの巨大テック企業に対しては、「好きにはさせない」という気概が感じられます。2019年の大きなテーマであった個人情報保護、すなわちGDPRの成立は、その象徴でした。 我々デジタルマーケターにとっては、Cookie規制などで大変な時代になりましたが、世界が動くダイナミズムを肌で感じられる、これ以上ない刺激的な体験でした。

【徹底解剖】Web Summit 2019のトレンドは5年後どうなったか?未来を予測するWeb Summit 2025

イベント会場の大きなスクリーンにビデオ通話で登壇するエドワード・スノーデン氏と、それを見上げる聴衆。
2019年のスペシャルゲスト、エドワード・スノーデン氏がリモート登壇。

2019年のオープニングセレモニー。会場の興奮が最高潮に達したのは、スペシャルゲストとしてエドワード・スノーデンがモスクワからライブ中継で登場した瞬間でした。このサプライズは、その年のWeb Summitが「個人情報保護」をいかに重要視していたかの現れでした。あれから5年。当時、未来の羅針盤として提示されたテーマは、2025年の今、どのような現実になっているのでしょうか。過去を振り返り、未来を読み解きます。

① 個人情報保護(Privacy):GDPRから始まるデータ主権の潮流

2019年、EUの競争政策担当委員であったマルグレーテ・ベステアー氏は、GDPRの重要性を力説しました。5年後の今、GDPRはデジタル規制のグローバルスタンダードとなり、その影響力は増すばかりです。2025年には「Omnibus改革」により、規制はさらに強化・簡素化され、中小企業への適用も進んでいます。当時P&Gが語っていたプライバシーへの配慮は、今や「個人データを“販売せず”」とポリシーに明記するほど明確な企業姿勢となりました。プライバシー保護は、もはやオプションではなく、企業存続の必須条件となったのです。

② 環境 & 社会問題(Sustainability):企業の倫理が問われる時代

Web Summit 2019でH&Mが提示したサステナビリティ戦略目標のスライド。「100%循環・再生可能」「100%公正・平等」「100%変革をリード」という3つの目標がアイコンと共に記載されている。
H&Mグループが掲げる、未来に向けた3つのサステナビリティ戦略目標(Web Summit 2019)

「企業は社会に対してどのような責任を負うべきか」。この問いは、2019年当時からさらに切実なものになっています。H&Mは当時、サステナブルな目標を掲げました。 2025年現在、その目標はほぼ達成され、製品の89%がリサイクルまたはサステナブルな素材から作られています。IKEAもまた、プラスチック製品の再生可能素材への転換や、10億ドル超のリサイクル投資で「完全循環型」への道を突き進んでいます。企業の環境への取り組みは、もはや単なるCSRではなく、事業戦略そのものへと進化しました。

③ ジェンダーニュートラル(Inclusion):多様性が生み出す企業の強さ

ステージ上で対談するJPモルガンとIKEAの代表者2名。背景のスクリーンにはそれぞれの企業ロゴが映し出されている。
JPモルガンとIKEAの代表者が登壇し、ジェンダーニュートラルな取り組みについて議論する様子。

2019年のステージで、IKEAとJPMorganの担当者は、自社のD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)について語りました。5年後、両社ともに女性役員比率は50%前後の高水準を維持し、育児支援などの制度も全社的な文化として定着しています。当時語られた個人の体験や思想は、今や企業の競争力を支える強固な方針へと成長を遂げたのです。

④ ビジネス & モデル革新:スーパーアプリと再販プラットフォームの今

南米のスーパーアプリ「Rappi」や、スニーカー再販プラットフォーム「StockX」は、2019年に大きな注目を集めました。2025年現在、Rappiは南米での拡張を続け、その地位を不動のものにしています。StockXもまた、限定コラボや新サービスの導入で市場をリードし続けています。当時見えた新しいビジネスモデルの萌芽は、今や巨大な市場を形成するに至りました。

⑤ AI:Amazonが描いた未来と現在地

「TRAINING AMAZON's AI」と題されたプレゼンテーションのスライド。AI育成の4つのポイントとして「Massive Scale」「Breadth of Choices」「Human Feedback」「Experimentation Culture」がアイコンと共に挙げられている。
Web Summit 2019でAmazonが語った、AIを育成するための4つの重要な要素。

Amazonが2019年に語ったAI育成の4つの柱「Massive Scale」「Breadth of Choices」「Human Feedback」「Experimentation Culture」。これらは見事に結実しました。2025年現在、100万台を超える倉庫ロボットが稼働し、基盤AI「DeepFleet」で効率は10%以上改善。Generative AIモデル「Nova」シリーズも導入され、AIはAmazonの事業に不可欠な神経網となっています。あの日のプレゼンテーションは、未来の設計図そのものだったのです。

⑥ 5G、組織論、そして未来技術の兆し

2019年のWeb Summitでのファーウェイの講演スライド。「Huawei Mobile Services Strategy」というタイトルで、「A Fully-Open Ecosystem」と「All-Scenario Experience」の2つの戦略の柱が示されている。
2019年のWeb Summitで発表されたファーウェイのモバイルサービス戦略。

Huaweiが掲げたオープンなエコシステム構想は、地政学的リスクに直面しつつも、5Gインフラの拡大は世界的に続いています

「NetflixのKPIについての考え方」というタイトルのプレゼンテーションスライド。インプット(視聴時間、再生回数、セッション数)、ミッドプット(ユーザーあたりの再生回数・時間・セッション数)、アウトプット(リテンション率、サインアップからのユーザー率)の3つの列でKPIが整理されている。
Web Summit 2019でSegmentが紹介した、NetflixのKPIマネジメント設計。インプット、ミッドプット、アウトプットに指標を分類している点が特徴です。

また、データ分析の重要性も、今やあらゆるビジネスの共通言語となりました。そして、当時まだ兆しであったTommy Hilfigerの3Dデザインによる製造革命や、CTRL-Labsの神経インターフェース技術も、それぞれ着実な進化を遂げ、産業の未来を静かに、しかし確実に変えつつあります。

まとめ:Web Summit 2025が私たちに問いかけるもの

LocalGlobeが予測する、今後20年でビッグテック企業が生まれる10の産業分野を示すインフォグラフィック。分野は、高齢化、食、モビリティ、住宅、エネルギー、金融、健康、教育、行政、未来の働き方。
VC「LocalGlobe」が予測する、次のビッグテック企業が生まれる10の産業。

2019年のWeb Summitで議論された未来は、2025年の「今」に繋がっていました。個人情報保護、サステナビリティ、AI、新しいビジネスモデル——。当時、社会とテクノロジーの「接点」として語られたテーマは、今や企業の中核戦略であり、社会のインフラそのものです。

Web Summitは、未来を予言する場所ではありません。世界中から集まった人々の知性と熱気がぶつかり合い、未来のコンセンサスを形成していく場所です。では、web summit 2025では、どんな未来が語られるのでしょうか。それを確かめるためには、自らその場に身を置き、空気を吸い、人と話し、議論の渦に飛び込むしかありません。この記事が、あなたの次の一歩を後押しする、小さなきっかけになることを願っています。リスボンで、お会いしましょう。

公式サイト : https://websummit.com/

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