旅の途中で出会う英国の粋。Fortnum&Mason St. Pancras店という選択
ロンドンの朝。歴史と現代性が交差するセント・パンクラス駅の荘厳な空間で、Booking Office 1869での素晴らしい朝食を終えた私の足は、自然とある場所へ向かっていました。それは、英国王室御用達の輝かしい称号を冠する、Fortnum&Masonです。
イギリス土産のリストから紅茶を外すことは、私にとって考えられない選択です。これまでも、日常使いに最適なMarks&Spencerや、同じく王室御用達でありながらスーパーマーケットとしての親しみやすさも併せ持つWaitroseで、数々の紅茶やビスケットを買い求めてきました。それぞれに魅力があり、ロンドンの日常を垣間見る楽しみがあります。
しかし、特別な誰かのため、あるいは自分への最高のご褒美として紅茶を選ぶなら、やはりFortnum&Masonを避けては通れません。その理由は、単なるブランドイメージだけではないのです。
Fortnum&Masonが紅茶の代名詞である理由
1707年、ウィリアム・フォートナムとヒュー・メイソンによって創業されたこの店は、300年以上にわたり英国の食文化を牽引してきました。アン女王の宮廷に仕えていたフォートナムが、毎晩使い残されるロウソクを再利用して販売したことからビジネスが始まったという逸話は有名です。やがて彼らは、世界中から最高級の食料品を集め、特に紅茶の分野でその名を不動のものとしました。
ヴィクトリア朝時代には、海外駐留の英国軍兵士へ食料品を送るための「ハンパー(バスケット)」を考案し、その名を世界に轟かせます。彼らが提供したのは、単なる商品ではなく、遠い異国にいる人々へ故郷の味と安らぎを届けるという「体験」でした。この精神こそが、今もFortnum&Masonがただの食料品店ではなく、特別な存在であり続ける理由なのです。彼らの紅茶は、歴史と品質、そして物語を一杯に凝縮していると言えるでしょう。
なぜピカデリー本店ではなく、St. Pancras駅のFortnum&Masonなのか
実は、以前ロンドンを訪れた際、ピカデリーにある壮麗な本店を訪れたことがあります。その時の記憶は、煌びやかな商品の数々に圧倒されると同時に、押し寄せる人の波に辟易してしまったという、少しほろ苦いものでした。結局、あまりの混雑に気圧され、ゆっくりと紅茶を選ぶことができずに店を後にしてしまったのです。
その経験から学んだ私は、今回の旅でSt. Pancras International駅構内に店舗があることを見つけ、心に決めていました。「ここでこそ、理想の紅茶土産を手に入れるのだ」と。

この選択は、結果として大正解でした。駅構内という立地は、移動の合間に立ち寄れるという圧倒的な利便性をもたらします。さらに、ピカデリー本店よりもコンパクトながら、その品揃えは驚くほど充実しており、ギフト選びに必要なものはすべて揃っている印象です。そして何より、営業時間が長い。早朝から夜まで開いているため、旅のスケジュールに柔軟に組み込めるのです。デジタルマーケターとしての視点から見ても、この顧客体験設計は非常に優れていると感じます。
エメラルドグリーンの迷宮へ:デカフェ紅茶探しの小さな冒険
ガラス張りのモダンなファサードから店内に一歩足を踏み入れると、左手には息をのむような光景が広がっていました。ブランドのシグネチャーカラーである「オ・ド・ニル(Eau de Nil)」、あの美しいエメラルドグリーンで統一された紅茶の棚が、壁一面に広がっているのです。

整然と並ぶパッケージは、それ自体がアートのよう。しかし、その美しさゆえに、一見しただけではどの缶にどんな茶葉が入っているのか判別がつきにくいのも事実です。私の今回のミッションは、友人から頼まれた「デカフェのアールグレイ」を見つけること。そして、個人的に気になっていた「カウンテス・グレイ」のデカフェがあれば、それも手に入れたいと考えていました。

棚を丹念に見ていくと、「カウンテス・グレイ」はすぐに見つかりました。アールグレイにオレンジの香りを加えた、爽やかでエレガントなブレンド。しかし、残念ながらデカフェの表記は見当たりません。どうやらこちらはカフェイン入りのみの展開のようです。
そして、肝心のデカフェコーナーがどこにも見当たらないのです。店内をぐるりと一周してみましたが、それらしき表示はありません。時間も限られているため、迷わず近くにいた店員さんに声をかけました。「Excuse me, do you have decaffeinated tea?」
すると、彼女はにこやかに「Of course!」と答え、私を棚の一角へ案内してくれました。そこには、他の紅茶と並んで、しかし少し控えめに、デカフェのシリーズが置かれていたのです。ありました!「ロイヤルブレンド」と「アールグレイ」のデカフェです。

SNSでは「茶葉の方が断然美味しい」という有益なアドバイスもいただいていましたが、友人からのリクエストは手軽に楽しめる「ティーバッグ」。ここは依頼に忠実に、両方のティーバッグを手に取りました。ミッションコンプリートの安堵感に包まれ、レジへと向かいます。
紅茶だけではない、Fortnum & Masonが提案する豊かな食の世界
レジへ向かう途中、店内の中央から奥にかけて広がるギフトコーナーに足が止まりました。ここは単なる紅茶店ではなく、豊かな食のライフスタイルを提案する空間なのだと改めて実感させられます。

シャンパン、ビスケット、チョコレート、ジャム。そして、ブランドの象徴でもあるウィッカーバスケット、通称「ハンパー」。ホリデーシーズンだったこともあり、店内は華やかな装飾で彩られています。

特に目を引いたのは、「Create Your Own Gift Box」というコーナー。好きな商品をバスケットに詰め合わせて、オリジナルのギフトセットを作ることができるサービスです。経験豊富なスタッフが、予算や贈る相手の好みに合わせて親身に相談に乗っていました。試食や試飲を勧めながら、楽しそうに商品を提案する姿は、まさにギフト選びのプロフェッショナル。顧客とのコミュニケーションを大切にする姿勢が、このブランドへの信頼をさらに深めます。

棚にずらりと並ぶハンパーや、忙しく品出しをするスタッフの姿。きらびやかな商品ディスプレイの裏側にある、こうした日常の光景にこそ、店の活気と誠実さが宿っているように感じられました。
St Pancras店で見つけた安心感:日本語対応スタッフという心強さ
さて、いよいよ会計です。私の前に並んでいたのは、日本人と思われる旅行客の方でした。そして驚いたことに、対応しているレジの店員さんも日本人で、流暢な日本語で会話をしています。さらに、その隣のレジにいたイギリス人女性のスタッフも、会計を終えた日本人客に「アリガトウゴザイマシタ」と自然な日本語で声をかけていました。
国際駅の店舗ならではの配慮なのでしょう。日本人スタッフがいるだけでなく、日本語を話せるスタッフもいる。これは、英語に自信がない旅行者にとって、どれほど心強いことか。商品の詳細や免税手続きなど、細かいことを日本語で確認できる安心感は計り知れません。
そんなことを考えているうちに、私の番が回ってきました。当然、英語で話しかけられたので、私もつい英語で返してしまいます。そのまま会計はスムーズに英語で終了。もしかしたら、他のアジア系だと思われたのかもしれません。まあ、会計だけなので特に問題はありませんが、少し面白い体験でした。

この後は、プレミアリーグの観戦が控えています。あまり時間に余裕はありませんでしたが、このSt. Pancras店のおかげで、効率的かつ満足のいく買い物ができました。美しいオ・ド・ニルの紙袋を手に、私は次の目的地へと急ぎました。
CityNomixが答える!Fortnum&Masonに関する気になる疑問
さて、ここからはデジタルマーケターの視点で、皆さんがFortnum&Masonについて検索する際に気になるであろうポイントを、Q&A形式で解説していきたいと思います。
フォートナム&メイソン 店舗の魅力と特徴
ロンドンには、ピカデリー本店と今回訪れたSt. Pancras店をはじめ、ヒースロー空港やロイヤル・エクスチェンジなど複数の店舗があります。本店は、その歴史と規模感、そしてアフタヌーンティーを楽しめるティールームが最大の魅力。一方、St. Pancras店や空港店は、旅行者が効率よく買い物できることに特化しています。目的に合わせて使い分けるのが賢い選択と言えるでしょう。
フォートナム&メイソンはカルディで手に入る?
時折、カルディコーヒーファームなどの輸入食料品店で、Fortnum&Masonの紅茶が限定的に販売されることがあります。しかし、取り扱い商品はごく一部であり、常時購入できるわけではありません。見つけたらラッキー、くらいの感覚でいるのが良いでしょう。品揃えの豊富さや確実性を求めるなら、やはり公式ルートでの購入がおすすめです。
Fortnum&masonは福岡にもある?日本の店舗展開
かつては日本国内にも複数の店舗がありましたが、2024年現在、Fortnum&Masonの直営店は日本から撤退しています。しかし、三越伊勢丹などの百貨店の一部店舗やオンラインストアでは、現在も紅茶やビスケットなどの一部商品が取り扱われています。特に、三越日本橋本店にはコンセプトコーナーがあり、比較的豊富なラインナップが揃っています。福岡では、岩田屋本店などで時期によって取り扱いがあるようです。
Fortnum & Masonのチョコレートは見逃せない逸品
紅茶のイメージが強いFortnum & Masonですが、実はチョコレートも非常に高品質で人気があります。特に、トリュフやイングリッシュチョコレートのセレクションは、見た目も美しくギフトに最適です。ローズやバイオレットのフレーバーが香る、英国らしいユニークなチョコレートは、一度試す価値ありです。
一度は体験したいFortnum & MasonのAfternoon Tea
ロンドンを訪れるなら、ピカデリー本店4階の「ダイヤモンド・ジュビリー・ティーサロン」でのアフタヌーンティーは、最高の体験の一つです。エリザベス女王によって命名されたこの優雅な空間で、豊富な種類の紅茶と美しいペイストリーを楽しむ時間は、まさに至福。予約が必須なので、旅行の計画が決まったら早めに公式サイトをチェックしましょう。
毎年話題になるFortnum & Masonのアドベントカレンダー
クリスマスシーズンになると発売されるアドベントカレンダーは、毎年世界中で争奪戦が繰り広げられる人気商品です。紅茶、ビスケット、チョコレートなど、Fortnum&Masonの魅力が詰まったカレンダーは、クリスマスのカウントダウンを特別なものにしてくれます。デザインも毎年凝っており、コレクターズアイテムとしても人気です。
お土産に最適!Fortnum & Masonのエコバッグ
ブランドカラーのオ・ド・ニルを基調としたエコバッグ(バッグ・フォー・ライフ)は、お土産として非常に人気があります。ジュート(麻)素材でできており、丈夫でデザイン性も高いため、普段使いにも最適です。サイズやデザインのバリエーションも豊富なので、きっとお気に入りが見つかるはずです。
定番の味 Fortnum & Masonのロイヤルブレンドとは?
数あるブレンドの中でも、特に人気なのが「ロイヤルブレンド」です。1902年に国王エドワード7世のために作られたこの紅茶は、アッサムとセイロンの力強いブレンドで、ミルクとの相性が抜群。しっかりとしたコクがありながら、後味はすっきりとしています。Fortnum&Masonを初めて試すなら、まず選んで間違いない定番の味です。
まとめ:旅の動線上に輝く、洗練されたFortnum&Mason
今回のFortnum&Mason St. Pancras International店での買い物は、過去のピカデリー本店での失敗を払拭する、非常に満足度の高い体験となりました。旅の移動拠点という最高の立地で、喧騒を離れてじっくりと逸品を選べる。これは、時間が限られた旅行者にとって何よりの価値です。
購入したデカフェの紅茶は、カフェインを控えている友人へのお土産、そして夜のリラックスタイムを楽しむ自分への贈り物です。この美しいパッケージを開ける瞬間を想像するだけで、旅の喜びがまた一つ増えた気がします。ロンドンでお土産を探すなら、ぜひこのスマートで洗練された選択肢を、あなたの旅の計画に加えてみてはいかがでしょうか。
Official site: http://www.fortnumandmason.com/
Google Map:



