Ekberg ヘルシンキ訪問の序章:旅の拠点が叶えてくれた、憧れへの近道
ヘルシンキの街を歩く。石畳に響くトラムの走行音、澄んだ空気、そしてどこかミニマルでありながら温かみのあるデザインの数々。僕、CityNomixが今回の旅の拠点としてLapland Hotels Bulevardiを選んだのには、いくつかの明確な理由がありました。それは、デザインコンシャスな空間であることはもちろん、ヘルシンキ中心部へのアクセスの良さ、ヒエタラハティの蚤の市へ気軽に足を運べる立地、そして何よりも、この街で必ず訪れたいと心に決めていた場所への近さです。
その場所こそ、フィンランドで最も長い歴史を誇るカフェ、Ekberg(エクベリ)。1852年の創業以来、ヘルシンキの人々の日常に寄り添い、特別なひとときを彩ってきた伝説的な存在。僕がホテルを選んだ理由の一つが「Ekbergに近いから」というのは、決して大げさな話ではありません。旅の計画を立てる中で、そのオレンジ色のファサードの写真を何度眺めたことか。今回は、そんな憧れの場所で過ごした、忘れられないランチタイムの記憶を綴ります。
歴史と風格が薫る空間、Ekberg ヘルシンキ
ブールバード通りに面して佇むEkbergは、その外観からして特別なオーラを放っています。晴れた日の午後、太陽の光を浴びて輝くオレンジ色の壁と、心地よさそうに談笑する人々で賑わうテラス席。まさに、ヘルシンキの豊かな日常を切り取った一枚の絵画のようです。

一歩足を踏み入れると、外の喧騒が嘘のような、落ち着いたエレガントな空間が広がっていました。歴史の重みを感じさせるクラシックな内装、磨き上げられた調度品、そして窓から差し込む柔らかな光。それはまるで、時間の流れが少しだけ緩やかになるような、不思議な感覚でした。
170年以上の歴史を紡ぐ「Ekberg 1852」の物語
Ekbergの歴史は、1852年にフレドリック・エドヴァルド・エクベリが小さなベーカリーを開いたことに始まります。ロシア皇帝に仕えたこともある彼の作るパンとペストリーは瞬く間に評判を呼び、ヘルシンキの社交界に欠かせない存在へと成長していきました。戦争や時代の変化を乗り越え、創業から170年以上経った今もなお、同じ場所で多くの人々に愛され続けているのです。
このカフェは単なる飲食店ではありません。それは、ヘルシンキという街の記憶そのものであり、世代を超えて受け継がれてきた文化遺産と言えるでしょう。そんな場所に身を置けること自体が、旅の醍醐味だと感じずにはいられませんでした。

トラムが彩る窓辺の風景
僕が案内されたのは、大きな窓際の席。目の前にはトラムの停留所があり、緑と黄色特徴的な車体がひっきりなしに行き交います。ガタンゴトンという心地よい音と、乗り降りする人々の姿を眺めながら過ごす時間は、何とも言えない豊かさに満ちていました。観光客である僕が、まるでヘルシンキの日常に溶け込めたような、そんな錯覚さえ覚える瞬間です。このカフェが、外出先からホテルへ戻る途中の休憩ポイントとしても、いかに素晴らしい立地であるかを実感しました。

Ekberg ヘルシンキで味わう、忘れられないランチ体験
さて、いよいよお待ちかねのランチタイムです。クラシックな空間でいただく食事が、特別な体験にならないはずがありません。席に着き、緑色の大理石のテーブルに置かれたメニューを手に取ると、期待に胸が高鳴ります。
エクベリのメニュー:伝統と洗練の調和
メニューを開くと、そこには伝統的なフィンランド料理から、サンドイッチなどの軽食、そしてショーケースに並ぶ美しいケーキまで、魅力的な選択肢が並んでいました。英語メニューも完備されているため、安心して注文することができます。どれも美味しそうで迷いましたが、今回の目的は明確。フィンランドに来たからには絶対に食べたかった、あのスープです。

心まで温まるフィンランドのサーモンスープ「ロヒケイット」
僕が注文したのは、フィンランドの家庭料理の代表格であるサーモンスープ、「ロヒケイット(Lohikeitto)」です。運ばれてきた白いボウルには、クリームベースの優しい色合いのスープがなみなみと注がれ、ディルの爽やかな香りがふわりと立ち上ります。

スプーンですくうと、大ぶりにカットされたサーモンと、ホクホクのジャガイモやニンジンが顔を出しました。一口味わうと、まず感じるのはクリームのまろやかさと、サーモンの豊かな旨味。魚の臭みは一切なく、むしろ上質な出汁がスープ全体に溶け込んでいます。野菜の自然な甘みと、アクセントとなるディルの風味が完璧なハーモニーを奏で、冷えた体にじんわりと染み渡るような、深く、そして優しい味わいでした。添えられたライ麦パンをスープに浸していただくのもまた格別。多くの口コミサイトで絶賛されているのも納得の、まさに「ヘルシンキで食べるべき一皿」です。
香ばしいチーズとペストが織りなす絶品サンドウィッチ
スープだけでは物足りないかと、サンドウィッチも一皿注文しました。こんがりと焼き上げられたパンの間から、とろりとしたモッツァレラチーズと風味豊かなペストソースがのぞく、食欲をそそるビジュアルです。

一口かじると、パンのサクッとした食感の後に、熱々のチーズとトマトの酸味、そしてバジルの香りが口いっぱいに広がります。シンプルながら、素材一つひとつの質の高さが感じられる、満足度の高い一品でした。新鮮なサラダが添えられているのも嬉しいポイント。サーモンスープとの相性も抜群で、シェアして楽しむのにも最適です。
まるで宝石箱。魅惑のペイストリーたち
食事を終え、コーヒーをいただきながら店内を見渡すと、入り口近くのショーケースがひときわ輝いて見えました。そこには、まるで宝石のように美しいケーキやペイストリーがずらりと並んでいます。

ガラスドームに収められたシナモンロール、色とりどりのマカロン、艶やかなチョコレートケーキ。どれもこれも、パティシエの丁寧な仕事ぶりが伝わってくるものばかり。食後のデザートは別腹、ということで、僕たちもショーケースの前でしばし至福の悩みの時間を過ごしました。

僕が選んだのは、フィンランドを代表する伝統菓子「アレクサンダータルト(Aleksanterinleivos)」と、クリームがたっぷり詰まったロールケーキ。アレクサンダータルトは、ラズベリージャムを挟んだ生地の上に甘いアイシングがかかったお菓子で、ロシア皇帝アレクサンドル1世にちなんで名付けられたとか。素朴ながらも奥深い味わいのタルトと、香ばしいナッツがアクセントのロールケーキ。どちらも、丁寧に淹れられたコーヒーと共に、旅の疲れを癒してくれる優しい甘さでした。

Ekberg訪問のための実践情報
この素晴らしい体験を、これからヘルシンキを訪れるあなたにもぜひ味わってほしい。そのために、いくつかの実践的な情報と、僕なりの視点を加えておきます。
ヘルシンキの朝食カフェとして楽しむ「Ekberg ビュッフェ」
今回僕はランチで利用しましたが、Ekbergはヘルシンキで朝食が美味しいカフェとしても非常に有名です。平日の朝には、焼きたてのパンやペイストリー、ハム、チーズ、ヨーグルトなどが並ぶ豪華なビュッフェが楽しめるとのこと。優雅な空間で一日の始まりを迎える。これ以上の贅沢はないかもしれません。次回ヘルシンキを訪れる際は、必ずこの朝食ビュッフェを体験しようと心に誓いました。
ヘルシンキのシナモンロールを巡る旅:Ekbergとカンニストンレイポモ
ヘルシンキといえば、シナモンロール(コルヴァプースティ)も外せません。Ekbergのシナモンロールは、クラシックで上品な味わいが特徴です。一方で、地元で人気のベーカリー「カンニストン・レイポモ(Kanniston Leipomo)」のシナモンロールは、より素朴でスパイスが効いた味わい。どちらも甲乙つけがたい美味しさですが、雰囲気と共に味わうならEkberg、ローカルな味を求めるならカンニストン、というように、気分に合わせて選んでみるのもカフェ巡りの楽しみ方の一つです。
Ekbergへのアクセスと基本情報
Ekbergはヘルシンキ中央駅から徒歩約15分、ブールバード通りにあります。トラムを利用する場合は、目の前に「Aleksanterin teatteri」停留所があるので非常に便利です。営業時間は公式サイトで確認することをおすすめします。
公式サイト: https://www.ekberg.fi/fi/
Google Map:
まとめ:なぜEkberg ヘルシンキは旅人を魅了し続けるのか
Ekbergでの体験は、単に美味しい食事をしたという記憶以上のものを僕に残してくれました。それは、170年以上にわたってヘルシンキの街と人々に愛され続けてきた場所が持つ、特別な空気感に触れる体験でした。歴史に敬意を払いながらも、現代の私たちを温かく迎え入れてくれる懐の深さ。窓の外を流れる日常の風景と、店内に流れる穏やかな時間とのコントラスト。そして、一皿一皿に込められた、誠実で確かな味わい。
Ekberg ヘルシンキは、ただ空腹を満たす場所ではなく、旅人の心を満たしてくれる場所です。ヘルシンキを訪れることがあれば、ぜひブールバード通りまで足を運び、この歴史の扉を開けてみてください。きっとそこには、あなたの旅の記憶に深く刻まれる、豊かで美しい時間が待っているはずです。