予期せぬ幸運の翼、ANAファーストクラスへの道
2024年11月、ポルトガル・リスボンで開催されるWeb Summitへの参加が決まり、私の旅支度は始まりました。デジタルマーケターとしての知的好奇心を刺激するこのカンファレンスへは、ANAの翼で羽田からロンドンを経由するルートを選択。当初の計画では、快適なビジネスクラスを狙っていました。そのため、アップグレード可能なエコノミークラスの航空券を6月に購入し、ANAが誇るアップグレードポイント(20ポイント保有)を行使してビジネスへの変更を心待ちにしていたのです。
しかし、現実はそう甘くはありませんでした。出発が10月に迫っても、アップグレードの許可は一向に下りず。情報を集めると、ANAの会員ステータスや申し込みの早さが影響するとのこと。ANAへ問い合わせてみると、なんと往路便の有料ビジネスクラスはほぼ満席、私の空席待ちは8番目という絶望的な状況が判明しました。アップグレード可能なエコノミー運賃も決して安くはなく、このままでは費用対効果が見合わないと判断。一度予約をキャンセルし、改めてビジネスクラスで発券し直すことを決意しました。
1年という有効期限が迫るアップグレードポイントが無駄になるのかと肩を落としかけたその時、ある閃きが。「20ポイントあれば、往復は無理でも、片道の羽田発ロンドン行きをファーストクラスにアップグレードできるのでは?」 ダメ元で申し込んだところ、なんと搭乗3日前、奇跡的にアップグレードが承認されたのです! 人生初のファーストクラス。Photomoのテーマ「歩いて、撮って、書く」を地で行く私、CityNomixにとって、これ以上ない刺激的な旅の始まりとなりました。
選ばれし者の空間へ:羽田空港第2ターミナル RカウンターとANA SUITE LOUNGE
搭乗日当日。ファーストクラス専用のチェックインカウンター「Rカウンター」の存在は知っていましたが、実際に足を踏み入れるのは初めて。成田空港の「Zカウンター」同様、一般の喧騒から隔絶されたその空間は、緊張と高揚感を同時に与えてくれます。広々とした専用エリアで、信じられないほど丁寧なアテンドを受け、手続きは瞬く間に完了。手荷物も優先的に預けられ、専用保安検査場「Gold Track」を経て、出国審査もスムーズに通過しました。
目指すは、国際線では初体験となるANAの最高峰ラウンジ「ANA SUITE LOUNGE」。第2ターミナルということもあり、全てが新鮮です。受付を抜けると、ダイニングとシャワールームは下の階にあるとのこと。朝のフライトで時間に余裕はありませんでしたが、搭乗前のシャワーは譲れません。心身ともにリフレッシュできる、貴重なひとときです。清潔でアメニティも充実したシャワールームで汗を流し、ダイニングへ。
ここでは、通常のラウンジでは見かけない「そば粉のガレット」をオーダー。シャンパンと共にいただけば、その繊細な味わいに旅の期待が一層高まります。その後は上の階へ戻り、大きな窓から飛行機が行き交う空港の景色を眺めながらビールを一杯。出発までの時間を、静かで満たされた空気の中で過ごしました。これぞ、ANA ファーストクラス 搭乗記の幕開けにふさわしい、贅沢なプロローグです。
ウェルカムシャンパンと雲上の個室:ANA国際線ファーストクラス「THE Suite」へ
搭乗時刻が近づきゲートへ向かうと、初めて耳にする「グループ1」での優先搭乗のアナウンス。スムーズに機内へ進むと、温かい笑顔のキャビンアテンダントの方々がお出迎え。ウェルカムドリンクのシャンパンをいただきながら、自席へと案内されます。

今回搭乗したANA国際線ファーストクラスのシート「THE Suite」は、まさに圧巻の空間。ビジネスクラスの「THE Room」も十分にパーソナルな空間が確保されていますが、ファーストクラスはそれを遥かに凌駕する広さとプライベート感を誇ります。ドアを閉めれば完全に個室となり、大型の4Kモニターや豊富な収納スペースなど、機能性と快適性を極めた設計に息をのみます。
着席してほどなく、チーフパーサーの方が丁寧なご挨拶に来られました。ビジネスクラスのそれとは明らかに異なる、一人ひとりの乗客に寄り添うような温かいコミュニケーション。そして、「お持ち帰りいただける寝間着をご用意しておりますが、お着替えになりますか?」とのお声がけ。もちろん、喜んで。柔らかなコットンの寝間着は着心地抜群で、これからの長時間のフライトを最高にリラックスして過ごせることを確信しました。乗客全員の搭乗が完了し、飛行機は静かに、しかし力強くロンドンへと飛び立ちました。
至福の味覚旅行:ANAファーストクラス機内食(洋食コース)の全貌
さて、前置きが長くなりましたが、ここからが本記事の核心、ANA ファーストクラス 機内食の体験レポートです。私は今回、洋食のフルコースをチョイスしました。上空では味覚が鈍ると言われますが、それを差し引いても、いや、それを計算し尽くしたかのような絶妙な味付け。厳選された食材、見た目の美しさ、そして一皿一皿に込められたシェフの情熱。それは、私がこれまでに経験したどんなレストランの料理にも引けを取らない、まさに「空の上のガストロノミー」でした。
アミューズ:五感を刺激する、始まりの一口
シャンパンと共に供されたアミューズは、旅の始まりを華やかに彩ります。
- ANAオリジナルナッツチリパイスティック
- ポークリエットの芽キャベツ包み
- タコのほうじ茶煮、海藻ゼリーマッシュルームのソテー ポルチーニソース
ナッツの香ばしさとチリの微かな刺激、ポークリエットの濃厚な旨味と芽キャベツのほろ苦さ。そして特筆すべきは、「タコのほうじ茶煮、海藻ゼリーマッシュルームのソテー ポルチーニソース」。ほうじ茶で柔らかく煮込まれたタコの風味と、海藻ゼリーのつるりとした食感、マッシュルームとポルチーニ茸の芳醇な香りが織りなすハーモニーは、まさに絶品。これから続く美食への期待感を否応なく高めてくれます。

アペタイザー:海の宝石キャビアと、サーモンの芸術
続くアペタイザーは、「サーモンのマリヴォリテ風オアールコンジメと赤キヌアサラダ キャビア添え」。しっとりとマリネされたサーモンの鮮やかなオレンジ色が目に美しく、口に運べば上質な脂の甘みが広がります。そして、人生初のキャビア。以前、キャビアはただ塩辛いものという先入観がありましたが、ここで提供されたものは全くの別物。プチプチとした食感とともに、凝縮された海の旨味と程よい塩味が口の中に広がり、添えられた赤キヌアのサラダが爽やかなアクセントを加えます。まさに、ファーストクラスならではの贅沢な一品です。
フレッシュネスと優しさ:ガーデンサラダとコーンスープ
メインディッシュの前に供されるのは、新鮮な「ガーデンサラダ」。ドレッシングはノンオイル大根ドレッシングとサウザンアイランドドレッシングから選べ、私はヘルシーなノンオイル大根をチョイス。シャキシャキとした野菜の歯ごたえと、大根ドレッシングのさっぱりとした風味が、これまでの濃厚な味わいをリセットし、次への期待を高めます。

そして、心温まる「コーンスープ」。シンプルながらも、コーン本来の甘みが最大限に引き出されたクリーミーなスープは、どこか懐かしさを感じさせる優しい味わい。メインディッシュへと続く、完璧な橋渡し役です。

メインディッシュの真髄:とろける和牛フィレ肉と秋の味覚のマリアージュ
いよいよメインディッシュ、「和牛フィレ肉のグリル 栗のパンケーキとマデイラソース添え」の登場です。完璧なミディアムレアに焼き上げられた和牛フィレ肉は、ナイフを入れると吸い込まれるように柔らかく、口に運べばその名の通り「とろける」食感。噛むほどに上質な和牛の旨味が溢れ出します。そして、その上には贅沢にもフォアグラのソテーが。濃厚なフォアグラのコクがフィレ肉の繊細な味わいを引き立て、秋の味覚である栗を使ったパンケーキのほのかな甘みと、芳醇なマデイラソースが全体をまとめ上げます。これはまさに、味覚のオーケストラ。ANA ファーストクラス 機内食のレベルの高さを改めて実感させられる、感動的な一皿でした。

キャプション: ANAファーストクラス洋食コースのメインディッシュ、和牛フィレ肉のグリル。栗のパンケーキとマデイラソースが添えられている。
甘美なるフィナーレ:選べる喜びと至福のデザートタイム
「デザートは一種類だけでなく、お好きなだけどうぞ」という、ファーストクラスならではの嬉しいお言葉。お言葉に甘えて、「アイス盛り合わせ」と「マロン」のデザートをいただきました。数種類のアイスクリームはそれぞれ濃厚で風味豊か。マロンのデザートは、栗の優しい甘さと滑らかな舌触りが秋を感じさせます。コーヒーと共にいただくプティフールまで、細部にまでこだわりが感じられる、まさに完璧なフィナーレでした。

繰り返しになりますが、このANA ファーストクラス 機内食は、私がこれまでに国内外で味わった数々の食事の中でも、間違いなくトップ3にランクインする、記憶に残る体験となりました。
一期一会の逸品:ANAファーストクラス限定「響100周年」記念ウイスキー
素晴らしい食事とワインに酔いしれていると、キャビンアテンダントの方が気さくに話しかけてくださいました。「ご旅行ですか、それともお仕事で?」。リスボンでのWeb Summit参加の旨を伝えると、そこから会話が弾みます。ファーストクラスでは、こうした乗務員の方とのパーソナルなコミュニケーションも楽しみの一つです。
お酒の話になった際、「もしよろしければ、サントリーのジャパニーズウイスキー『響』の100周年記念ボトルが、現在ANAのファーストクラス限定で販売されております」と、耳寄りな情報が。なんでも、一時期はこのウイスキーを入手するためだけにファーストクラスに搭乗する人もいたとか、市場ではプレミア価格がついているとか。ANA ファーストクラス 搭乗記の中でも、これは特筆すべき幸運な出会いです。めったにない機会、そして素晴らしい旅の記念にと、重くなるのも覚悟の上で購入させていただきました。

天空の寝室:日本の「おもてなし」が生んだ、究極のくつろぎ
美味しい食事とお酒を堪能し、心地よい眠気が訪れた頃。再びキャビンアテンダントの方がそっと声をかけてくださいました。「本日はファーストクラスの窓側のお席は皆様ご利用でいらっしゃいますが、中央のお席に空きがございます。よろしければ、お休み用にベッドをご用意いたしましょうか」。なんですと! これはまさに、日本の、ANAの「おもてなし」の真骨頂。YouTuberの方の動画でしか見たことのなかった、空席を利用したフルフラットベッドの提供が、まさか自分の身に起こるとは。自席とは別に用意された広々としたベッドで、13時間の長旅も信じられないほど快適に眠りにつくことができました。この上ない贅沢です。

尽きない食の楽しみ:充実のアラカルトメニューも制覇?
とはいえ、根っからの食いしん坊、そして貧乏性の私は、せっかくのファーストクラス、アラカルトメニューも楽しまなければ損、とばかりに(笑)。しばらくして目覚めると、まずはおつまみに「ホタテの佃煮」と「一番搾り」を。その後、小腹が空いたので「特製カレーライス」をオーダー。これがまた、洋食屋さんのような本格的な味わいで絶品。さらに「アイスの盛り合わせ」をリクエストし、到着前の朝方には軽食として「うどん」と「ピラフ」をいただきました。食後には「フルーツの盛り合わせ」と温かい紅茶で、最後の最後まで食の楽しみを満喫。日系エアラインならではの、好きな時に好きなものを頼めるアラカルトメニューの充実ぶりと、それを笑顔で提供してくださるキャビンアテンダントの皆様のホスピタリティには、本当に頭が下がります。いつもありがとうございます。また必ず利用させていただきます。


ロンドン到着、そして次の体験へ
ロシア領空を避け、約13時間のフライトを終え、ヒースロー空港に無事着陸。近年、東京メトロが一部運営に参画し話題となったエリザベスラインを利用し、宿泊先のあるトットナム・コート・ロード駅へ。この日宿泊したのは、以前Photomoの宿泊記でもご紹介した「The Resident Soho」。ロンドンの中心で、次の「歩いて、撮って、書く」体験が私を待っています。
まとめ:ANAアップグレードポイントで叶える、一生の思い出に残る空の旅
今回のANA ファーストクラス 搭乗記、いかがでしたでしょうか。ANA ファーストクラス 機内食の素晴らしさはもちろんのこと、アップグレードポイントを利用してこのような貴重な体験ができたことは、大きな発見であり喜びでした。もしANAのアップグレードポイントをお持ちで、使い道に迷われている方がいらっしゃれば、片道からでもファーストクラスへのアップグレードを心からお勧めします。それはきっと、あなたの旅の記憶に深く刻まれる、特別な体験となるはずです。そして、その体験が、あなたの次の行動を後押しするきっかけになることを願って。
Photomoは、これからもCityNomixのリアルな視点を通して、世界の街のカルチャーや魅力を発信していきます。次回の記事も、どうぞお楽しみに。
公式サイト: https://www.ana.co.jp/
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