喧騒の中心から、熱狂の聖地セルハーストパークへ
ロンドンの心臓部、St. Pancras International駅。ここは大陸へと繋がるユーロスターが発着する、まさに国際的なハブだ。しかし、今日の私の目的地はパリでもブリュッセルでもない。向かう先は、南ロンドンに佇むフットボールの聖地、クリスタル・パレスFCのホームスタジアム、セルハーストパークだ。
駅構内にある英国王室御用達の百貨店、Fortnum & Masonで手早くお土産の紅茶を買い求め、これから始まる小旅行への期待感を胸に、私は次なるミッションへと移行する。それは、クリスタル・パレスとブライトンという、熱いライバル関係にあるチーム同士の試合を観戦すること。まずは、スタジアムへの切符を手に入れなければならない。
St. Pancras駅からNorwood Junction駅への道のり
旅の始まりは、いつも券売機の前からだ。以前、Stussy Margate Archive Storeを目指した時と同じように、タッチパネルを操作する。目的地はセルハーストパークの最寄り駅である「Norwood Junction」。慣れた手つきで、往復(Anytime Day Return)のチケットを選択する。試合後の混雑を考えれば、帰りの切符を先に確保しておくのは賢明な判断だろう。

オレンジ色の紙の切符が、カタンと音を立てて出てくる。このアナログな感触が、旅情を一層かき立てる。以前マーゲイトへ向かった際は券売機の左手から上の階へ移動したが、今回は反対側。目的地へと導いてくれるのは、Thameslink(テムズリンク)の路線だ。
出発、そして小さな失敗談
改札を抜け、エスカレーターでプラットホームへと降りていく。ガラス張りのモダンな駅構内は、人々が忙しなく行き交い、旅の高揚感と都会の喧騒が入り混じる独特の空気に満ちていた。

ホームに降り立つと、まるで私を待っていたかのように白い車体の電車が停車していた。まさにその時、発車のベルが鳴り響く。考えるよりも先に、体が動いていた。ドアに滑り込み、席に着いて一息つく。しかし、ふと冷静になった瞬間、ある重大な確認を怠っていたことに気づく。「…行き先は?」

案の定、その電車は私の目指す方向とは違っていた。慌てて次の駅で飛び降りる。旅に失敗はつきものだ。しかし、こうした小さなトラブルこそが、記憶に深く刻まれるスパイスになる。ホームの電光掲示板を確認すると、幸いにもSt. Pancras駅まで戻る必要はなさそうだ。次のホーシャム(Horsham)行きの電車が、目的地のNorwood Junctionを通ることがわかった。これもまた、経験。一つ学び、少しだけ賢くなる。

揺られること30分、セルハーストパークの玄関口へ
ほどなくして、正しい電車がホームに滑り込んできた。今度こそ間違いない。車内は、以前ブライトンへ向かった時と似た雰囲気だ。向かい合わせの2列シートが空いていたので、そこに腰を下ろす。ロンドン中心部から約30分。窓の外を流れる景色を眺めたり、スマートフォンで試合の情報をチェックしたりしているうちに、時間はあっという間に過ぎていく。
途中、車掌が検札にやってきたのも、英国の鉄道旅ではお馴染みの光景だ。紙の切符を提示し、問題なくクリア。デジタル化が進む中でも、こうした人と人とのやり取りが残っているのは、どこか心地良い。
Norwood Junction駅とスタジアムへの道
「Norwood Junction」。アナウンスが聞こえ、電車を降りる。ホームには、明らかに私と同じ目的を持つ人々が溢れていた。クリスタル・パレスのチームカラーである赤と青のマフラーやユニフォームを身につけたサポーターたち。彼らの存在が、スタジアムが近いことを何よりも雄弁に物語っていた。

駅舎はレンガ造りのこぢんまりとした佇まいで、どこか愛らしい。しかし、一歩外へ出ると、その牧歌的な雰囲気は一変する。街の至る所に警察官が立ち、中には馬に跨った騎馬警官の姿も。試合当日のものものしい警備体制が、これから始まる戦いの重要性を物語っているようだった。

サポーターの流れに乗り、駅を出てまっすぐ進む。最初の交差点を左へ。そこからは、静かな住宅街が続く一本道だ。普段は穏やかなであろうこの道も、今日ばかりはスタジアムへ向かう人々の足音と話し声で活気に満ちている。

しばらく歩き、角を右に曲がった瞬間、それは突如として現れた。建物の壁一面に描かれた、巨大なミューラルアート。描かれているのは、クラブのレジェンド、ウィルフレッド・ザハ。その力強い眼差しと躍動感に、思わず息を呑む。スタジアムに到着する前から、この街のフットボールへの情熱が、私の心を鷲掴みにした。

そして、その先についに見えてきた。レンガ造りの壁とモダンな屋根が融合した、威風堂々たるスタジアムの姿が。高揚感は、最高潮に達していた。

今回の道のりガイドはここまで。次回は、スタジアム周辺の熱気と、待ちに待った観戦記をお届けする。お楽しみに。
セルハーストパーク訪問のためのQ&A
ここからは、実際にセルハーストパークへの訪問を計画している方々のために、よくある質問をQ&A形式でまとめておこう。
セルハースト パーク チケット
プレミアリーグのチケット入手は非常に困難な場合が多い。最も確実なのは、クリスタル・パレスの公式サイトで会員登録をし、公式販売でチケットを購入する方法だ。しかし、人気カードはすぐに売り切れるため、会員レベルによっては購入権が得られないこともある。その場合、公式が認めているチケットエクスチェンジ(リセール)サービスを利用するか、信頼できるチケット代理店を通じて購入することになる。価格は変動するが、定価の数倍になることも珍しくない。
セルハーストパーク 行き方
本記事で詳述した通り、ロンドン中心部からの最も一般的なアクセス方法は鉄道だ。St. Pancras International駅、London Bridge駅、Victoria駅などからThameslinkまたはSouthern鉄道を利用し、最寄り駅のNorwood Junction駅を目指すのがおすすめだ。所要時間は約20〜40分。駅からスタジアムまでは徒歩で約10〜15分程度。他にもThornton Heath駅やSelhurst駅も徒歩圏内にある。
セル ハースト パーク 場所
セルハーストパークは、ロンドン南部のクロイドン区に位置している。具体的な住所は「Selhurst Park Stadium, Holmesdale Rd, London SE25 6PU」だ。試合当日は多くのサポーターが同じ方向へ向かうため、人の流れについていけば迷うことは少ないだろう。
セルハースト パーク スタジアム
1924年に開場した歴史あるスタジアムで、その古風な佇まいとピッチとの近さが魅力だ。イングランドの伝統的なフットボールスタジアムの雰囲気を色濃く残しており、特に熱狂的なサポーターが集まるホームズデール・ロード・スタンドは圧巻。スタジアム全体が一体となる応援は、一度体験する価値がある。
セルハースト パーク 改修
近年、メインスタンドの改修計画が進められている。このプロジェクトにより、収容人数が増加し、施設も近代化される予定だ。新しいスタンドはガラス張りのデザインが特徴で、スタジアムの歴史と現代的な建築が融合したものになるという。訪問を計画している方は、公式サイトで最新の工事状況を確認すると良いだろう。
セルハーストパーク 治安
ロンドンの他のエリアと同様、一般的な注意は必要だ。しかし、試合当日は多くの警察官が配置されており、スタジアム周辺のセキュリティは強化されている。今回私が訪れた際も、騎馬警官を含む厳重な警備体制が敷かれていた。サポーター同士の熱気は高いが、個人で行動する分には過度に心配する必要はないだろう。ただし、貴重品の管理は徹底し、試合後は混雑を避けて行動するのが賢明だ。
セル ハースト パーク 収容 人数
現在のセルハーストパークの収容人数は、約25,486人。プレミアリーグのスタジアムの中では比較的小規模だが、その分、選手と観客の距離が近く、ピッチの熱気がダイレクトに伝わってくるのが大きな特徴だ。前述の改修計画が完了すると、収容人数は34,000人以上に増加する見込みとなっている。
セルハーストパーク 見え 方
ピッチとの距離が近いため、どの席からでもある程度の臨場感は味わえる。しかし、いくつかのスタンドには柱があり、場所によっては視界が遮られる「リストリクテッド・ビュー」の席も存在する。チケット購入時には座席図をよく確認することが重要だ。熱狂的な雰囲気を味わいたいならホームズデール・ロード・スタンド、試合全体を見渡したいならメインスタンドやホワイトホース・レーン・スタンドの上層階がおすすめだ。
まとめ:旅の始まりとしてのセルハーストパークへの道のり
今回は、ロンドン中心部からセルハーストパークへのアクセス方法を、私の小さな失敗談も交えながら紹介した。電車の乗り間違いというハプニングはあったものの、それも含めて一つの貴重な体験だ。この記事が、これから聖地を目指すあなたの旅の助けとなり、不安を少しでも和らげることができれば幸いである。さあ、次はいよいよスタジアムの中へ。熱狂の渦に飛び込む準備はできただろうか。
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