【ロンドン美食】Booking Office 1869 ディナーブログ体験記:極上の夜とスマッシュバーガー

ロンドンの秋、午後5時を回ると街は急速に群青色へと沈んでいきます。
石畳を叩く冷たい風が、コートの襟を立てさせる季節。

CityNomixです。

今日は朝から少しハードに動き回りました。
ケント州の海辺の街、マーゲイトまで足を伸ばし、以前から狙っていたStussyの貴重なアーカイブを掘り出しに行ってきました。
(その時の興奮冷めやらぬ戦利品レポートはこちら:Stussy Margate Archive Store Guide

その後、ロンドン市内へとんぼ返り。
息つく暇もなくSOHOへ向かい、伝説のレコードショップ「Sister Ray」でオアシスのヴァイナルを探す巡礼の旅へ。
(その熱狂の記録はこちら:Oasis Pilgrimage London Sister Ray Vinyl

さらに、日本への帰国を見据えて、バラマキ土産の定番Marks & Spencer詳細記事)と、スキンケアの宝庫Boots UK詳細記事)を梯子して、両手にはずっしりと重いショッピングバッグが食い込んでいます。

「さすがに、もう歩けない」

身体は正直です。
今夜はもう、遠くのレストランを予約してタクシーを飛ばす気力もありません。
私が今、滞在しているのはセント・パンクラス・ルネッサンス・ホテル。
そのメインダイニングであるBooking Office 1869で、そのままディナーをいただくことにしました。

実はここ、朝食での体験が素晴らしく(Booking Office 1869 Breakfast Review)、夜の雰囲気も間違いないと確信していたのです。
今回は、予約なしで突撃したBooking Office 1869のディナーの様子を、失敗談も含めてリアルにレポートします。

セント・パンクラス駅直結、歴史的空間でのディナー体験

昼とは違う、大人の社交場としての顔

ホテルに戻り、部屋に荷物を置いて身軽になってから、ロビー階にあるレストランへ向かいます。
Booking Office 1869は、その名の通り、かつてセント・パンクラス駅の切符売り場(ブッキング・オフィス)として使われていた場所を改装したレストランです。

一歩足を踏み入れると、そこは別世界。
高い天井、重厚なレンガの壁、そして空間を支配する巨大なパームツリー。
朝の清々しい光の中で見た景色とは一変し、夜はアンバーな照明が灯り、妖艶とも言える「大人の社交場」の空気が漂っています。

DJブースからは心地よいダウンテンポのラウンジミュージックが流れ、グラスが触れ合う音と、人々の談笑が低いハム音となって空間を満たしています。
「これぞ、ロンドン」と感じさせる、歴史とモダンが融合した空間デザインには、何度訪れても圧倒されます。

予約なし(Walk-in)でも入れる?

今回は事前の予約をしていませんでした。
人気店ゆえに少し心配していましたが、平日の夜だったこともあり、レセプションで「予約していないんだけど」と伝えると、スムーズに席へ案内されました。

もちろん、週末やクリスマスシーズンなどは予約必須でしょうが、ホテルのゲストや近隣のビジネスマンがふらりと立ち寄れる余白も残されているようです。
案内されたのは、店内の喧騒を程よく感じられるハイテーブルの席。
一人での食事や、サクッと飲みたい時には最適なロケーションです。

Booking Office 1869のディナーメニューを解剖する

席に着き、まずはメニューに目を通します。
クリーム色の上質な紙に印字されたメニューは、シンプルながらも食欲をそそるラインナップです。

Booking Office 1869のディナーメニュー表。前菜、メイン、グリル、サイドメニューなどの料理リストと価格が記載されている。
Booking Office 1869のディナーメニュー

カテゴリーは「To Start(前菜)」「For The Table(シェア用)」「Grill(グリル)」「Mains(メイン)」「Sides(サイド)」に分かれています。
価格帯は、ロンドンの高級ホテルのダイニングとしては標準的か、少し良心的かもしれません。

この日の気分は、とにかく「肉」でした。
一日中歩き回り、エネルギーが枯渇していた私の身体は、プロテインを欲していたのです。
しかし、リブアイステーキ(£42)という気分でもない。
もう少しカジュアルに、しかしガッツリと満たされたい。

そこで目に留まったのが「Booking Office Smash Burger(ブッキング・オフィス・スマッシュバーガー)」(£24)です。
「スマッシュバーガー」という響きに弱いのです。
鉄板に押し付けてカリッと焼いたパティ。間違いありません。

そして、もう一つ。
メニューの端に「Oysters(オイスター)」の文字を発見。
イギリスに来てから、パブやレストランで食べる生牡蠣の美味しさに目覚めてしまいました。
去年の旅で訪れたDean Street Townhouseでの魚介体験(詳細記事)も記憶に新しく、ロンドンのシーフードには信頼を置いています。
迷わずオーダーしました。

【失敗談】お水選びの罠と、至高のビール

Tap Waterと言えなかった夜

オーダーの際、ウェイターにこう聞かれました。
「お水は、Still(ガスなし)にしますか? Sparkling(ガスあり)にしますか?」

日本での感覚のまま、私は反射的に答えました。
「Still, please.」

これが、この旅の小さな失敗(勉強代)でした。
運ばれてきたのは、英国王室御用達としても知られる高級ミネラルウォーターHILDON(ヒルドン)のボトル。

薄暗いレストランのテーブルに置かれたHILDON(ヒルドン)ミネラルウォーターのボトルとカットグラス
お冷の代わりに選んだHILDONのボトルウォーターと美しいグラス

カットグラスに注がれるその水は、確かにまろやかで美味しい。
美しいボトルの佇まいは、テーブルの格を上げてくれます。
しかし、後でレシートを確認すると、しっかりと£6(約1,100円)がチャージされていました。

ロンドンのレストランでは、無料の水道水(Tap Water)を頼むのが一般的ですし、恥ずかしいことではありません。
もし節約したいのであれば、聞かれた瞬間に「Tap water is fine.(水道水でいいです)」と伝えるのが正解でした。
とはいえ、この美しい空間で、美しいグラスで飲むヒルドンは、疲れた身体に染み渡るような贅沢な味がしたのも事実です。

雰囲気で酔わせる極上のビール

気を取り直して、まずはビールで乾杯です。
オーダーしたのはIPA(銘柄は失念してしまいましたが、ローカルのクラフトビールでした)。

落ち着いた照明の店内で、テーブルランプの横に置かれたグラスビール
温かなランプの灯りに照らされた、冷たいビールで乾杯のひととき。

見てください、この照明。
プリーツシェードのテーブルランプが放つ温かな光に照らされた黄金色の液体。
きめ細かな泡。
背景の薄暗い店内のボケ感。
飲む前から「美味しい」ことが確定しているビジュアルです。

一口飲むと、ホップの華やかな香りと苦味が口いっぱいに広がります。
歩き疲れた足の先まで、アルコールがじんわりと巡っていく感覚。
これこそ、旅の醍醐味です。

実食:ロンドンの海の幸と大地の恵み

濃厚なミルク感!フレッシュオイスター

ビールを楽しんでいると、すぐに生牡蠣が運ばれてきました。
クラッシュアイスの上に鎮座する、艶やかな牡蠣。

クラッシュアイスの上に盛られた殻付きの生牡蠣、緑色のソース、レモン、フォーク
クラッシュアイスの上に美しく盛り付けられた、新鮮な殻付き生牡蠣

サイズは中ぶりですが、身がふっくらとしています。
まずは何もつけずにそのまま。
……濃い。
日本の岩牡蠣のような大きさはありませんが、凝縮された海のミルクのような甘みと、適度な塩気が口の中で爆発します。

次に、添えられたレモンを絞り、鮮やかなグリーンのソース(ビネガーベースの特製ソース)を少しかけて。
酸味が牡蠣のクリーミーさを引き締め、後味を爽やかにしてくれます。
そこに流し込むIPA。
至福です。
1個単位でオーダーできたのでお試しで頼みましたが、これはハーフダース(6個)頼んでもペロリといけたかもしれません。

肉の旨味をダイレクトに感じるスマッシュバーガー

そして、真打ちの登場です。
Booking Office Smash Burger

大きなピクルスが乗ったベーコン入りスマッシュバーガーとカップに入ったフライドポテト
カリカリベーコンとトップのピクルスが食欲をそそる、ボリューム満点のスマッシュバーガー。

運ばれてきた瞬間、そのビジュアルに圧倒されました。
バンズの上に突き刺さるように乗せられた、巨大なピクルス。
バンズからはみ出し、暴れまわるようなクリスピーベーコン。
そして、とろりと溶け出したチーズ。

「スマッシュバーガー」とは、挽肉を鉄板に強く押し付けて(スマッシュして)焼くスタイルのハンバーガーのこと。
厚みのあるパティで肉汁を閉じ込めるグルメバーガーとは対極にあり、表面のカリッとした香ばしさ(メイラード反応)と、肉本来の食感をダイレクトに楽しむものです。

ナイフを入れると、肉の抵抗感が手に伝わります。
一口頬張ると、まず感じるのは「肉肉しさ」。
赤身肉中心のパティは、脂っこさがなく、噛むほどに牛肉の旨味が滲み出てきます。

特筆すべきは、この巨大なピクルスとソースの相性です。
酸味の効いたピクルスが、肉とベーコンの塩気を中和し、特製のバーガーソースが全体をまとめ上げています。
見た目はジャンキーですが、味の構成は非常に計算されており、ホテルのダイニングらしい品格を感じさせます。

そして、サイドのフライドポテト。
金属製のカップに山盛りです。
外はカリカリ、中はホクホクの太めタイプ。
スマッシュバーガーのボリュームが凄まじかったので、ポテトを完食するのは至難の業でしたが、ビールのアテとして最高でした。

Booking Office 1869でのディナー総評

CityNomixの視点:なぜここをおすすめするのか

お腹も心も満たされ、お会計を済ませました。
チップ(サービス料)を含めても、このロケーションとクオリティを考えれば、ロンドンの中心地としては決して高くはないと感じました。

Booking Office 1869でのディナーをおすすめする理由は3つあります。

  1. 圧倒的な空間美:
    歴史的建造物の中で食事をするという体験自体に価値があります。
    特に夜の雰囲気は、デートや特別な日のディナーにも最適です。
  2. 使い勝手の良さ:
    セント・パンクラス駅直結というアクセスの良さは、旅行者にとって最強の武器です。
    ユーロスターの発着前後や、私のように買い出しで疲れた日の夕食に、移動のストレスなく極上の時間を過ごせます。
  3. 料理のクオリティ:
    バーガーのようなカジュアルなメニューでも、素材の良さと調理の丁寧さが光ります。
    次回はぜひ、ステーキやグリル料理にも挑戦してみたいと思わせる実力がありました。

旅のヒント:ドレスコードと水

ドレスコードは「スマートカジュアル」推奨ですが、そこまで厳格ではありません。
私は一日中歩き回った格好(もちろん清潔感のある服装で)でしたが、問題ありませんでした。
ただし、ビーチサンダルやスポーツウェアは避けた方が無難でしょう。

そして、水。
節約派の方は、勇気を持って「Tap Water」を頼みましょう。
でも、たまには£6のヒルドンで、英国紳士・淑女気分を味わうのも悪くありません。
それもまた、旅の思い出ですから。

美味しい食事と良いお酒、そして素晴らしい空間。
ロンドンの夜を締めくくるのに、これ以上の場所はありませんでした。
ご馳走様でした。

さて、重たいお土産を持って部屋に戻り、明日の旅の準備をするとしましょう。

Official site: Booking Office 1869

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