旅の終着点で見つけた最高のディナー。セントパンクラス駅構内イタリアン「Carluccio’s」
ロンドンの街を、ただひたすらに歩いた一日だった。思考の断片を拾い集めるように、僕はいくつかの場所を巡っていた。大英図書館では、ビートルズの手書きの歌詞に触れ、彼らの息遣いを感じた(その時の感動はこちらで詳しく)。ロンドン自然史博物館の巨大なシロナガスクジラの骨格は、生命の壮大さを静かに物語っていた(博物館の探訪記もぜひ)。
さらに、V&A(ヴィクトリア&アルバート博物館)のキャスト・コートでは、トラヤヌスの記念柱のレプリカが放つ圧倒的な存在感に言葉を失い(キャスト・コートの衝撃についてはこちら)、伝説のロイヤル・アルバート・ホールでは、ノエル・ギャラガーの名演に想いを馳せた(音楽の聖地巡礼の記録)。
その興奮冷めやらぬまま、Notting HillのMusic & Video Exchangeで、まさにその名演が収められたプロモCDを奇跡的に手に入れたのだ(レコード探しの冒険譚)。SOHOではDover Street MarketでAuraleeとNew Balanceのコラボを発見し(スニーカーハントの様子)、最終的にはFoot Patrolで念願のWTAPS×New Balanceを確保した(激闘の末の勝利はこちら)。旅の締めくくりに、Waitroseで自分へのお土産としてヨークシャーティーのビスケットティーをカゴに入れた時には(ロンドン土産の決定版)、もう足は棒のようだった。
ホテルに戻ると、心地よい疲労感と強烈な空腹が同時に押し寄せてきた。今夜はもう遠出する気力はない。近場で済ませよう。ホテルのバー「Booking Office 1869」は、いつも通り賑わっている。少し違う気分だった。ふと、駅舎の中、ユーロスターのホームへと続く開放的な空間に、洒落たカフェレストランがあったのを思い出した。確か「Carluccio’s」。そうだ、あそこに行ってみよう。今日の長い旅路の終着点として、これほど相応しい場所はないかもしれない。
荘厳な建築美に溶け込む、セントパンクラス駅構内イタリアンの魅力
St. Pancras International station。それは単なる駅ではない。ヴィクトリア朝ゴシック建築の傑作であり、旅の始まりと終わりが交差するドラマチックな舞台だ。その壮大な赤レンガのアーチと、光が降り注ぐガラスの天井の下に、Carluccio’sはあった。
旅情を掻き立てる駅ナカのオープンスペース
レストランのオープンスペースに足を踏み入れると、駅の喧騒が心地よいBGMのように聞こえてくる。スーツケースを引く人々、これからパリへ向かうのだろうか、それともロンドンに到着したばかりだろうか。それぞれの物語を想像しながら席に着く。目の前には、歴史を感じさせる駅舎の壁面が広がり、まるで映画のワンシーンに迷い込んだような感覚に陥る。

ここは、ただ食事をする場所ではない。旅の感覚を五感で味わうための特別な空間だ。テーブルを照らす柔らかな照明と、遠くで発着を告げるアナウンス。この駅ナカというロケーションが、今夜の夕食を忘れられないものにしてくれるだろうと直感した。
ロンドンの活気と安らぎが同居するレストラン
ウェイターに案内された席は、ホームの様子がよく見える絶好のロケーションだった。席に着き、深く息をつく。忙しなく動く人々を眺めていると、自分が旅人であることを改めて実感する。しかし、不思議と落ち着かない気分にはならない。むしろ、この活気ある雰囲気の中に身を置くことで、一日の疲れがゆっくりと癒されていくのを感じた。Carluccio’sは、そんな喧騒と安らぎの絶妙なバランスの上に成り立っているレストランだった。
Carluccio’sでの夕食:歩き疲れた体に沁みるイタリアンの実食レポート
席についてメニューを待つ。今日の僕は、とにかく腹が減っていた。知的探求と物欲の探求で消費したカロリーは計り知れない。肉が食べたい。そして、美味しいパスタも。そんな欲望を抱えながら、ウェイターが差し出してくれたメニューに目を通した。
豊富なメニューと心温まるウェイターとの対話
メニューは、パスタ、ピザ、グリルと、実に分かりやすい構成だ。

お得なセットメニューにも心惹かれたが、今日は自分の欲望に忠実でありたい。アラカルトで好きなものを好きなだけ食べることに決めた。

まずはドリンクから。ここはイタリアン。迷わずモレッティビールを注文する。

「チキングリルと、シーフードのパスタが食べたいんですが、量は多いですか?」
好奇心からウェイターに尋ねてみると、彼はにこやかにこう返した。
「それはお客様次第ですね。あなたがどれだけ食べられるか、僕には分かりませんから」
ウィットに富んだ返答に、思わず笑みがこぼれる。彼は続けた。
「もし心配なら、まずチキンを頼んで、お腹の空き具合を見てからパスタを注文するのがいいですよ」
その的確なアドバイスに従うことにした。こういうローカルなコミュニケーションも、旅の醍醐味だ。
旅の疲れを癒す一杯と、完璧なチキングリル
ほどなくして、冷えたモレッティビールが運ばれてきた。グラスに注ぎ、一口流し込む。歩き回って乾いた喉に、黄金色の液体が沁みわたっていく。最高だ。グラスの向こうには、行き交う人々。この開放感が、ビールを一層美味しくさせる。

ビールを味わいながら待っていると、香ばしい匂いと共にチキングリルがテーブルに置かれた。プロシュートで巻かれたチキンは、外側がカリッと、中は驚くほどジューシー。添えられたローストポテトも絶品だ。これだよ、これ。僕が求めていたのは、こういうストレートに美味しい一皿だ。夢中でナイフとフォークを進め、あっという間に平らげてしまった。

大満足のボリューム!具材が溢れるシーフードリングイネ
チキンを食べ終えても、僕の胃袋にはまだ余裕があった。先ほどのウェイターに声をかけ、シーフードリングイネを追加で注文する。ビールのおかわりも忘れずに。「パスタもかなりの量だけど、大丈夫?」と少し心配そうに聞かれたが、「問題ない」と力強く頷いた。
そして、運ばれてきたパスタを見て、僕は彼の心配の意味を理解した。黒い深皿には、パスタが見えないほどの魚介が乗っている。大ぶりのムール貝、イカ、エビ。これは挑戦だ。しかし、不可能ではない。一口食べると、魚介の旨味が凝縮されたトマトソースがリングイネによく絡み、至福の味が口の中に広がった。歩き回った体は、まだエネルギーを欲していたらしい。僕は、この挑戦に無事勝利し、見事に完食したのだった。

「見事だね!デザートはどう?」
感心した様子のウェイターにそう聞かれたが、さすがに首を横に振った。お腹がいっぱいだったこともあるが、もう一つ、僕を急き立てる理由ができてしまったのだ。
思わぬ発見と、ロンドンらしい夜の締めくくり
食事の終わりがけ、どこからともなく、フットボールのチャントが聞こえてきたのだ。そうだ、今日はプレミアリーグの試合がある日だ。確か、チェルシー戦のはず。この熱気を肌で感じてしまったら、もうじっとしてはいられない。急いで会計を済ませ、僕はホテルへと駆け足で戻った。美味しいイタリアンでの夕食、そしてプレミアリーグ観戦。これ以上ない、完璧なロンドンの夜の締めくくりだった。
まとめ:忘れられない夜を演出する、セントパンクラス駅構内 イタリアン
Carluccio’sでのディナーは、単に空腹を満たすためのものではなかった。それは、ロンドンという街の躍動感、旅の情感、そして食の喜びが一体となった、忘れられない体験だった。もしあなたがロンドンを訪れ、特にセント・パンクラス駅を利用する機会があるなら、ぜひこのセントパンクラス駅構内 イタリアンに立ち寄ってみてほしい。壮大な駅舎を眺めながら味わう一皿は、きっとあなたの旅の記憶に、鮮やかな一ページを加えてくれるはずだ。
Carluccio’s St. Pancras International station 店舗情報
公式サイト: https://www.carluccios.com/restaurants/london-st-pancras
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