【C.E ナイキ Air Max Dn レビュー】6年ぶりの邂逅。オンライン購入から実物まで徹底解説

静寂を破る通知、6年ぶりの鼓動

それは、いつものように指先でスクリーンを滑らせていた、何気ない午後のことだった。Instagramのフィードに流れてきた一つの動画。ダークで、断片的で、どこか不穏な空気感を纏ったその映像は、紛れもなく私が愛してやまないブランド、C.E(シーイー)、またの名をCav Emptのものだった。ノイズ混じりのシンセサウンドと、高速で切り替わるグラフィック。彼らの映像は常に謎めいていて、見る者の思考を掻き乱し、そして強烈に惹きつける力がある。

新作のツナギだろうか。その独特なシルエットを目で追っていると、カメラは不意に足元を捉えた。一瞬、呼吸が止まる。そこに映し出されていたのは、見慣れたスウッシュ。Nikeだ。記憶の断片が、脳裏で激しくスパークする。2019年。そう、彼らは一度、邂逅している。当時、まだ私はC.Eの深淵に足を踏み入れたばかりで、そのコラボレーションの価値をリアルタイムで理解できずにいた。後になってその事実を知り、手に入れられなかったAir Max 95を想い、静かに唇を噛んだのは、そう遠くない過去の記憶だ。

「今回は、逃さない」

情報解禁は8月20日。公式サイトでの発売は、8月22日の金曜日。午前9時。デジタルマーケティングを生業とする私にとって、始業前のこの時間は、まさに天啓だった。過去の失敗から得た教訓はただ一つ。「準備こそがすべて」。静かな決意を胸に、私はその運命の金曜日を待った。

C.E (Cav Empt)とは何か? デジタル時代の都市迷彩

本題に入る前に、C.Eというブランドについて少し語らせてほしい。彼らは単なるアパレルブランドではない。むしろ、一つの思想体、あるいは実験的なメディアと呼ぶ方がしっくりくる。グラフィックデザイナーのSk8thing、Toby Feltwell、そして菱山豊という3人のクリエイターによって設立されたC.Eは、その設立背景からして異彩を放っている。

Sk8thingは、A BATHING APE®やBillionaire Boys Club/ICECREAMといった伝説的ブランドのグラフィックを手掛けた謎多き天才。Toby Feltwellは、Mo’ WaxやXL Recordingsといった音楽レーベルでの経験を経て、NIGO®の右腕として活躍した人物だ。彼らが織りなすクリエイションは、音楽、アート、テクノロジー、そして哲学までもが複雑に絡み合った、極めてコンセプチュアルなものだ。

彼らのデザインの核となるのは、ヴィンテージのSF映画、サイバーパンク、社会批評といった要素をコラージュした独特のグラフィック。それは時にシニカルで、時にノスタルジック。インターネット黎明期のデジタル感と、アナログなノイズが同居する世界観は、現代社会の輪郭を鋭く切り取っている。C.Eを纏うことは、単に服を着るという行為を超え、この情報過多な都市で生きるための、一つの表明となるのだ。

過去の邂逅:2019年のC.E x Nikeコラボレーションを振り返る

今回が2回目となるNikeとのコラボレーション。その意義を理解するためには、2019年の最初のコラボを振り返る必要があるだろう。当時リリースされたのは、アイコニックなAir Max 95をベースにしたスニーカーと、それに連動したトラックスーツ、キャップなどだった。Air Max 95には、C.Eらしいデジタルなグラフィックが全面にプリントされ、既存のスニーカーファンとC.Eの信奉者の両方に衝撃を与えた。それは、ストリートウェアの王道であるNikeに、C.Eという異分子が侵食していくような、スリリングなコラボレーションだった。この成功があったからこそ、今回のコラボへの期待は、私の中で静かに、しかし確実に膨れ上がっていったのだ。

【C.E ナイキ Air Max Dn レビュー】オンライン購入という名の静かなる戦争

そして、運命の8月22日、金曜日。午前8時59分。私はPCの前で、静かに呼吸を整えていた。過去、New Balanceの公式サイトでの抽選販売で何度も煮え湯を飲まされてきた経験が、私の指先を冷たくする。だが、今回は違う。C.Eの公式サイトでは、事前にクレジットカード情報を登録できる。PayPalのような外部決済サービスは、クリック数が増えるリスクを伴う。一手でも少なく。コンマ1秒を争う世界では、その差が勝敗を分ける。私はダイレクト決済を選び、複数のタブを開いてその時を待った。

ターゲットは「グレー」。ブラックは私のワードローブでは汎用性が高すぎるが故に埋もれてしまう。グリーンは少し冒険が過ぎる。決め手は、公式サイトで公開されていた2025年秋冬のルックブックだった。そこに登場するモデルたちの足元は、ほとんどが今回のコラボスニーカーで固められていたのだ。そのルックの中で、最も自然に、そしてクールに映ったのがグレーだった。「なぜもっと早く気づかなかったのか」と自分を責めつつも、言い訳のように「過去のコラボモデルをスタイリングに使っているだけだと思った」と心の中で呟いた。

発売日当日の戦略と「cavempt ナイキ 履き心地」への期待

午前9時。約束の時間。しかし、画面は変わらない。F5キーを叩く指に力がこもる。まずい。悪夢が蘇る。心臓の鼓動が、やけに大きく耳に響く。30秒が永遠のように感じられた、その時。画面が切り替わった。あのミステリアスな動画が、背景でループしている。美しい。だが、感傷に浸っている暇はない。グレーは、あるか。マイサイズは、残っているか。あった。震える指でカートに入れる。次の瞬間、私は決済ボタンをクリックしていた。

運命のクリックと手にした一足

「決済が完了しました」。画面に表示されたその無機質な文字列が、これほどまでに輝いて見えたことがあっただろうか。思わず、誰もいない部屋で小さなガッツポーズが出た。やり遂げた。今日の仕事は、もう終わったも同然だ。そんな達成感に浸りながら、ふと疑問が湧く。「意外と、競争率は低かったのか?」。その後、断続的にサイトをチェックしていると、在庫はまだ残っているようだった。情報解禁から発売までの期間が短かったからだろうか。それとも、このデザインは少し玄人向けすぎたのか。

観察を続けると、まずブラックの小さいサイズと大きいサイズから在庫が消えていった。やはり定番色は強い。次いでグレー。こちらは小さいサイズから順当になくなっている印象。そんな市場分析のようなことをしているうちに、午前中の仕事が終わり、午後に再度確認すると、すべてのカラー、すべてのサイズが「SOLD OUT」の表示に変わっていた。安堵と興奮が入り混じった、不思議な感覚。商品を手にできるのは、1週間の出張から帰った後だ。その期待感を胸に、私はキーボードへと向かった。

【C.E ナイキ Air Max Dn レビュー】開封の儀、五感を刺激するディテール

長い出張が終わり、自宅に戻ると、待ちわびた段ボールが私を迎えてくれた。カッターの刃を慎重に入れ、開封する。中から現れたのは、スニーカーの箱だけではなかった。2025年秋冬のカタログとステッカーが同梱されていたのだ。C.Eのカタログは、もはや「カタログ」という言葉の定義を軽く超えている。前回同様、ポスタータイプの一枚紙だが、今回はさらに解読困難なコラージュ作品と化していた。これはプロダクトリストではなく、アートピースだ。そんなことを思いながら、いよいよ本体と対峙する。

箱から漂うコラボレーションのオーラ

マットなブラックを基調としたスペシャルボックス。蓋には白いスウッシュ、そして側面にはホワイトとオレンジで大胆にデザインされた「AIRMAX」のロゴが鎮座している。ミニマルでありながら、強烈な存在感を放つ。この時点で、すでに期待値は最高潮に達していた。

C.EとNikeのコラボスニーカー、Air Max DN8 SPの黒い外箱。蓋には白いスウッシュ、側面にはオレンジと白のAIRMAXロゴがデザインされている。
C.EとNikeのコラボレーションモデル、Air Max DN8 SPのスペシャルボックス。印象的なロゴデザインが開ける前から期待感を高める。

蓋を開けると、目に飛び込んできたのはグラフィカルな包装紙。スニーカーの構造を分解したかのような、設計図風のイラストが全面にプリントされている。これぞC.E。単なる保護材にまで、彼らの美学が徹底されている。この一枚の紙が、これから現れるプロダクトへの序章として、完璧な役割を果たしていた。

C.Eとナイキのコラボ、エアマックスのシューズボックス。開封すると、スニーカーの設計図がプリントされたC.Eらしいデザインの包装紙が見える。
開封の儀。コラボならではの、C.Eデザインが施された特別な包装紙。

期待を超える質感とデザイン – Air Max Dn グレーの全貌

包装紙をそっとめくる。そして、ついにその全貌が明らかになった。「…かっこいい」。思わず声が漏れた。写真で見ていた印象を、遥かに超える質感がそこにはあった。C.Eのプロダクトは、実物を手に取った時にその真価がわかることが多い。今回も、まさにそれだった。

グレーと白のデジタルカモフラージュ柄のナイキ Air Max DN SPスニーカーが、靴箱の中に置かれている。特徴的なバブル状のエアユニットがソール部分に見える。
箱を開けると姿を現すAir Max DN SP。グレーのデジタルカモ柄と未来的なエアユニットが目を引きます。

アッパーを覆う、グレーを基調としたデジタルカモフラージュ柄。それは単なるプリントではなく、素材のテクスチャーと相まって、深みのある表情を生み出している。オリジナルのAir Max Dnは、時にそのカラフルさから少し派手すぎる印象を受けることもあった。同僚からも「これも結構ケバいんじゃないの?」と揶揄されたが、その疑念は完全に払拭された。これは「ケバい」のではなく、「洗練」されているのだ。

黒い靴箱の上に置かれた、ライトグレーのカモフラージュ柄が特徴的なナイキのスニーカー。シュータンにはネオンイエローのロゴがあしらわれている。
ライトグレーのカモフラージュ柄に、ネオンイエローのロゴが映える一足。

ディテールへのこだわりが放つオーラ

細部に目を移すと、その完成度の高さに改めて感嘆する。正面から見ると、シュータンに配されたネオンイエローのコラボロゴが、モノトーンの世界に鮮烈なアクセントを加えている。そして、靴紐。単なる白い丸紐ではなく、アッパーのデザインと呼応するようなパターンが織り込まれているのだ。

グレーのカモフラージュ柄が特徴的なナイキスニーカー。正面から撮影されており、シュータンの黄色いロゴとデザインされた靴紐が見える。
正面からのビュー。デザインされた靴紐もクールなポイント。

ヒール部分に目をやると、立体的に成形された「Air Max Dn」のロゴが、半透明のパーツに埋め込まれている。正直、このロゴのデザインは購入前、少し懸念していた部分だった。しかし実物は、全体の質感を一段階引き上げる、見事なディテールとして機能していた。

白とグレーのカモフラージュ柄スニーカーのヒール部分。立体的なAir Max Dnのロゴが特徴的。
ヒールに輝く立体的なAir Max Dnロゴ

そして、このスニーカーの心臓部であるソール。アウトソールを裏返すと、4つのエアユニットがブリッジで繋がっているような独特の構造がよくわかる。ライトグレーの斑点模様のソールに、黄色の「Tn AIR」ロゴが映える。機能性とデザイン性が見事に融合した、未来的な造形美だ。

上から撮影したナイキのスニーカーの靴底。ライトグレーの斑点模様のアウトソールに、透明なエアユニットと黄色の「Tn AIR」ロゴが見える。
連結したエアユニットが特徴的なアウトソール

実践編:「cavempt ナイキ 履き心地」と「C.E スニーカー コーデ」の考察

鑑賞の時間は終わりだ。スニーカーは、履いてこそ価値がある。私は逸る気持ちを抑えながら、足を通した。

実際に履いてみてわかること – 「cavempt ナイキ 履き心地」のリアル

足を入れた瞬間に感じる、適度なホールド感。Nikeが「ダイナミックエア」と呼ぶ新しいエアユニットシステムは、これまでのAir Maxとは明らかに異なる感触だ。後足部とかかと部分で圧力の異なるチューブを採用しているというが、その効果は歩き出すとすぐに体感できた。一歩一歩踏み出すごとに、エアユニットがスムーズに連動し、地面からの衝撃を吸収しながら、軽やかな反発力を生み出す。見た目のゴツさからは想像できない、軽快な履き心地。これは、街を歩き回ることを信条とする私にとって、最高の相棒になり得る。

ライトグレーのカモフラージュ柄が施されたナイキ エア マックス DN8 SPスニーカー。特徴的なエアユニットが見える内側を写した写真。
エアマックスDN8の内側はこんな感じ。独特のソールデザインが目を引きます。

内側から見ても、外側から見ても、そのデザインは破綻がない。特に、少し斜めから見た時の、アッパーのグラフィックと未来的なソールユニットが織りなすシルエットは、まさに芸術的だ。ヘリンボーン柄のラグの上で、改めて自分の足元を眺める。「いやー、カッコイイ」。自然と、そんな言葉が口をついて出た。

グレーと白の迷彩柄が特徴的なナイキのスニーカーを履いた足元のクローズアップ。背景はヘリンボーン柄のラグ。
履いてみて外側はこんな感じです。いやーカッコイイ。

この一足をどう着こなすか?「C.E スニーカー コーデ」の提案

このスニーカーのポテンシャルを最大限に引き出すには、どんなスタイリングがいいだろうか。体験メモにも書いた通り、まず思い浮かぶのはショートパンツとの組み合わせだ。ボリュームのあるシルエットと複雑なデザインディテールは、足元を主役にするスタイリングでこそ映える。C.EのグラフィックTシャツに、シンプルなナイロンショーツを合わせ、このスニーカーを履く。それだけで、夏日の都市散策は特別なものになるだろう。

秋冬シーズンならどうだろうか。C.Eのルックブックを参考に、ワイドなシルエットのカーゴパンツや、少しテーパードのかかったテック系のパンツと合わせるのが定石だろう。パンツの裾を少しロールアップするか、あるいはソックスにインして、スニーカーの全貌を見せるスタイリングが効果的だ。色は、ブラックやグレー、オリーブといったアーバンなカラーで統一し、スニーカーのデジタルカモ柄とシュータンのイエローを際立たせるのが、CityNomix流の着こなしだ。

【C.E ナイキ Air Max Dn レビュー】結論:これは記録ではなく、体験するスニーカーだ

一つの通知から始まった、今回のC.EとNikeを巡る小さな冒険。それは、オンラインでの熾烈なクリック戦争、待ちわびる時間、そしてついに実物を手にした時の高揚感、すべてが忘れがたい体験となった。このAir Max Dnは、単なるスニーカーではない。C.Eというブランドが持つ思想と、Nikeという企業が持つ革新性が交差した、現代のストリートカルチャーを象徴するプロダクトだ。

良い商品に出会うこと。良い商品を買うこと。そして、良い商品を使いこなすこと。その一連のプロセスは、私たちの日常に、ささやかだが確かな彩りを与えてくれる。このレビューを読んでくれたあなたが、もし街でこのスニーカーを見かけたら、その背景にあるストーリーに少しだけ思いを馳せてみてほしい。そして、もし手に入れる機会があるのなら、迷わずその一歩を踏み出すことをお勧めする。これは、コレクションケースに飾るための「記録」ではなく、街へ出て、その履き心地とデザインを五感で味わうための「体験」なのだから。

公式サイト:https://www.cavempt.com/

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