旅の終わりは、いつも少し寂しく、そして慌ただしいものです。ポルトガルの美しい街、リスボンでの日々を終え、次なる目的地ロンドンへと向かう朝。今回の移動に選んだのは、ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)のビジネスクラス、通称「クラブ・ヨーロッパ(Club Europe)」です。
「たった2時間半のフライトに、わざわざ高いビジネスクラスを選ぶ価値はあるのか?」
これは、旅慣れた人ほど抱く疑問かもしれません。LCCなら数千円で移動できる欧州内の短距離路線。しかし、結論から言えば、今回の選択は大正解でした。特に、早朝の眠い目をこすりながらの移動や、ビジネスでの出張においては、その真価を発揮します。
今回は、リスボン市内のホテルを出発してからロンドン・ヒースロー空港に到着するまでの全行程を、CityNomixならではの失敗談や、現地で役立つUber情報などを交えながらレポートします。単なる移動手段としてではなく、旅の質を上げる一つの「体験」としてのBAビジネスクラスをご紹介しましょう。
1. リスボンの夜明け前:ホテル出発とタクシーの教訓
旅の始まりは、まだ街が眠りについている早朝4時。今回滞在していたのは、Web Summitの会場にもほど近いモダンなホテル「Ikonik Lisboa」です。
早朝チェックアウトの安心感
早朝便を利用する際、最も気にかかるのがホテルのチェックアウト対応です。フロントに人がいなくて焦った経験はありませんか? その点、Ikonik Lisboaは安心でした。
午前4時過ぎにロビーへ降りると、しっかりとスタッフが待機しており、手続きは一瞬で完了。「昨夜はよく眠れましたか?」という温かい言葉とともに送り出してくれました。Web Summit参加者やビジネス客が多いホテルだけあって、早朝のオペレーションも非常にスムーズです。
ちなみに、このホテルの詳細な宿泊記は以下の記事にまとめています。リスボンでの拠点選びに迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
参考記事: 【リスボン宿泊記】Web Summit会場至近!Ikonik Lisboaが「リスボン ホテル おすすめ」の最適解な理由
【失敗談】ホテルタクシー vs Uber:朝の判断ミス
さて、ここからが今回の反省点です。私は事前に配車アプリ「Uber」で空港までの車を手配するつもりでした。リスボンではUberが非常に普及しており、料金も手頃だからです。
しかし、チェックアウトを済ませたその時、フロントのスタッフが親切に声をかけてくれました。「空港へ行くなら、ホテルのタクシーがすぐそこに待機しているよ。呼ぼうか?」
寝起きで思考力が低下していた私は、「わざわざ勧めてくれるなら、提携の定額サービスか何かでお得なのかもしれない。何より、今すぐ乗れるのは楽だ」と安易に頷いてしまったのです。
結果はどうだったか。空港までの所要時間は変わりませんが、料金はUberの相場(早朝でも10〜15ユーロ程度)に比べて、約2倍の金額(約25〜30ユーロ)を請求されました。もちろん、法外なぼったくりというわけではなく、正規のホテルハイヤーとしての料金です。しかし、「損をしたくない」と考える賢明な旅行者の皆さんには、「どんなに眠くても、リスボンでの移動はUber一択」と強くお伝えしておきます。
この失敗もまた、旅のリアルな授業料。気を取り直して、リスボン・ポルテラ空港(LIS)へと向かいます。
2. リスボン・ポルテラ空港:ビジネスクラスの恩恵
タクシーでの小さなダメージを抱えつつ空港に到着しましたが、ここからブリティッシュ・エアウェイズ ビジネスクラスのメリットが炸裂します。

リスボン・ポルテラ空港のターミナルは、幾何学的な金属天井が特徴的な開放的な空間です。早朝から多くの旅行者で賑わっており、エコノミークラスのチェックインカウンターには既に長い列ができていました。
優先カウンターで時間を買う
しかし、「クラブ・ヨーロッパ」利用者はその列に並ぶ必要はありません。専用の優先チェックインカウンター(Zone D)へ直行できます。

この写真を見ていただければ分かる通り、一般レーンの混雑とは無縁の静けさ。待ち時間ほぼゼロで荷物を預け、搭乗手続きを済ませることができました。空港というストレスフルな環境において、この「時間を買う」感覚こそが、ビジネスクラスを利用する最大のメリットの一つと言えるでしょう。
浮いた時間は、ラウンジでコーヒーを飲んだり、免税店を覗いたりと、有意義に使えます。特にWeb Summit帰りや出張者のように、一分一秒を惜しむ人々にとって、このスムーズさは代えがたい価値があります。
【重要情報】リスボン空港のUber乗り場は「P2」
ここで、リスボン空港を利用するすべての方に共有したい重要なTIPSがあります。空港到着時、または空港から市内へ向かう際、Uberを利用する方はピックアップポイントに注意が必要です。

空港内の吹き抜けエリアには、このように大きく「Uber – Meet your driver at Parking P2」という広告看板が出ています。到着ロビーを出てすぐの場所ではUberに乗車できず、少し歩いた先にある「P2駐車場(出発階の上層)」が指定の乗り場となります。
初めてだと少し迷いやすいのですが、この「P2」というキーワードさえ覚えておけば大丈夫。空港内の案内表示も充実しているので、矢印に従って進めばスムーズに合流できます。BAのチェックインカウンターがある2階出発ロビーからもアクセスしやすいので、覚えておいて損はありません。
参考記事:【完全保存版】リスボン空港から市内へ!Uber乗り場「P2駐車場」への行き方を徹底解説
3. いざ機内へ:欧州内ビジネスクラスの座席事情
セキュリティチェックを優先レーン(Fast Track)で通過し、ラウンジで一息ついた後、いよいよ搭乗です。
機材はエアバスA320:真ん中席ブロックの魔法
今回搭乗したのは、欧州内の短距離路線で主力のエアバスA320。ナローボディ(単通路)の機体です。

「ビジネスクラス」と聞くと、フルフラットになる豪華なシートを想像する方もいるかもしれませんが、欧州内の短距離線では事情が異なります。座席自体はエコノミークラスと同じ3-3配列のシートです。
「えっ、それじゃあエコノミーと変わらないの?」と思われるかもしれませんが、決定的な違いがあります。それは、「3人掛けの真ん中の席をブロックして使用不可にしている」という点です。
隣に誰も座らない。たったこれだけのことですが、心理的な余裕とパーソナルスペースの確保という点で、快適性は雲泥の差です。隣の人と肘掛けを奪い合うこともなく、PCを広げて仕事をしたり、コートやバッグを隣の席に置いたりと、ゆったり過ごすことができます。
離陸後の絶景を独り占め
定刻通りにプッシュバックが始まり、リスボンの街を後にします。早朝便の特権は、何と言ってもこの景色です。

離陸直後、眼下に広がったのは雲間に煌めくリスボンの街明かり。夜明け前の薄暗い空と、温かみのあるオレンジ色のライトが織りなす幻想的な風景は、窓側席の特等席からしか味わえません。静かな機内でこの景色を眺めていると、旅の疲れがすっと癒やされていくのを感じました。
4. クラブ・ヨーロッパの真骨頂:空の上のフルコース
シートベルト着用サインが消えると、機内サービスの開始です。ここからがBAビジネスクラス「クラブ・ヨーロッパ」のハイライト、食事の時間です。
短距離でも妥協なしのメニュー
BAは食事が美味しくない、なんて言われていたのは昔の話(あるいは長距離線のエコノミーの話かも?)。近年のクラブ・ヨーロッパの食事は、質・量ともに非常に満足度が高いです。

配られたメニューカードを見ると、メインディッシュは以下の2種類から選択できました。
- The Original Full British: スクランブルエッグ、ベーコン、ソーセージ、マッシュルームなどが入った伝統的な英国式朝食。
- Tomato basil omelette: ベジタリアン向けのトマトバジルオムレツ。
わずか2時間半のフライトで、温かいメインディッシュを選べるコース料理が提供されるのです。LCCでは水一杯も有料であることを考えると、この待遇の差は歴然です。
朝から優雅にシャンパンを
ドリンクメニューも充実しています。

「THE BAR」と記されたメニューには、シャンパン(Castelnau)をはじめ、厳選された赤白ワイン、そしてジンやウォッカなどのスピリッツが並びます。特に注目したいのは、BA限定のクラフトビール「BrewDog Speedbird OG」。IPA好きなら絶対に試すべき一本です。
私は迷わずシャンパンをオーダー。朝の光を浴びながら上空で飲むシャンパンは、背徳感も相まって格別の美味しさです。
実食:ザ・オリジナル・フル・ブリティッシュ
そして運ばれてきた朝食がこちらです。

白い陶器のプレートに美しく盛り付けられたフル・イングリッシュ・ブレックファスト。プラスチックの容器ではなく、きちんとした食器と金属のカトラリーで提供されるだけで、食事の満足度は大きく跳ね上がります。
スクランブルエッグはふんわりと温かく、厚切りのバックベーコンは塩気が効いていてシャンパンによく合います。カンバーランドソーセージもジューシーで食べごたえ十分。サイドには温められたクロワッサン、フレッシュなフルーツ、そして濃厚なヨーグルトが添えられており、ホテルの朝食ビュッフェをそのまま空の上に持ってきたような充実ぶりです。
早朝出発でホテルでの朝食を逃していた私にとって、この機内食はまさに救世主。美味しい食事をゆっくりと楽しみ、コーヒーで一息つく頃には、飛行機はもうイギリス上空へと差し掛かっていました。
5. ロンドン到着:快適な移動が次の活力を生む
窓の外を見ると、イギリスらしい緑豊かなパッチワークのような田園風景が広がっています。

ヒースロー空港への降下中、眼下の景色を眺めながら今回のフライトを振り返りました。リスボンでのタクシーの失敗も、美味しい機内食と快適なサービスのおかげですっかり笑い話に変わっていました。
結論:BAビジネスクラスは「買い」か?
最後に、今回の「ブリティッシュ・エアウェイズ ビジネスクラス(クラブ・ヨーロッパ)」体験を総括します。果たして、追加料金を払ってまで乗る価値はあるのでしょうか? エコノミークラス(ユーロトラベラー)と比較してみましょう。
| 項目 | エコノミークラス (Euro Traveller) | ビジネスクラス (Club Europe) |
|---|---|---|
| チェックイン | 一般レーン(混雑時は長蛇の列) | 優先レーン(待ち時間ほぼなし) |
| 手荷物 | 有料の場合あり / 重量制限厳格 | 預け入れ荷物2個まで無料 / 優先受取 |
| ラウンジ | 利用不可(有料ラウンジ等は別) | BAラウンジ利用可(食事・ドリンク無料) |
| 座席 | 3-3配列(隣に人が来る可能性大) | 3-3配列(中央席ブロックで広々) |
| 機内食 | 水とスナックのみ(基本有料) | 温かいコース料理 & シャンパン含むドリンク飲み放題 |
| マイル積算 | 積算率低い | JAL/ワンワールドのマイル・FOPが多く貯まる |
こんな人におすすめ
私の結論として、以下のような方には自信を持ってビジネスクラスをおすすめします。
- 「時間を買いたい」ビジネスパーソン: 優先チェックインやセキュリティトラックで、空港での待ち時間を最小限に抑えられます。
- JAL/ワンワールドのステータス修行中の方: BAのビジネスクラスは比較的安価に出ることもあり、FOP(FLY ON ポイント)を効率よく稼ぐのに適しています。
- 朝食を機内で済ませたい方: 早朝便でホテル朝食が食べられない場合、機内でしっかりとした食事が摂れるのは大きなメリット。トータルで見ればコスパが良い場合も。
- 荷物が多い方: 預け入れ荷物の許容量が大きいので、長期旅行や買い物の後には安心です。
逆に、「とにかく安く移動したい」「機内では寝るだけ」という方には、エコノミークラスで十分かもしれません。しかし、今回のようにリスボンからロンドンへの移動自体を一つのイベントとして楽しむなら、クラブ・ヨーロッパは期待以上の満足感を与えてくれるはずです。
次回の欧州旅行では、少しだけ贅沢をして、空の上の英国体験を味わってみてはいかがでしょうか? きっと、旅の疲れをリセットし、次の目的地での活力をチャージしてくれるはずです。
ブリティッシュ エアウェイズ ビジネスクラス搭乗記
今回の搭乗記が、皆さんの旅の計画に役立てば幸いです。実際に乗ってみて感じたのは、スペック表には現れない「スタッフの温かさ」や「空間のゆとり」の価値でした。
ブリティッシュ エアウェイズ ビジネスクラス 食事
記事内でも触れましたが、食事のクオリティは特筆すべき点です。「フル・イングリッシュ・ブレックファスト」は、イギリス到着前に現地の気分を高めてくれる最高の導入剤でした。
ブリティッシュ エアウェイズ ビジネスクラス 評判
ネット上の評判では賛否両論ある欧州内ビジネスですが、私の体験としては「空港サービスの充実度」を含めると非常に高評価です。特にハブ空港であるヒースローや、主要空港であるリスボンでの優先サービスは強力です。
ブリティッシュ エアウェイズ ビジネスクラス 狭い
「シート自体はエコノミーと同じで狭いのでは?」という懸念に対しては、「中央席ブロック」の効果を強調しておきます。隣に人がいないだけで、体感的な広さは全く異なります。
ブリティッシュ エアウェイズ ビジネスクラス 料金
料金は時期によりますが、早期予約やセールを活用すれば、エコノミー+荷物追加料金とさほど変わらない金額で乗れることもあります。常に価格差をチェックすることをおすすめします。
ブリティッシュ エアウェイズ ビジネスクラス シート
革張りのシートは清潔感があり、短時間のフライトには十分な座り心地でした。リクライニングも多少可能です。
ブリティッシュ エアウェイズ ビジネスクラス A350
今回はA320でしたが、長距離路線のA350などでは最新の個室型ビジネスクラス「クラブ・スイート」が導入されています。いつかそちらもレポートしたいですね。
ブリティッシュ エアウェイズ ビジネスクラス 羽田 ラウンジ
日本発着のBA便を利用する際は、羽田や成田のJALサクララウンジ等が利用可能です。ワンワールドのネットワークの強さを感じられる瞬間です。



