予定不調和から始まった、JALビジネスで行くヘルシンキへの旅路
ヘルシンキ。その響きには、私 CityNomixにとって、少しばかり個人的なリベンジの物語が潜んでいる。2019年、ポルトガルでのWeb Summit参加の帰り道、予期せぬ機材トラブルでJAL便が欠航。その結果、意図せずして立ち寄ることになったのが、このフィンランドの首都だった。短い滞在ながらも、その街が持つ静謐な空気と洗練されたデザインに、すっかり心を奪われたのだ。「いつか必ず、自分の意思でこの地を再訪しよう」と。
そして今年、ついにその機会が訪れた。当初は行きをフィンエアー、帰りをJALのビジネスクラスで手配していた。北欧の翼、フィンエアーへの期待は大きかった。しかし、旅には常に不確定要素がつきまとう。出発が近づくにつれ、フィンエアーのストライキ情報が暗い影を落とし始めたのだ。飛ぶか飛ばないか分からない。それは、2019年の悪夢の再来を予感させた。
迷わずJALのコールセンターに電話を入れる。JGC会員であることも幸いし、事情を汲んでいただいた結果、往路もJAL便へ無料で変更できるという、まさに渡りに船の提案。フィンエアーに乗れない残念さはあったものの、JALビジネスへの変更には、それを上回る2つの大きな魅力があった。一つは、一度味わうと忘れられない、自由度の高いアラカルトメニューの存在。13時間という長いフライトで、好きなものを好きなだけ楽しめるのは、食いしん坊の私にとって抗いがたい誘惑だ。そしてもう一つが、ラウンジ利用の現実的な問題。どちらの便でも利用するのは羽田のJALサクララウンジだが、フィンエアーのカウンターオープンは出発の3時間前。結局、ラウンジでゆっくりする時間は限られてしまう。それならば、朝出発のJAL便で少しでも早くヘルシンキに到着し、現地での時間を確保する方が賢明だ。こうして、私のヘルシンキへの旅は、すべてをJALに託す形で、再び幕を開けることになった。
羽田空港でのタイムアタックと、JALビジネスの食事への序曲
旅の始まりは、いつも少し慌ただしい。7時50分のフライトに備え、早朝4時に起床。5時30分には羽田空港に到着した。しかし、ここで最初の誤算が生じる。JALの国際線カウンターが開くのは、なんと朝6時から。搭乗開始は7時20分。時間は限られている。私の頭の中では、ミッションクリティカルなタスクリストが瞬時に組み立てられた。
何としてもフライト前にシャワーを浴びたい。機内での快適さが、それで天と地ほど変わることを、経験は知っている。逆算すると、6時にチェックイン、6時30分までに出国、ラウンジ移動に15分、食事に15分、シャワーに20分…。まさに綱渡りのタイムスケジュールだ。久しぶりのJAL利用で、預け入れ荷物の事前ラベル発行にも少し戸惑う。パスポートをスキャンし、必要事項を入力するプロセスは、急いでいる時には焦りを誘う。事前に流れを把握しておくことをお勧めしたい。
保安検査と出国審査を駆け抜け、サクララウンジへ。ファーストクラスラウンジより少し奥まった場所にあるため、気持ち早足になる。ラウンジに到着するや否や、テーブルのQRコードを読み取り、シャワーの予約を済ませる。そして、JALラウンジの象徴とも言える、あのカレーをかきこむ。時間はないが、これを食べずして旅は始まらない。カレーと味噌汁で腹ごしらえをしていると、スマートフォンがシャワーの順番を告げた。手早く汗を流し、着替えると、心身ともにリフレッシュされ、これから始まる長いフライトへの準備が整った。完璧なタイミングで搭乗ゲートへ。グループ2の列に並び、間もなく機内へと案内された。

JAL 777 スカイスイートの個室感と、旅の始まりを告げる一杯
今回の機材はボーイング777、通称「トリプルセブン」。シートはJALが誇る「スカイスイート」だ。いくつかバージョンがある中で、このスカイスイート1は最も初期のモデルだが、私は後継の2や3よりも、この初代モデルが一番好きだ。特に窓際の席は、その構造上、非常に高い個室感を誇る。今回は急な便変更で通路側の席となったが、それでもモニターが遠く感じられるほど縦に長く、パーソナルスペースは十分すぎるほど確保されている。

着席すると、CAの方がウェルカムドリンクを運んできてくれる。シャンパンかオレンジジュースか。選択の余地なく、シャンパンを。提供されるのは、ファーストクラスで供される伝説的なシャンパン「サロン」の姉妹メゾンが手掛ける「シャンパーニュ デュラモット ブリュット」。きめ細やかな泡とエレガントな果実味が、旅の始まりを華やかに彩る。やがて全員の搭乗が完了し、重厚なドアがロックされる。機体は静かに滑走路へと向かい、力強く東京の空へと舞い上がった。

天空のレストランで味わう、至高のJALビジネス食事体験

安定飛行に入ると、いよいよお待ちかねのJAL ビジネス 食事タイムの始まりだ。今回は洋食をチョイス。まるで地上の一流レストランにいるかのような、コース仕立てのサービスが展開される。

まずはアペタイザーとして、ミックスナッツとフムス、グリッシーニが供される。シャンパンとの相性も抜群で、食欲を心地よく刺激してくれる。続いて、前菜のプレートが運ばれてきた。カンパチのオードブルは、ポン酢ベースのソースが爽やかで、魚の旨味を引き立てる。そして、特筆すべきは添えられたパン。これがなんと「メゾンカイザー」製なのだ。外はパリッと、中はもっちりとした食感。機上でこのクオリティのパンが味わえるとは、JALの食へのこだわりに改めて感服する。

そして、メインディッシュの登場。牛フィレ肉のステーキだ。焼き加減も絶妙で、ナイフを入れると美しいロゼ色の断面が現れる。濃厚なソースが肉の旨味と絡み合い、口の中に至福の味わいが広がる。付け合わせのハッシュドポテトや彩り豊かな野菜たちも、一つひとつが丁寧に作られており、メインの魅力を一層引き立てていた。最後のデザートは、パッションフルーツが香るピスタチオのケーキ。甘さと酸味のバランスが絶妙で、コースの締めくくりにふさわしい爽やかな一品だった。


JALビジネスの真骨頂!魅惑のアラカルトメニューという名の誘惑
コース料理でお腹が満たされると、映画を見たり、うたた寝をしたりと、思い思いの時間を過ごす。しかし、13時間というフライトは長い。しばらくすると、また小腹が空いてくる。ここからが、日本の航空会社のビジネスクラス、とりわけJALの真骨頂と言える時間だ。そう、いつでも好きな時に注文できる、魅惑のJAL ビジネス アラカルトメニューの存在である。

注文は早めが吉!売り切れ必至のフルーツとアイス
まずは肩慣らしに、とフルーツの盛り合わせとアイスクリームを注文。ハイボールと共にいただく。ここで読者の皆様に一つ、重要なアドバイスがある。このフルーツとアイス、人気が高く、すぐに売り切れてしまうことがあるのだ。特にアイスクリームはハーゲンダッツ製で、路線によっては限定フレーバーが登場することも。食べたいと思ったら、迷わず早めに注文することをおすすめする。

ヘルシンキ路線限定?幻の「フミコの定食」和食を実食
ウォーミングアップを終え、次に狙うは「フミコの定食」。料理プロデューサー・狐野扶実子氏が監修する、JALビジネスクラスの名物メニューだ。和食と洋食があり、このヘルシンキ路線では食材の都合上、往路便でしか提供されないという噂も。これは頼まない手はない。今回は和食をチョイス。メインは太刀魚の塩焼きだ。ふっくらと焼き上げられた白身は脂が乗り、口の中でとろけるよう。炊き立てのご飯と、出汁の効いたお味噌汁が、長旅で疲れた胃に優しく染み渡る。これぞ日本の味、と唸るほかなかった。

想像を超える味「ラー飯丼」という名の発明
しばしの休憩を挟み、メニューを見ていてずっと気になっていた一品に挑戦する。その名も「ラー飯丼」。ラーメンの麺をご飯に置き換え、その上にラーメンの具材を乗せたという、なんとも奇抜な創作丼だ。正直、味の想像がつかなかったが、これが驚くほど美味しかった。甘辛く煮込まれたチャーシュー、食感の良いメンマ、そして味付け玉子。それぞれの具材がラーメンそのものの味付けでありながら、麺のように味付けされたご飯と絶妙にマッチしている。まさに「食べるラーメン」。JALのメニュー開発陣の遊び心とセンスに脱帽した。

空の上で誘惑される香り、そして感動のフィナーレへ

誰かがラーメンを注文すると、そのスープの香りがふわりと客席に漂ってくる。この香りの誘惑には抗えない。私も一杯いただくことにした。シンプルな醤油ラーメンは、期待通りの安心する味だ。そして、この長い食の旅路の締めくくりとして、最後に注文したのが「フミコの定食」の洋食だった。そして、これが今回、私にとってのハイライトとなった。

ふわふわのオムレツは言うまでもなく絶品なのだが、真に驚かされたのは付け合わせのデリの数々だ。一つひとつが、メインを張れるほどの完成度。食べたことのないスパイスの組み合わせ、複雑で奥行きのある味付け。これらがメゾンカイザーのパンと相まって、忘れられない一皿を構成していた。もはや「機内食」という言葉では表現しきれない、一つの料理体験だった。
総括:最高のJAL ビジネス 食事体験とヘルシンキへの到着
満腹感と満足感に包まれ、エアウィーヴのマットレスを敷いて眠りにつく。次に目覚めた時には、機体はすでに降下を始めていた。窓の外には、森と湖の国、フィンランドの大地が広がっている。こうして、至れり尽くせりの空の旅は終わりを告げ、ヘルシンキ・ヴァンター国際空港に到着した。機外に出ると、予想外の熱気が肌を撫でる。この時の私はまだ知る由もなかったが、ヘルシンキは記録的な猛暑に見舞われていたのだ。波乱の幕開けとなったヘルシンキ滞在記は、また次回の記事でお届けしよう。

今回のフライトで改めて実感したのは、JAL ビジネス 食事、特にアラカルトメニューの圧倒的な魅力だ。フィンエアーも素晴らしいエアラインだが、食の楽しみという点においては、JALに軍配が上がるかもしれない。もしあなたがヘルシンキへのフライトで両社を比較検討しているなら、この天空のレストラン体験は、JALを選ぶ強力な決め手になるはずだ。
公式サイト: JAL国際線ビジネスクラス機内食