リスボンの街を歩いていると、ふと視線を上げた先に必ずその姿が見える場所があります。7つの丘の中でも最も高い丘の上に鎮座し、古くからこの街を見守ってきた要塞、「サン・ジョルジュ城(Castelo de S. Jorge)」。
多くのガイドブックでは「歴史的な観光名所」として紹介されていますが、実際に足を運んでみると、そこは単なる遺跡ではありませんでした。そこは、リスボンという街が持つ「色彩」と「光」を最もドラマチックに体験できる、街一番の展望台だったのです。
今回は、デジタルマーケティングを生業としながら世界の街を歩く私、CityNomixが、カメラを片手にサン・ジョルジュ城を訪れた記録を共有します。歴史の教科書のような解説ではなく、ファインダー越しに見つけた「絶景」と、予期せぬ「癒やし」の体験を中心に、この場所のフォトジェニックな魅力をお伝えしましょう。
リスボンの空に近い場所へ:城へのアプローチ
サン・ジョルジュ城への道のりは、それ自体がひとつのアトラクションです。急な坂道を登り、迷路のようなアルファマ地区を抜けていく過程で、私たちは少しずつ地上の喧騒から離れ、空へと近づいていきます。

城壁沿いの石畳の坂道を歩いていると、リスボンのアイコンである黄色いバスが通り過ぎていきました。古い石造りの壁と緑の並木、そして鮮やかな黄色のコントラスト。これぞリスボン、という風景に、早くもシャッターを切る手が止まりません。

城へ向かう途中、ふと足を止めたのが「Pastelaria Santo António」です。壁一面に描かれた青と白のアズレージョ(タイル装飾)が見事でした。窓辺の黒いアイアンバルコニーとの組み合わせが美しく、思わず見入ってしまいます。ここはナタ(エッグタルト)の有名店でもあるので、エネルギーチャージに立ち寄るのも良いでしょう。

そして辿り着いたのが、19世紀に建造された正門「Arco do Castelo」。石造りの重厚なアーチの上には紋章が掲げられ、ここから先が王族や貴族、そして軍人たちの領域であったことを物語っています。この門をくぐると、いよいよ「天空の城郭」への入場です。
【絶景1】松の木越しのテージョ川と「4月25日橋」
城内に入り、まず目指すべきは広場にある展望台(Miradouro)です。ここからの眺めは、まさに圧巻の一言。リスボンの街並みだけでなく、広大なテージョ川の水平線までを一望できます。

案内図を確認すると、敷地がいかに広大かがわかります。城壁に沿ってぐるりと歩くことができますが、まずは南側のテラスへ向かいましょう。

広場には大きな松の木が植えられており、強い日差しを遮る心地よい木陰を作っています。多くの観光客が手すりに寄りかかり、眼下の景色を楽しんでいました。

ここで私が最もおすすめしたい構図がこちらです。松の枝を自然の「額縁」に見立て、その向こうにテージョ川と「4月25日橋」を収めるショット。サンフランシスコのゴールデンゲートブリッジと同じ会社が建設したこの赤い吊り橋は、リスボンの風景に力強いアクセントを加えています。松の緑、空の青、橋の赤。この色彩のバランスが絶妙です。

視界を広げると、川幅がいかに広いか驚かされます。まるで海のように広がるテージョ川。対岸には巨大なクリスト・レイ像(キリスト像)が小さく見え、この街のスケール感を肌で感じることができます。

特に夕暮れ時や、太陽が傾きかけた時間の逆光(Sun Glare)は神々しいまでの美しさです。川面がキラキラと黄金色に輝き、行き交う船がシルエットとして浮かび上がる光景は、いつまで見ていても飽きることがありません。

ゆったりと川を進む貨物船を松の木越しに眺めていると、ここがかつて要塞であったことを忘れてしまうほど、穏やかな時間が流れていました。
【絶景2】眼下に広がる「オレンジ色の屋根の海」
川の景色を楽しんだら、次は視線を街の方へ移してみましょう。ここサン・ジョルジュ城からは、リスボン特有の「魔女の宅急便」のような世界観を見下ろすことができます。

見てください、この圧倒的なオレンジ色の波を。起伏に富んだ地形に沿って、統一感のあるテラコッタ色の屋根瓦がどこまでも続いています。バイシャ地区の整然とした街並みから、アルファマ地区の入り組んだ路地まで、すべてが手に取るようにわかります。

広角レンズで空を広めに入れると、リスボンの空の高さと雲の表情が強調され、ダイナミックな写真になります。風が強い日が多いリスボンでは、雲の流れも速く、刻一刻と表情を変える空と街のコントラストを楽しむことができます。

こちらはバイシャ地区からテージョ川の河口方面を望むアングル。松の枝越しに見ることで、奥行きのある写真になります。

北側に目を向けると、丘の上に建つグラサ教会や白い建物群が見えます。リスボンが「7つの丘の街」と呼ばれる理由がよくわかる、高低差のある立体的な風景です。

東側には、白い双塔が特徴的な「サン・ヴィセンテ・デ・フォーラ教会」と、巨大な白いドームを持つ「国立パンテオン」が見えます。赤い屋根の中に浮かぶ白亜の建造物は、リスボンの歴史的な重厚さを象徴するランドマークです。
【癒やし】城壁のアイドル「孔雀」との遭遇
堅牢な石造りの城郭を歩いていると、予想外の生き物に出会いました。なんと、クジャクです。

ここサン・ジョルジュ城では、多くのクジャクが放し飼いにされています。かつて王族が飼っていた名残なのか、彼らは我が物顔で石畳の上を闊歩し、木陰で休んでいます。勇ましい要塞の雰囲気と、優雅なクジャクの姿。このギャップがなんとも言えずユニークで、多くの観光客がカメラを向けていました。
運が良ければ、羽を広げた姿を見られるかもしれません。歴史探訪の合間に訪れる、ほっこりとした癒やしの時間です。
【建築美】石の額縁と堅牢な城壁
もちろん、城としての建築的な見どころも満載です。サン・ジョルジュ城の歴史は古く、紀元前2世紀のローマ時代にまで遡りますが、現在の姿の多くは中世のムーア人時代やその後の改築によるものです。

内郭(本丸)へと続く石橋と空堀。かつては水が張られていたのでしょうか、今は緑に覆われていますが、その深さと石垣の高さからは、ここが難攻不落の要塞であったことが伝わってきます。

青空にそびえ立つ石造りの塔。長年の風雨に耐えてきた石の質感は、近くで見ると迫力があります。Photomo的には、このように空の青と石の黄色味のコントラストを強調して撮るのがおすすめです。

内郭への入り口付近。観光客が吸い込まれるようにアーチをくぐっていきます。

城壁の内部に入ると、修復の跡や複雑なアーチ構造を見ることができます。無骨な石積みの中に、当時の建築技術の粋が詰め込まれているのです。

私が個人的に気に入っているのが、この「額縁構図」です。城壁に開けられた石のアーチ(窓)を通して外の景色を撮ることで、まるで絵画のような一枚になります。手前の石のシルエットが、奥に見える緑や教会の白さを引き立ててくれます。

城内には、こうした古い石造りだけでなく、モダンな建築要素も融合しています。こちらは考古学遺跡を保護するためのコンクリート造りのエリア。幾何学的なデザインが、古代の遺跡と現代をつなぐ架け橋のように機能しており、建築好きにはたまらないスポットです。

城壁の上から見下ろす中庭も美しいです。幾何学模様の石畳(カルサーダ・ポルトゲーザ)と、手入れされた芝生の緑。上から俯瞰することで初めて気づくデザインの美しさがあります。

城壁の上を歩く「ウォール・ウォーク」は、少しスリルがありますが、視点が高くなることでまた違った景色に出会えます。緑豊かな木々の向こうに広がるテージョ川と橋。風を感じながらの空中散歩は、ここに来た人だけの特権です。
サン・ジョルジュ城への訪問を計画するあなたへ
最後に、実際に訪れる際に役立つ情報をまとめました。事前にチェックして、スムーズな観光を楽しんでください。
サン ジョルジェ城 行き方
サン・ジョルジュ城は高台にありますが、アクセス方法はいくつかあります。
最も一般的なのは、有名な市電28番(Tram 28)に乗り、「Miradouro de Santa Luzia」または「Largo das Portas do Sol」で下車し、そこから徒歩で坂を登るルートです。ただし、28番は非常に混雑するため、バス(737番)を利用するのも賢い選択です。
健脚な方は、バイシャ地区(Baixa)からエレベーター(Elevador do Castelo)を利用して中腹まで上がり、そこから歩くことも可能です。アルファマの路地裏を散策しながら登るのも楽しいですが、急勾配の石畳なので歩きやすい靴が必須です。
サン ジョルジェ城 入場料とチケット 買い方
チケット売り場は常に行列ができているため、オンラインでの事前購入を強くおすすめします。公式サイトやチケット販売サイトで購入しておけば、スムーズに入場できます。
現地で購入する場合、チケット売り場の列と入場列が別になっていることがあるので注意してください。
サン ジョルジェ城 所要時間と見どころ
城内は想像以上に広いです。展望台で景色を楽しみ、城壁を歩き、孔雀と戯れ、カフェで休憩すると、あっという間に時間が過ぎます。最低でも1時間半〜2時間は見ておいた方が良いでしょう。
特に夕暮れ時は混雑しますが、マジックアワーの絶景は待つ価値があります。
サン ジョルジェ城 予約は必要?
必須ではありませんが、ハイシーズン(夏場)や週末は非常に混み合います。時間を有効に使いたいなら、やはり事前予約がベターです。
まとめ:記録ではなく、記憶に残る「風」と「光」を
サン・ジョルジュ城は、単に古い建物を愛でる場所ではありませんでした。そこは、リスボンという街が持つ「地形のダイナミズム」と「光の美しさ」を全身で浴びることができる、巨大な展望デッキでした。
松の木陰で風に吹かれながら、きらめくテージョ川を眺めた時間。足元を歩く孔雀に驚いた瞬間。そして、どこまでも続くオレンジ色の屋根に感動した記憶。
もしあなたがリスボンを訪れるなら、ぜひ天気の良い日を選んで、この丘を登ってみてください。そこには、ガイドブックの写真だけでは伝わらない、あなただけの「Photomoな瞬間」が待っているはずです。

公式サイト:https://castelodesaojorge.pt/
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