ハワイのレコード聖地探訪記|カカアコ「Hungry Ear」で見つけた音楽の宝物

ハワイでレコードを探す旅:カカアコのアートな街角から

デジタルの潮流に身を置きながらも、ふとアナログなグルーヴに心を奪われる瞬間がある。僕、CityNomixにとって、旅先でレコードショップの扉を開けるのは、そんな感覚を呼び覚ますための儀式のようなものだ。特に、灼熱の太陽と心地よい風が交差するハワイ・ホノルルでは、その感覚は一層鋭敏になる。

ワイキキの喧騒から少し足を伸ばしたカカアコ地区。かつての倉庫街が、今やウォールアートとクリエイティブなエネルギーで満ち溢れる街へと変貌を遂げた。その一角にある商業施設「SALT」の2階に、僕が「世界一」と敬愛してやまないレコードショップ「Hungry Ear Records」は静かに佇んでいる。

黄色い壁に「Hungry Ear」という文字と花が描かれたレコード店の外観。オレンジ色のドアとスロープが見える。
カカアコのSALT2階にあるレコード店「Hungry Ear」。ポップな壁画が目印です。

黄色い壁に描かれたポップな壁画が目印だ。インダストリアルな建物の雰囲気と、カラフルなアートワークのコントラスト。これこそがカカアコの空気感であり、これから始まる宝探しへの期待感を高めてくれる。さあ、音楽の旅を始めよう。

なぜ「Hungry Ear Records」は世界一のハワイ レコードショップなのか

世界中のレコードショップを巡ってきた僕が、なぜここをNo.1と断言するのか。その理由は、店内に足を踏み入れた瞬間に始まる、一連の体験にある。まず、オーナーやスタッフの心温まる接客だ。彼らは必ず笑顔で「何か探しているものは?」と声をかけてくれる。その問いかけはマニュアル通りのものではなく、純粋な音楽への好奇心と、客へのリスペクトに満ちている。

レコード店の入口付近。壁には「HUNGRY EAR RECORDS」と書かれた黄色いライトボックスのポスターやニルヴァーナのコンサートポスターが飾られ、隣には様々な色のTシャツが掛けられた衣類ラックが置かれている。
入口付近では、クールなポスターと共にオリジナルグッズがお出迎え。

そして、何より素晴らしいのが、その商品管理、特に中古レコードに対する深い愛情だ。ハワイでは、湿度のせいか、レコードが裸のまま無造作に置かれ、コンディションに期待できない店も少なくない。しかし、Hungry Ear Recordsは違う。買い取られたレコードは、一枚一枚丁寧にクリーニングされ、新しい保護袋に入れられてから店頭に並ぶ。それはまるで、古着が最高のヴィンテージピースとして生まれ変わる瞬間のようだ。

さらに、コンディション表記の誠実さには毎回感心させられる。「Shallow scuffs / No skips / Sounds Good(浅いスレあり/針飛びなし/音良好)」といった具体的な説明が、すべての盤に添えられている。この細やかさが、僕たちコレクターに安心と信頼を与えてくれるのだ。これこそ、彼らが音楽とレコードに注ぐ「アロハ」の精神なのだと、僕は思う。

ハワイで最高のレコードディギング体験がここにある

広々として清潔な店内は、ハワイらしい陽光が大きな窓から差し込み、非常に心地よい。ジャンルごとに整理された木箱を眺めているだけで、あっという間に時間が過ぎていく。まずは壁にディスプレイされた、新旧織り交ぜたおすすめ盤をチェックするのが僕のルーティンだ。

明るい日差しが差し込むレコード店の店内。木製の棚に中古レコードがジャンル別に整理されており、天井からはミラーボールが吊り下げられている。
ハワイの日差しを浴びながら、お気に入りの一枚を探す時間。
広々としたレコード店の店内。木製の箱にヴァイナルレコードがジャンル別に整理されており、壁にもレコードが飾られている。天井にはスポットライトとディスコボールが見える。
宝探し気分でレコードをディグ。お気に入りの一枚がきっと見つかる。
レコードショップの店内の様子。木製の棚にはレコード、CD、ターンテーブルやスピーカーなどのオーディオ機器、トートバッグなどのグッズが所狭しと並んでいる。
宝探し気分が味わえる、機材もグッズも揃うレコードショップ。

今日の発見:珠玉のヴィンテージロックとカセットテープ

この日、僕の指先が捉えたのは、ロックの歴史を彩る数々の名盤だった。Neil Young & Crazy Horseの『Rust Never Sleeps』、Led Zeppelinの幻想的なジャケットが印象的な『Houses of the Holy』、そしてJimi Hendrixの『Rainbow Bridge』。どれもが今も色褪せることのない輝きを放っている。

レコード棚に積まれたニール・ヤング&クレイジー・ホースのアルバム「ラスト・ネヴァー・スリープス」のレコードジャケット。ジャケットにはステージで演奏するバンドの写真が使われている。
レコード店で見つけたニール・ヤング&クレイジー・ホースの「ラスト・ネヴァー・スリープス」。
レッド・ツェッペリンのアルバム『聖なる館』のレコードジャケット。オレンジ色の空の下、ジャイアンツ・コーズウェーのような幾何学的な岩場を、裸で金髪の子供たちが登っている。
レッド・ツェッペリンの5作目のアルバム『聖なる館』の象徴的なアートワーク。
レコード店の棚に置かれたジミ・ヘンドリックスのアルバム『Rainbow Bridge』。ジャケットには価格とUKプレス盤であることを示すステッカーが貼られている。
レコード店で見つけたジミ・ヘンドリックス『Rainbow Bridge』のUKプレス盤。

レコードだけでなく、カセットテープの棚も見逃せない。90年代の空気を真空パックしたようなNirvanaの『MTV Unplugged in New York』や、Bon Joviの『These Days』。さらには、スペイン語表記が珍しいメキシコ版のBon Jovi『Slippery When Wet』まで。デジタルでは決して味わえない、モノとしての存在感がそこにはあった。

プラスチックケースに入ったニルヴァーナのアルバム「MTV Unplugged in New York」のカセットテープ。ジャケットには、暗いステージで演奏するバンドの写真が使われている。
伝説のライブをカセットテープで。ニルヴァーナの「MTV Unplugged in New York」。
ボン・ジョヴィのアルバム『ジーズ・デイズ』のカセットテープ。プラスチックケースに入っており、オレンジ色の800ドルの値札が貼られている。
ボン・ジョヴィの名盤『ジーズ・デイズ』、カセットテープで発見。
木製の棚に置かれた、ボン・ジョヴィのアルバム「Slippery When Wet」のメキシコ版カセットテープのクローズアップ。
ボン・ジョヴィのアルバム「Slippery When Wet」のメキシコ版カセットテープ。
木製のホルダーに収められた、黄色いインデックスカードのついたカセットテープのクローズアップ。スペイン語の曲名が記載されている。
1986年製のカセットテープ。スペイン語で書かれたトラックリストが、コレクター心をくすぐります。
プラスチックケースに入ったレッド・ツェッペリンのアルバム『フィジカル・グラフィティ』のカセットテープのクローズアップ。
レッド・ツェッペリン – フィジカル・グラフィティ(カセット)

カカアコ 買い物で手にした最高のトレジャー:The Who『Who’s Next』UK初期プレス盤

そして、この日のハイライトは突然訪れた。いつものように60-70年代ロックのセクションを掘り進めていると、あの象徴的なジャケットが目に飛び込んできた。The Whoの歴史的傑作、『Who’s Next』だ。手に取った瞬間、何かが違うと感じた。値札には35ドルとある。悪くない価格だ。

レコード店の棚にある、ザ・フーのアルバム『フーズ・ネクスト』のヴァイナルレコード。バンドメンバーが荒涼とした土地に立つコンクリートのモノリスの前にいる、象徴的なアルバムアートワークが特徴。
レコード屋でザ・フーの名盤『フーズ・ネクスト』を発見!しかも貴重なUK盤です。

しかし、僕の心を捉えたのは、そのコンディションの良さだけではなかった。盤をそっと引き出すと、漆黒のTrack Recordレーベルが現れた。これはUK盤の初期プレスの特徴だ。鼓動が速まるのを感じながら、スマートフォンのライトを頼りに、レコード盤の最も内側、音楽の溝がない「ランアウト」と呼ばれる部分を覗き込む。

ザ・フーのアルバム『フーズ・ネクスト』の英国盤LPレコード、A面の黒いトラック・レコード・レーベルのクローズアップ。
ザ・フー『フーズ・ネクスト』英国盤LPの黒いトラック・レコード・レーベル
黒いレコード盤のランアウト部分のクローズアップ。「A4」というマトリクス番号が刻印されているのが見える。
ランアウトに輝く「A4」の刻印

そこに刻まれていたのは「A//4」というマトリクス番号。これは、1971年のリリース当時にプレスされた、非常に初期の盤であることを示す確かな証拠だ。「完全初回」ではないにせよ、ほぼ同時期のプレスであり、音質への期待は高まるばかり。この発見のプロセスこそ、中古レコード探しの醍醐味だ。かつては膨大な知識と経験が必要だったが、今では生成AIに画像を見せれば、その価値や背景を瞬時に教えてくれる。テクノロジーが、アナログな趣味をより深く、面白いものにしてくれたのだ。

この一枚を35ドルで手に入れられたのは、幸運以外の何物でもない。これだから、ハワイでのレコード探しはやめられないのだ。

ホノルル レコードショップの魅力と音楽文化

Hungry Ear Recordsが素晴らしいのは、品揃えや品質管理だけではない。店内に流れる空気そのものが、音楽愛に満ちている。常連客とスタッフが交わす会話は、いつも音楽に関する深い知識と情熱に溢れている。彼らのような熱心なファンが、大切にしてきたコレクションをこの店に持ち込むからこそ、常に質の高い中古レコードが循環しているのだろう。それは、この店の前に店を構える「Idea’s Music and Books」も同様で、この一角はホノルルの音楽好きにとっての聖地となっている。

旅の記念に最適なハワイ 音楽 お土産

レコードやカセットテープはもちろんのこと、Hungry Ear Recordsではオリジナルのグッズも充実している。レトロなデザインのステッカーや、クールなロゴTシャツは、音楽好きならずとも欲しくなるアイテムばかりだ。僕も訪れるたびにステッカーを数枚購入し、ラップトップやスーツケースに貼っている。それは、この素晴らしい店への敬意の印であり、次の訪問を誓うお守りのようなものだ。

レコード店「ハングリーイヤー・レコード」の店頭カウンターに置かれた、様々なデザインのオリジナルステッカーやハワイ関連ステッカーが並んだ陳列棚。
HungryEarのオリジナルステッカーはカラフルでカワイイ。

レコード、CD、カセット、さらにはターンテーブルといった機材まで揃うこの店は、音楽を探求するすべての人にとっての楽園だ。ハワイ旅行の思い出に、ただの置物ではない、「体験」を持ち帰る。そんな贅沢を、ここでは誰もが味わうことができる。

Hungry Ear Recordsへのアクセス

Hungry Ear Recordsは、カカアコ地区の中心的な商業施設「SALT At Our Kaka’ako」の2階にあります。ワイキキからは車やTheBus、Biki(シェアサイクル)などでアクセス可能です。周辺にはカフェやレストラン、ブティックも多く、一日中楽しめます。

公式サイト: https://www.hungryearrecords.com/

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まとめ:音楽のアロハが宿る、最高のハワイ レコード体験

太陽、海、そして音楽。ハワイを構成するこれらの要素の中で、音楽の魂に最も深く触れられる場所が、僕にとっては「Hungry Ear Records」だ。ここは単に商品を売買する場所ではない。音楽への愛が循環し、新たな発見が生まれ、人と音楽が繋がるコミュニティそのものだ。もしあなたが少しでも音楽を愛しているのなら、次のハワイ旅行の際には、ぜひカカアコのこの店の扉を開けてみてほしい。きっと、あなたの旅を忘れられないものにする、特別な一枚との出会いが待っているはずだから。

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