【ロンドン聖地巡礼】oasisの原風景Berwick Streetへ。Sister Rayで探すレア盤とoasisへの想い

Oasisの聖地、Berwick Streetに立つ

Adidasを出て、迷路のようなSOHOの小道を抜ける。冷たい風が頬を撫でるが、不思議と寒さは感じない。むしろ、これから向かう場所への期待感で体温が上がっているのがわかる。
角を曲がると、見覚えのある通りが目の前に広がった。Berwick Street(バーウィック・ストリート)だ。

oasis 聖地巡礼 ロンドンの旅において、この通りは単なる道ではない。ブリットポップの歴史そのものが刻まれたモニュメントだ。
1995年にリリースされたOasisのセカンド・アルバム『(What’s the Story) Morning Glory?』。全世界で2,500万枚以上を売り上げたこの怪物的アルバムのジャケット写真は、まさにこの通りで撮影された。
早朝の誰もいない通りで、二人の男がすれ違うあの象徴的なビジュアル。ノエル・ギャラガーはこのジャケットについて「誰が誰だかわからないところがいい」と語っていたが、その匿名性が逆に、この場所をファンのための空白のキャンバスに変えたのだと思う。

雨に濡れた夜のロンドンのバーウィック・ストリート。レンガ造りの建物の窓や店舗から光が漏れ、人々が歩いている。
雨上がりの夜、Oasisの聖地バーウィック・ストリート。

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多くのファンが、ジャケットと同じアングルで写真を撮ろうと試みる場所だ。日中はマーケットの屋台が立ち並び、活気に溢れているため、あの静寂なジャケットの雰囲気を再現するのは難しい。
しかし、今日のこの時間、夕暮れのBerwick Streetは、あのジャケットとはまた違う、哀愁と色気を帯びた表情を見せている。
私は立ち止まり、深呼吸をする。ここをリアムやノエルが歩いたのか。90年代の喧騒、ブリットポップの狂騒、そして若き日の彼らの野心が、このアスファルトの下に再び目を覚まし、新たな熱狂としてロンドンを包み込んでいる。
記録ではなく、この「空気」を吸い込むことこそが、Photomoが大切にする体験だ。

聖地にあるレコードショップ、Sister Rayへ

Berwick Streetを歩く目的は、単なる聖地巡礼だけではない。この通りには、ロンドンでも屈指のレコードショップが存在する。
青い看板が目印の「Sister Ray(シスター・レイ)」だ。
以前の記事(【ロンドン音楽旅】Oasis聖地Sister Rayでレコード発掘!限定盤と再会の記録)でも紹介したが、ここは私にとってロンドンに来るたびに訪れる「定点観測地」のような場所である。

夜のレコード店「Sister Ray」の外観。明るいショーウィンドウには、たくさんのレコードジャケットが壁一面に飾られている。
ロンドン・ソーホーの夜に輝く老舗レコード店「Sister Ray」

前回の訪問では、奇跡的にプロモーション盤のレアレコードを入手することができた。その時の興奮は今でも指先に残っている。
「今回は何に出会えるだろうか?」
時計を見ると18時を回っている。この辺りのレコードショップは19時には閉店してしまう店が多い。Sister Rayも例外ではない。
残された時間は1時間弱。悠長に全てのジャンルを掘っている時間はない。
私は覚悟を決めた。「今日はOasis関連に絞ろう」。デジタルマーケティングの仕事でもそうだが、リソースが限られている時こそ、ターゲットを絞り込むことが成果への近道だ。

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店内に足を踏み入れると、独特の匂いが鼻をくすぐる。古い紙ジャケと埃、そして微かなお香のような香り。これぞレコードショップの匂いだ。
まずは1階のCDコーナーをざっと流す。
ブートレグ(海賊盤)がいくつか並んでいるのが目に入る。ライブ音源やデモトラック集だろうか。しかし、今日の私のアンテナにはビビッと来るものがなかった。
「今日はアナログの神様が呼んでいる気がする」
直感を信じ、私は階段を降りて地下のレコードコーナーへと向かった。

レコード店のCD棚にアルファベット順に並べられたCD。一番手前には、オアシスの「HOME OF THE MONKS」というタイトルのCDが見える。
ロンドンのレコード店「Sister Ray」のCDコーナーで発見したオアシスのブートレグ盤。

地下フロアでの発掘作業:Oasisを探して

地下に降りると、そこはヴァイナル(レコード)の森だ。壁一面に飾られたレア盤、床に置かれた段ボール箱、そして黙々と指を動かすディガー(探求者)たち。
私は迷わず「Rock / Pop」の「O」のセクションへ向かう。Oasisのコーナーだ。

レコード店の棚に並ぶ、ノエル・ギャラガーのアルバム『Council Skies』とリアム・ギャラガーのアルバム『MTV Unplugged』のレコード。
レコード店の片隅で、ギャラガー兄弟のソロアルバムが隣り合わせに。

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Oasisの仕切り板を見つけた瞬間、心拍数が少し上がる。この感覚は、何度味わっても飽きることがない。
指先でジャケットをパタパタと弾くようにめくっていく。
最初に目に飛び込んできたのは、ノエル・ギャラガーとリアム・ギャラガーのソロワークスの数々だ。
「Noel Gallagher’s High Flying Birds」の近作、そしてリアムのソロアルバム。長い間別々の道を歩んでいた兄弟が、再び同じステージに立った今、こうしてレコード棚に並ぶ作品を見ると、その歴史の重みをより一層強く感じる。

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期待していたプロモーション盤や、見たことのないホワイトレーベル盤は、残念ながら見当たらなかった。やはり、そう簡単にレア盤には出会えない。だからこそ、出会った時の感動が大きいのだが。
ふと、棚の上部に飾られているボックスセットに目が止まった。
Oasisのコンプリート・レコード・アルバムセットだ。価格は299GBP(約58,000円※レートによる)。
「……欲しい」
喉から手が出るほど欲しい。価格の問題ではない。いや、価格も安くはないが、それ以上に「これを持って帰れるのか?」という物理的な問題が脳裏をよぎる。
スーツケースのスペースと重量制限。そして何より、傷つけずに日本まで持ち帰るリスク。
私は苦笑いしながら、そのボックスセットに心の中で別れを告げた。「いつか、ロンドンに住むことがあれば迎えに来るよ」

レコード店で、オアシスの「コンプリート・スタジオ・アルバム・コレクション」のレコードボックスセットを手に取っている様子。
持って帰りたかった、OasisのコンプリートアルバムBOX。

今回の戦利品:リアムの歌声を連れて帰る

気を取り直して、再び棚に向き合う。
12インチの中古シングルがあれば即決なのだが、今日は見当たらない。タイミングが悪かったか、あるいは世界中のOasisファンが私より先に掘り尽くしてしまったか。
諦めかけたその時、一枚のレコードが私の指を止めた。

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リアム・ギャラガーのソロアルバム『C’mon You Know』。それも、ピクチャー盤だ。
ジャケットのアートワークが盤面そのものにプリントされた美しい仕様。飾って良し、聴いて良しの一枚である。
「これだ」
再結成を果たしたOasisだが、その復活に至るまでの期間、リアムがいかにロックンロールを守り続けてきたか。その『今』が刻まれたレコード。
私はそのレコードを脇に抱え、確保した。まずは一安心だ。

レコード店でプラスチックスリーブに入って陳列されているリアム・ギャラガーのレコード「C'MON YOU KNOW」。ジャケットはモノクロで、人々の顔写真のコラージュデザインになっている。
リアム・ギャラガーの「C’MON YOU KNOW」を発見。

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ここで少し視点を広げてみたい。
Oasisといえば、彼らの出身地であるマンチェスターが最大の聖地であることは論を俟たない。Burnage(バーネイジ)の実家や、Sifters Recordsなど、マンチェスターには彼らのルーツが色濃く残っている。
しかし、彼らが世界的なスターダムにのし上がった舞台は、間違いなくここロンドンだ。
マンチェスターが彼らを「生んだ」場所なら、ロンドンは彼らを「伝説にした」場所と言えるだろう。
Berwick Streetのジャケット写真もそうだが、ロンドンには彼らの成功の足跡が至る所に刻まれている。だからこそ、我々はマンチェスターだけでなく、ロンドンでも復活した伝説の、その原点(ルーツ)を追い求めるのだ。
Sister Rayでレコードを掘るという行為は、マンチェスターのSifters Recordsで「Mr. Sifter」にレコードを売ってもらう体験とはまた違う、洗練された都会的な「Dig」の楽しみがある。

7インチコーナーと常連たちへの敬意

メインのLPを確保した後、7インチ(ドーナツ盤)のコーナーもチェックしたかった。
しかし、そこには既に先客がいた。地元の常連客と思しき初老の男性が、真剣な眼差しで箱を掘っている。
その背中からは「邪魔をするなよ」というオーラではなく、「音楽への深い愛」が滲み出ていた。
私はその光景を見て、今回は7インチを諦めることにした。ローカルへのリスペクトもまた、旅人には必要なマナーだ。
それに、私にはまだ行きたい場所がある。向かいの「Reckless Records」と、エレクトロニック・ミュージックの殿堂「Phonica Records」だ。

会計、そして次の目的地へ

1階に戻り、レジへ向かう。店員は慣れた手つきでレコードを確認し、会計を済ませてくれる。
「Good choice.」
短く声をかけられた気がして、私は少し誇らしい気分になった。
「Thank you.」
店を出ると、Berwick Streetはすっかり夜の闇に包まれていた。しかし、街灯の明かりとレコードショップから漏れる光が、通りを暖かく照らしている。

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今回も良い買い物ができた。
Oasisのレア盤探しは、単なる「買い物」ではない。それは、かつて生まれ、そして今再び世界を揺るがしている音楽の熱狂を、その原点で噛み締める旅、自分自身の音楽愛を再確認する儀式のようなものだ。
観光地としてのロンドンも魅力的だが、こうして一つのカルチャーを軸に街を歩くと、ガイドブックには載っていないロンドンの素顔が見えてくる。

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日本にも多くの熱狂的なOasisファンがいる。おそらく、今この記事を読んでいるあなたもその一人だろう。
日本からロンドンへの聖地巡礼は、決して安くない費用と時間がかかる。
だが、断言しよう。Berwick Streetのアスファルトを踏みしめ、Sister Rayの独特な匂いの中でレコードを探すその体験は、何物にも代えがたい財産になる。
Spotifyで聴く音楽も素晴らしいが、その音楽が生まれた場所の空気を吸いながら手にするレコードの重みは、デジタルの便利さとは対極にある「感動」を与えてくれるはずだ。

さて、感傷に浸るのはこれくらいにしておこう。
私の夜はまだ終わらない。次は向かいのPhonica Recordsだ。
ロンドンの夜は、音楽好きにはあまりにも短すぎる。

Sister Ray 店舗情報

今回訪れたSister Rayの情報は以下の通りだ。Oasisファンならずとも、音楽好きなら一度は訪れるべき名店である。

Sister Ray
住所: 75 Berwick St, London W1F 8TG, UK
公式サイト: http://www.sisterray.co.uk/


▼ロンドンでのレコード掘りをもっと極めたい方へ
今回のSister Ray以外にも、ロンドンには素晴らしいレコードショップが無数に存在する。
私が実際に足を運び、その特徴を網羅した完全ガイド記事もぜひ参考にしてほしい。
【ロンドンレコード聖地巡礼】ヴァイナル愛好家CityNomixが巡る、珠玉のレコードショップ完全ガイド – 発見と感動、そしてアナログの温もりを求めて

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