【Dover Street Market London】コラボの秘境か!?日本で売り切れのスニーカー在庫を求めてDigる

ノッティングヒルからファッションの迷宮、Dover Street Marketへ

ノッティングヒルのレコードショップで、ノエル・ギャラガーの名演『The Dreams We Have as Children』のアナログ盤を手に入れた高揚感も冷めやらぬまま、僕、CityNomixは次なる目的地へと足を向けた。(その時の様子はこちらの記事で:ノッティングヒルのレコードショップ探訪記

向かう先は、ファッションという名の迷宮、Dover Street Market London。ここは単なるセレクトショップではない。川久保玲氏がディレクションする美意識が貫かれた空間であり、世界中のデザイナーたちのクリエイションが衝突し、新たな価値を生み出す実験場だ。

 

そして僕にとって、この場所は「コラボレーションアイテムの秘境」でもある。なぜなら、日本とイギリス、あるいは他の国々では、ファッションの「売れ筋」が微妙に異なるからだ。新商品、人気商品、そして特に争奪戦になりがちなコラボ商品。その需要と供給のバランスの歪みが、思いがけない「残り物」という名の福を生むことがある。

 

熱心なファンがブランドの直営店に殺到する一方で、Dover Street Marketは一種の「穴場」となり得る。発売日がずれていたり、そもそも取り扱いの情報が直前まで不確定だったりするため、アンテナの感度が高い者だけが辿り着ける宝の島なのだ。

 

実は、昨年2024年にも、日本では瞬く間に姿を消したWTAPSとNew Balanceのコラボスニーカーを、この場所で幸運にも手に入れている。(その時の感動的な記録はこちら:2024年版ドーバーストリートマーケット探訪記

前日に訪れたFootpatrolで今季のWTAPSとNew Balanceのコラボを見かけた記憶が、僕の期待をさらに煽る。「今年も、あるかもしれない」。そんな淡い希望を胸に、僕はHaymarketの喧騒から一本入った、静かな通りへと歩を進めた。

 

アートとファッションが交差する、Dover Street Marketのエントランス

ロンドンの中心、ピカデリーサーカスにも近いこのエリア。Dover Street Marketの現在の店舗は、もともとバーバリーが所有していた歴史的な建造物の中にある。その重厚なファサードとは裏腹に、エントランスはHaymarketのメインストリートから少し奥まったOrange Street側にひっそりと佇んでいる。この「知る人ぞ知る」感じが、探検の始まりを告げているようで心地よい。

ロンドンのドーバーストリートマーケットの外観。ジョージア・オキーフの作品がウィンドウに展示されている
オレンジストリート側から見たドーバーストリートマーケットのウィンドウディスプレイ

夕暮れ時の17時、街灯が灯り始める頃。ウィンドウディスプレイは、それ自体がひとつのアートインスタレーションだ。この日はジョージア・オキーフの作品が大きくフィーチャーされ、彼女の描く雲や花の絵画が、クラシカルな建築と幻想的なコントラストを生み出していた。道行く人々も足を止め、ガラス越しの芸術に見入っている。

ジョージア・オキーフの花の絵画がディスプレイされたドーバー ストリート マーケット ロンドンの外観
ドーバー ストリート マーケット ロンドンのショーウィンドウを飾るジョージア・オキーフの作品

重い扉を開けて中へ一歩踏み入れると、そこはもう異世界だ。香水の香りと、静かながらも確かな熱気を帯びた空気が肌を撫でる。そして、まず目に飛び込んでくるのが、巨大な白い柱に記されたフロアガイドだ。地階から最上階まで、取り扱いブランドがアルファベット順に整然とリストアップされている。このミニマルで機能的な案内板は、広大なファッションの海を航海するための、信頼できる羅針盤のような存在だ。

ドーバーストリートマーケットロンドンの白い柱に掲示されたフロアガイド。地下1階から3階までの取り扱いブランドがリストアップされている。
Dover Street Market Londonのフロアガイド。各階のブランドがアルファベット順に整理されており、お目当てのショップを一目で確認できます。

僕のお目当てはストリートウェアとスニーカー。迷わず、地下(Basement)へと続く階段を下りていく。ちなみにSupremeは2階。これも覚えておくとスムーズだ。さあ、宝探しの始まりだ。

 

Dover Street Marketの地下は、コラボスニーカーの宝庫か?

階段を降りきると、まず迎えてくれるのはStüssyのコーナーだ。ここは常に新しい動きがある。前回訪れた際は新作の発売日と重なり、開店前から行列ができていたことを思い出す。ロンドンのStüssyは、日本の定価とほぼ変わらない価格設定なので、日本で手に入るものはここで焦って買う必要はない。もちろん、海辺の街マーゲートにあるようなアーカイブストアは全くの別物だが。(Stüssy Margateの特別な体験についてはこちら:Stüssy Margate Archive Store探訪記

 

Stüssyのラックを軽くチェックし、「異常なし」と心の中で呟きながら、さらに奥のスニーカーコーナーへと進む。心臓の鼓動が少し速くなる。果たして、WTAPSとNew Balanceのコラボモデルはあるだろうか。

 

棚に目をやると、見慣れたシルエットが目に飛び込んできた。しかし、そのカラーリングは僕が探していたものではなかった。そこにあったのは、AuraleeとNew Balanceのコラボレーションモデルだった。クリームベージュとダークブラウン、どちらも洗練された配色で、日本では非常に人気が高かったはずだ。

赤いディスプレイ棚に並べられた、クリーム色とダークブラウンのAuraleeとNew Balanceのコラボスニーカー
鮮やかな赤い棚で存在感を放つ、Auralee × New Balanceのコラボモデル

「うーん、これも良い…」。一瞬、心が揺らぐ。マイサイズはあるだろうか。しかし、今日の第一目標はあくまでWTAPS。一度冷静になるため、まずは地下フロア全体をくまなく探索することにした。

 

日本ブランドの在庫状況をチェック

まずはC.E (Cav Empt)。SK8THING氏が手がけるグラフィックは、ロンドンでも確固たるファン層を築いている。今シーズンのアイテムが中心で、特に日本で買い逃したような掘り出し物は見当たらなかった。

店内のラックに陳列されたC.E (Cavempt) の新作ウェアと床に置かれたスニーカー
C.E (Cavempt) の今シーズンのアイテムが並ぶディスプレイ

続いてはCDGのスペース。壁から床まで埋め尽くすロゴのインパクトは健在だ。こちらも定番アイテムが中心で、特に目新しい発見はなし。しかし、この空間に身を置くだけで、ブランドの世界観にどっぷりと浸れる。

壁や床一面にCDGのロゴが施されたコムデギャルソンの店舗内観と陳列された衣類
壁から床までCDGのロゴで埋め尽くされた、インパクト抜群の店内スペース

PalaceとNikeのコラボレーション、その在庫の謎

そして、ロンドン発のスケートブランド、Palace Skateboards。SOHOに旗艦店を構えるが、新作発売時には長蛇の列ができるため、Dover Street Marketでチェックするのは賢い選択肢と言える。ちょうどNikeとのコラボレーションが展開されていた時期。何か面白いアイテムが残っていないかと期待して目を向けると…。

 

驚いたことに、ウェアからスニーカーまで、かなりのアイテムがサイズ豊富に残っていた。これは一体どういうことだろう。日本では考えにくい光景だ。蛍光イエローのラインが特徴的なこのコレクション、もしかしたらロンドンのストリートの空気感とは少し違ったのかもしれない。デザインがスポーティというよりは、少しワークウェア寄りに振れた印象が、こちらのファンには響かなかったのだろうか。そんなことを想像しながら一通り商品を手に取ってみるが、残念ながら僕の琴線に触れるものはなく、そっとラックに戻した。

大理石調の棚に陳列されたNikeとPalaceのコラボレーション商品(キャップ、ジャージ、スニーカー)と、背景のスケートボードのビジュアル
店舗で見かけたNikeとPalace Skateboardsのコラボレーションディスプレイ
大理石調の店内に設置されたラックに掛けられた、NikeとPalaceのコラボレーションウェア
ネオンカラーが映えるジャケットやデニムなど、バリエーション豊かなNike x Palaceのコレクション。

Dover Street Marketで探す、日本ブランドと珠玉のコラボレーション

地下の探索を終え、再び各フロアを巡る。Dover Street Marketといえば、やはりその核となるのはCOMME des GARÇONSであり、その多彩なコラボレーションアイテムだ。特にスニーカーは、毎シーズン驚くようなブランドとの協業が発表されるため、見逃すことはできない。

 

シューズが並ぶ一角に、異彩を放つデザイン群があった。まずは、COMME des GARÇONS JUNYA WATANABE MANとOAKLEY FACTORY TEAMのコラボモデル「IBEX」。有機的で未来的なデザインは、まるで生き物のよう。ブラックとホワイト、どちらも甲乙つけがたい魅力がある。

コンクリートの床に置かれたCOMME des GARCONS JUNYA WATANABE MAN × OAKLEY FACTORY TEAMの黒いIBEXスニーカー
COMME des GARCONS JUNYA WATANABE MANとOAKLEY FACTORY TEAMのコラボレーションモデル、黒のIBEXスニーカー
斑点模様の床に置かれたCOMME des GARCONS JUNYA WATANABE MANとOAKLEY FACTORY TEAMのコラボレーションによる白いIBEXスニーカー
近未来的なデザインが光る、COMME des GARCONS JUNYA WATANABE MAN × OAKLEY FACTORY TEAMのIBEX Wネームスニーカー(ホワイト)

さらに、同じくJUNYA WATANABE MANとNew Balanceのコラボ「471」も発見。毛足の長いヘアリースエードが特徴的で、グレーとブラックの2色が並ぶ。クラシックなランニングシューズのフォルムに、素材感で遊びを加えるジュンヤらしいアプローチだ。

コンクリートの床に置かれた、JUNYA WATANABE MAN別注ニューバランス471のグレースニーカー
JUNYA WATANABE MAN × New Balance 471 W-NAME グレーモデル
コンクリートの地面に置かれたNew Balance 471 × JUNYA WATANABE MANの黒いスニーカー
シックなブラックのスエードが特徴的なNew Balance 471 × JUNYA WATANABE MANのコラボレーションモデル

COMME des GARÇONS HOMMEとNew Balanceの「U509」も、クリーンなホワイトとテクニカルなグレーが揃っていた。シュータンの「HOMME」のロゴが、さりげない主張を感じさせる。

自然光の下、コンクリートの地面に置かれたNew Balance U509とCOMME des GARÇONS HOMMEの白いコラボレーションスニーカー
クリーンな白が映える、New BalanceとCOMME des GARÇONS HOMMEのコラボモデル「U509」
コンクリートの地面に置かれた、グレーとシルバーのCOMME des GARÇONS HOMME × New Balance U509 コラボスニーカー
COMME des GARÇONS HOMME × New Balance U509 Wネーム(グレー)

スニーカーだけでなく、アパレルやバッグにも素晴らしいコラボレーションが潜んでいた。JUNYA WATANABE MANとアメリカのアウトドアブランドFILSONのジャケット。堅牢なダック地に、鮮やかなバッファローチェックを組み合わせたデザインは、まさに両者のアイデンティティの融合だ。

ハンガーラックに掛けられたJUNYA WATANABEとFILSONのコラボレーションジャケットやその他のアウター
ハンガーラックに並ぶJUNYA WATANABEとFILSONのコラボレーションアイテム

そして、COMME des GARÇONS HOMMEとBRIEFINGのバッグ。ミリタリースペックの機能美を持つBRIEFINGのバッグに、COMME des GARÇONSのエッセンスが加わることで、都会的で洗練されたギアへと昇華されている。キルティングのトートバッグは特に魅力的だった。

コンクリートの地面に置かれた、コム デ ギャルソン オムとブリーフィングのコラボレーションによる黒いナイロンリップキルティングのトートバッグ
COMME des GARÇONS HOMME × BRIEFING:ナイロンリップキルティング素材を使用した、ミリタリーテイストとモードが融合した黒のトートバッグ
コンクリートの床に置かれたタグ付きのCOMME des GARCONS HOMME × BRIEFINGの黒いコラボレーションバッグ
COMME des GARCONS HOMME × BRIEFING コラボレーションバッグ (HP-K202-051)

ふと目をやると、NIGO®氏が手がけるHUMAN MADEのデニムジャケットも並んでいた。昨年、東京証券取引所に上場したことも記憶に新しい。こうして世界最高峰のセレクトショップで、日本のブランドが確固たる存在感を放っているのを見ると、なんだか誇らしい気持ちになる。

木製ハンガーに掛けられたHUMAN MADEのデニムジャケットとラックに並ぶ衣類
ラックに陳列されたHUMAN MADEのデニムジャケットとその他のアパレルアイテム

日本で買えなかったアイテムを、旅の途中で探す。それはまるで、リアルな宝探しゲームだ。Auraleeも良かったし、JUNYAのコラボも心惹かれる。しかし、やはり今日の僕の心はWTAPSにある。名残惜しいが、今回は見送ることにした。次の目的地は、SOHOにあるスニーカーショップ「END.」。あそこなら、何か手がかりがあるかもしれない。

 

Dover Street Market オンライン在庫の賢い使い方

実店舗での宝探しも楽しいが、渡航前にDover Street Marketのオンラインストアをチェックするのも有効な戦略だ。特にロンドン店(E-SHOP)の在庫は、日本の店舗やオンラインとは異なる場合が多い。気になるコラボアイテムがあれば、事前に在庫状況を確認し、店舗受け取り(Click and Collect)サービスを利用するのも一つの手だろう。ただし、人気商品はオンラインにも掲載されずに店頭のみで完売することもあるため、過信は禁物だ。

 

DOVER STREET MARKET New Balance コラボはなぜ狙い目か

今回も多数のモデルを見かけたように、DOVER STREET MARKETとNew Balanceのコラボレーション、あるいはDSMがセレクトするNew Balanceのコラボモデルは常にチェックすべき対象だ。その理由は、DSMが持つ独自のセレクト基準にある。単なる人気モデルだけでなく、JUNYA WATANABE MANやCOMME des GARÇONS HOMMEといった、よりファッションコンシャスなコラボを積極的に取り扱う。そのため、スニーカーヘッズだけでなく、ファッション好きの層にも需要が分散し、意外なモデルが残っている可能性があるのだ。

 

Dover street market チェンソー マンなど、アニメコラボの可能性

近年、ハイファッションと日本のマンガ・アニメカルチャーの融合は珍しくない。過去には『AKIRA』などとのコラボレーションも話題になった。例えば、セカンダリキーワードにある「チェンソー マン」のような人気作品と、DSMが扱うブランド(例えば、StüssyやSupreme、あるいはCOMME des GARÇONS自身)がコラボする可能性はゼロではない。こうしたカルチャーの交差点に常にアンテナを張っておくことが、貴重なアイテムを手に入れる鍵となる。

 

DOVER STREET MARKET 店舗ごとの特色(ロンドン vs 銀座)

世界に数店舗しかないDOVER STREET MARKETだが、各店舗にはそれぞれの個性がある。ロンドン店は、歴史的建造物を活かした空間作りと、ストリートからハイブランドまでがカオスに共存するダイナミズムが魅力だ。一方、銀座店はより洗練され、整然とした印象が強い。取り扱いブランドや在庫も異なるため、両方の店舗を訪れることで、その都市のファッションシーンの空気感の違いを肌で感じることができるだろう。

 

DOVER STREET MARKET VERDYコラボの過去と未来

Girls Don’t CryやWasted Youthで知られるグラフィックアーティスト、VERDY氏。彼の人気は今や世界的だ。過去にもDSM限定アイテムがリリースされており、今後も新たなコラボレーションが期待されるアーティストの一人だ。彼の作品はリリースと同時に即完売することが多いため、DSMのニュースレターや公式SNSをフォローし、情報をいち早くキャッチすることが不可欠となる。

 

DOVER Street Market 日本での展開と違い

日本国内では、銀座にDOVER Street Marketの店舗がある。銀座店は、国内外の厳選されたブランドが集う、日本のファッションシーンにおける重要な拠点だ。ロンドン店との最大の違いは、やはり「品揃え」と「在庫状況」。前述の通り、国ごとの需要の違いから、ロンドンでは普通に買えるものが日本では即完売、あるいはその逆のパターンも存在する。この「差」こそが、海外の店舗を訪れる醍醐味と言えるだろう。

 

Dover street market コムデギャルソン の特別な関係性

言うまでもなく、Dover street marketコムデギャルソンのデザイナーである川久保玲氏によって生み出されたコンセプトストアだ。そのため、COMME des GARÇONSの全ラインナップはもちろん、DSMでしか手に入らない特別なアイテムも存在する。店内には、各ブランドのスペースと並んで、COMME des GARÇONSの様々なラインが点在しており、その世界観を深く体感できる。DSMを理解することは、COMME des GARÇONSを理解することと同義なのだ。

 

Dover street market クロム ハーツの取り扱いは?

Dover street marketは、クロム ハーツを取り扱う数少ない正規店の一つだ。ウェアからアクセサリーまで、独自のセレクトで展開されている。ただし、その人気は世界共通であり、常に品薄の状態が続いている。特に人気のモデルやサイズの在庫があるかは運次第。もし探しているアイテムがあるなら、ダメ元でスタッフに尋ねてみる価値はあるかもしれない。思わぬ出会いが待っている可能性もある。

 

結論:Dover Street Marketはやはりコラボの秘境だった

今回、お目当てだったWTAPSとNew Balanceのコラボスニーカーを見つけることはできなかった。しかし、その代わりにAuraleeやJUNYA WATANABE MAN、COMME des GARÇONS HOMMEと、数々の素晴らしいコラボレーションアイテムに出会うことができた。結果的に何も購入しなかったが、この「探す」という行為そのものが、Dover Street Marketを訪れる最大の楽しみなのかもしれない。

 

そこは、ただ商品を買い求める場所ではない。クリエイターたちの情熱が渦巻く空間を歩き、予想外の発見に心躍らせ、自分の審美眼を試す場所だ。日本で「売り切れ」の札を見て諦めていたあのアイテムが、ロンドンの片隅であなたを待っているかもしれない。そんな期待を抱かせてくれる限り、僕はこのファッションの迷宮に、何度でも迷い込みたいと思う。

 

Dover Street Market London
18-22 Haymarket, London SW1Y 4DG
Google Map:

 

コメントする