CityNomixです。ロンドンの朝、優雅な朝食を「Booking Office 1869」で終えた私は、満たされたお腹と高揚する気分を抱えながら、次なる目的地へと足を向けました。今回の旅のテーマは「歩いて、撮って、書く」。しかし、これから向かう場所では、少しばかり「書く(描く)」ことの原点、そして天才たちの生の痕跡に触れることになりそうです。
向かう先は、大英図書館(The British Library)。世界最大級の知の殿堂でありながら、実は音楽ファン、特にビートルズ好きにとっては見逃せない「聖地」でもあります。セント・パンクラス駅のすぐ隣という好立地にありながら、意外と観光ルートから外されがちなこの場所。実際に足を運び、迷い、そして感動した体験を、皆さんにシェアしたいと思います。
赤レンガの知の要塞、大英図書館へ
私が宿泊している(そして朝食をとった)「St. Pancras London Autograph Collection」から、大英図書館は目と鼻の先です。というより、ほぼ隣接しています。ロンドンの空は今日も気まぐれですが、雲の切れ間から覗く青空が、赤レンガの建物を鮮やかに照らしていました。

ミッドランド・ロード(Midland Road)を歩いていると、威風堂々とした赤レンガの建築物が姿を現します。歴史的な重厚感がありつつも、どこかモダンで幾何学的なデザイン。壁面には鮮やかな黄色のバナーで「BRITISH LIBRARY」と掲げられています。これだけ主張してくれれば、方向音痴の私でも迷いようがありません。
大英図書館は、マグナ・カルタからレオナルド・ダ・ヴィンチのノート、そして現代のデジタルデータに至るまで、人類の知的財産を包括的に保存している場所です。しかし、堅苦しい場所だと敬遠しないでください。ここには、私たちの感性を刺激する「カルチャー」が詰まっているのです。

正面のエントランスに到着しました。赤い庇(ひさし)が特徴的なモダンな入口です。ガラス扉の向こうには、世界中の知識が集積された空間が広がっています。さあ、中に入ってみましょう。
開放的なアトリウムと知的な熱気
中に入った瞬間、予想以上の開放感に驚かされました。中央には巨大な吹き抜けがあり、白い柱と赤レンガの壁のコントラストが非常に美しい。天窓からは自然光が降り注ぎ、図書館特有の「薄暗くて静かすぎる」雰囲気は微塵もありません。

むしろ、ここには「知的な熱気」のようなものが漂っています。正面にはインフォメーションカウンターがあり、その奥や上階のスペースでは、多くの人々がテーブルに向かっています。

周囲を見渡すと、読書に没頭している人というよりは、ノートパソコンを広げてワークに集中している人の方が多い印象です。フリーランスのクリエイターや学生、あるいは私のようなデジタルノマドにとって、ここは最高のコワーキングスペースなのかもしれません。ロンドンのカフェはどこも混雑していますが、ここなら知的な刺激を受けながら、落ち着いて作業ができそうです。
ユニークなグッズに出会えるライブラリーショップ
まずは館内を探索してみましょう。エントランスを入って左手には、ミュージアムショップがあります。私は旅先で美術館や図書館のショップを覗くのが大好きです。そこには、その施設の「編集力」が凝縮されているからです。

店内は木目調の落ち着いた空間で、天井からはなんと巨大なタイプライターのオブジェが吊り下げられています! 文学好きの心をくすぐる演出ですね。本棚には美しい装丁の書籍が並び、アガサ・クリスティのパズルや、大英図書館オリジナルのトートバッグなど、物欲を刺激するアイテムが目白押しです。

ショップの奥には「Exhibitions」という表示も見えます。ここでは定期的に有料の企画展も開催されているようです。しかし、今日の私の最大の目的は別にあります。そう、ビートルズです。
ビートルズを探して:館内での小さな迷走
事前情報によると、ここ大英図書館にはビートルズのメンバー、ポール・マッカートニーとジョン・レノンの直筆歌詞(ハンドリリックス)が展示されているとのこと。音楽と共に育った私にとって、それは単なる「紙切れ」ではなく、歴史を変えたインスピレーションが具現化した「聖遺物」です。
「まあ、有名な展示だからすぐに分かるだろう」と高を括っていたのが間違いでした。館内を見渡しても、それらしい派手な看板や「Beatles are here!」といった案内は見当たりません。広大な館内を少し歩き回ってみましたが、あるのは膨大な書籍と、黙々と作業する人々だけ。
私の頼れる相棒であるChatGPTに場所を尋ねてみましたが、提示された情報は少し古かったのか、あるいは私の探し方が悪かったのか、該当する場所には見当たりません。デジタルマーケティングのプロとして、情報の検索には自信があったのですが、リアルの迷路には敵わないようです(苦笑)。
やはり、困ったときは「人」に聞くのが一番です。エントランス正面にあったインフォメーションカウンターに戻り、スタッフの方に声をかけました。
「すみません、ビートルズの手書きの歌詞が見たいのですが」
「ああ、それなら『Sir John Ritblat Gallery』にあるわよ。ここを入って左手の奥にある、常設展示室(Treasures of the British Library)の中ね。小さな展示だから見逃さないようにね」
親切に教えてくれたスタッフに感謝し、教えられた方向へ向かいます。「小さな展示」という言葉が少し気になりましたが、とにかく向かってみましょう。
Sir John Ritblat Gallery:撮影禁止の聖域で見たもの

ありました。「Sir John Ritblat Gallery: Treasures of the British Library」。ここが大英図書館の「宝物庫」です。マグナ・カルタやシェイクスピアの初版など、教科書でしか見たことのないレベルの歴史的資料が眠る場所です。
意気揚々と中に入ると、照明を落とした薄暗い空間が広がっていました。資料保護のためでしょう。厳かな雰囲気に、自然と背筋が伸びます。
しかし、ここでもまた少し迷いました。展示品があまりにも多岐にわたり、かつ膨大だからです。古文書、楽譜、地図……。目を皿のようにして「Beatles」の文字を探し、ギャラリーの奥へ奥へと進みます。そしてようやく、左手奥のケースにそれを見つけました。
そこにありました。ポールとジョンの筆跡が。
目の前にあるのは、紛れもなく『Strawberry Fields Forever』と『She Said She Said』のハンドリリックスです。印刷された文字ではありません。彼らがペンを走らせ、思考し、悩み、そしてメロディを紡ぎ出したその瞬間の痕跡です。
ポールの文字は、どこか几帳面で整っている印象を受けました。一方、ジョンの筆跡には、彼の奔放なエネルギーや当時の心情が滲み出ているように感じられます。歌詞の横には、ポールが描いたと思われるジョージとジョンの似顔絵も添えられていました。これがまた、なんとも言えない愛嬌があって素晴らしい。
「すごい……」
思わず声が漏れました。デジタルで音楽を聴くことが当たり前になった今、こうして「手書き」の文字を見ることで、彼らが私たちと同じ人間であり、紙とペンを使って世界を変える音楽を生み出したのだという実感が湧いてきます。震えるような感動です。
この感動を写真に収め、Photomoの読者の皆さんに伝えたい! そう思ってカメラに手を伸ばした瞬間、無情なサインが目に入りました。
「NO PHOTOGRAPHY(撮影禁止)」
ガーン……。そうです、ここは貴重な資料を展示するギャラリー。撮影は厳禁なのです。残念ながら、その感動的な筆跡をここで画像としてお見せすることはできません。しかし、だからこそ、「現地に行かなければ見られない」という価値があるとも言えます。私の拙い文章で恐縮ですが、この興奮が少しでも伝われば幸いです。
展示自体はスタッフの方が言っていた通り、非常にコンパクトなものでした。しかし、その「小ささ」の中に凝縮されたエネルギーは計り知れません。ロンドンに来たなら、バッキンガム宮殿やビッグ・ベンも良いですが、ぜひこの「小さな紙切れ」を見に来てください。音楽好きなら、きっと魂が震える体験になるはずです。
Photomo的視点で深掘り:大英図書館を楽しむための8つのキーワード
さて、ビートルズの展示で胸がいっぱいになった私ですが、ここからはCityNomixの視点で、大英図書館をより深く楽しむためのポイントを、キーワードごとに解説していきましょう。これから訪れる方のための実用的なガイドとして役立ててください。
大英 図書館 ハリーポッター
大英図書館と聞いて『ハリー・ポッター』を連想する方も多いでしょう。実際、2017年から2018年にかけて開催された特別展「Harry Potter: A History of Magic」は世界的な話題となりました。現在はその特別展は終了していますが、常設展の「Treasures Gallery」には、魔法や錬金術に関する古文書も展示されており、ハリポタの世界観に通じる「リアルな魔法の歴史」を感じることができます。JKローリングもリサーチに通ったと言われるこの場所で、魔法のルーツを探すのも一興です。
大英 図書館 写真
今回私が痛感したように、Sir John Ritblat Gallery(宝物展示室)内は撮影禁止です。これは厳守してください。しかし、それ以外のエリア、例えばエントランスホール、ショップ、カフェ、そしてあの美しい「King’s Library Tower(王の図書館の塔)」と呼ばれるガラス張りの書庫などは撮影可能です。特に吹き抜けのアトリウムは自然光が美しく、フォトジェニックな一枚が撮れます。マナーを守って、知的な空間を切り取りましょう。
大英 図書館 デジタルアーカイブ
「ロンドンまでは行けない」という方に朗報です。大英図書館はデジタルアーカイブに非常に力を入れています。公式サイトでは、数百万点に及ぶコレクションの一部をオンラインで閲覧可能です。ビートルズの歌詞についても、時折オンライン展示で解説されることがあります。また、「Sounds」コレクションでは世界中の音楽や音声記録を聴くことができます。自宅にいながらにして知の探検ができる、現代ならではの図書館の楽しみ方です。
大英 図書館 グッズ
先ほど少し触れましたが、ショップのグッズ展開は非常に優秀です。特に私が注目したのは、大英図書館の収蔵品をモチーフにしたデザイングッズ。「不思議の国のアリス」の原画を使った文房具や、シェイクスピアの名言がプリントされたトートバッグなどは、お土産としてだけでなく自分用にも欲しくなります。デザインが洗練されており、「いかにも観光地のお土産」感が薄いのがPhotomo読者には嬉しいポイントでしょう。
大英 図書館 三井 不動産
一見関係なさそうな「三井不動産」というキーワードですが、実はロンドンの都市開発という視点で見ると興味深い繋がりが見えてきます。三井不動産はロンドン西部の「ホワイトシティ・プレイス」などの再開発を手掛けていますが、ここキングスクロス・セントパンクラス地区もまた、大規模な都市再生の成功例として知られています。大英図書館のような文化的拠点が核となり、Googleのロンドン本社なども集まるこのエリアは、ビジネスと文化が融合した街づくりの最前線です。日本のデベロッパーも注目するロンドンの「場づくり」の妙を、この図書館周辺で感じ取ることができます。
大英 図書館 英語
英語学習者にとって、ここはまさに聖地です。世界中の英語文献が集まる場所であり、館内の掲示物や解説文を読むだけでも最高のアウトプット練習になります。また、図書館が提供するワークショップやトークイベント(多くは英語で行われます)に参加すれば、リスニング力を鍛える絶好の機会にもなるでしょう。「本場の英語」に囲まれる環境は、モチベーションを劇的に高めてくれます。
大英 図書館 閲覧室
一般の観光客は「Reading Room(閲覧室)」に入って本を借りることはできませんが、事前の登録(Reader Passの取得)があれば利用可能です。研究者やジャーナリストでなくても、特定の資料閲覧の必要性を証明できればパスを発行してもらえる場合があります(審査あり)。もし長期滞在でリサーチをする予定があるなら、あこがれの閲覧室での読書にチャレンジしてみるのも良い思い出になるでしょう。
大英 図書館 蔵書数
最後に、この図書館のスケールについて。大英図書館の収蔵点数は1億7000万点以上と言われています。本だけでなく、新聞、地図、楽譜、特許、切手など、あらゆる記録媒体が含まれます。毎年約300万点の新資料が追加され、書架の総延長は毎年数キロメートルずつ伸びているとか。この圧倒的な「知の集積」の中に身を置くだけで、人間という種が積み上げてきた歴史の重みを感じずにはいられません。
まとめ:記録ではなく、体験としての図書館
ビートルズのハンドリリックスを目当てに訪れた大英図書館でしたが、そこで得られたのは、単なる展示の鑑賞以上の体験でした。美しい建築、知的な賑わい、そして撮影禁止のギャラリーで自身の目に焼き付けた天才たちの筆跡。これらはすべて、デジタル画面越しでは得られない「温度」のある記憶です。
ロンドンを訪れる際は、ぜひこの赤レンガの知の迷宮に足を踏み入れてみてください。もしかしたら、あなただけの「宝物」が見つかるかもしれません。
さて、大英図書館で知的好奇心を満たした後は、また別の種類の驚異に出会うために移動します。次に向かうは、恐竜の骨格標本で有名な「ロンドン自然史博物館(Natural History Museum)」です。次回の記事もお楽しみに!
Access Information
The British Library
住所: 96 Euston Rd, London NW1 2DB, UK
公式サイト: https://www.bl.uk/
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